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第2章4 イーズ国

最後まで読んでくださると嬉しいです!

 不二国の南方に位置する「イーズ国」。そこはかつて豊かな資源を誇ったが、今や王国の苛烈な搾取により、滅亡の淵に立たされていた。

 拓真一行がその地へ足を踏み入れた時、目に映ったのは、王国の役人たちが民のわずかな蓄えを奪い、泥水を啜る人々の姿だった。


イーズ国にとっての悲劇は、王国との唯一の陸路である「旧道」を軍事利用されていたことだった。しかし、その旧道は今、拓真の手によって「不二国」の領土として完全に掌握されている。

「タクマ殿……。貴殿が旧道を封鎖し、不二国の領土として宣言してくれたおかげで、王国の追加兵力はここへ届かなくなった。だが、既に駐屯している役人どもを追い出す力が、我々にはないんだ」

 イーズ国の騎士長兼実質的な国王、ベルガウが、血が滲むほどに拳を握りしめて訴える。

 タクマは無機質な瞳で、港で威張り散らす王国の役人を一瞥した。


「……無駄なコストだ。旧道の検問を抜けてこられない本国は、この地の『在庫』を回収することもできない。あとは、この地を僕たちの『生産拠点』に書き換えるだけだ」


 拓真の合図で、アヤカが前に出る。

「アヤカ、この国を不二国の一部として『再定義』する。君の力で、この絶望を収穫に変えてくれ」

「うん! タクマくん、見ててね。……この国、まるごと私が守るんだから!」

 アヤカが愛用の「くわ」をイーズ国の乾いた大地に突き立てた。

 【因果開墾:土壌浄化】。

 琥珀色の衝撃波が半島を駆け抜け、王国の実験で汚染されていた海は透き通り、痩せ細った畑には瞬く間に瑞々しい野菜が芽吹く。さらに「網」を一振りすれば、絶滅したはずの特産魚が銀色の鱗を輝かせて水揚げされた。


「な、なんだこの奇跡は……!? 食料が、こんなに一瞬で!」

 腰を抜かす王国の役人たちを、ミユが市ノ尾村でつくって貰った短剣で威圧した。

「ゆ、許てくれ」そう役人たちが先程前の威勢とはことなって、今にも泣きそうな声で言った。

「そうか、許してほしいか。貴様らを殺すなど面倒なことはしない。ならば、王国に仲間、全員を連れて今すぐ帰れ。」拓真が言った。役人は突然のことに動揺していた。殺さずに生かしたまま逃がそうとしたからだ。

「聞こえなかったか?今すぐ帰れ!!!」そう拓真は、怒鳴り散らした。

「は、はーい…!?!」そう言って王国へと一目散に逃げ帰っていきました。

王国の役人を半島から叩き出した。


 「少しがっかりです。この短剣の切れ味とか人で、試してみたかったのに…」「まぁまぁ。人なんて殺さない方がいいから。」そう拓真が言った。

「そうですけど。王国の人にはどうしても殺意がわいてきちゃうんですよね…」「その気持ちもわからなくないが…人を殺すなどしなくていいのだよ。」

「やったぁ、大成功!」とはしゃぐアヤカは、そのままタクマの腕にぎゅっと抱きついた。

「ねぇタクマくん! 私、お姉さんとして役に立ったでしょ? 褒めて褒めて!」

「……ああ、よくやった。これでイーズ国は不二国の強力なパートナー……いや、『不二国 拓真連合』の重要な一員だ」


 拓真が淡々と答えていると、隣でミユが「むすっ」とした顔で、タクマの反対側の腕を強引に引き寄せた。

「……タクマ様。アヤカ様は『収穫』に集中しすぎて、警戒が疎かです。私がもっと近くで、タクマ様をお守りしなければなりません。……さあ、アヤカ様、離れてください。そこは私の位置です」

 ミユはアヤカを牽制するように拓真との距離を詰め、上目遣いでじっとタクマを見つめる。

「……私だって、王国の残党を一人残らず排除しました。私の方が、お役に立てているはずです」

 その必死な様子に、後ろで控えていたゼクスが帽子を揺らしてニヤニヤと笑った。


「へっ……。タクマさん、お熱いねぇ。ミユさん、そいつはやっぱり、『嫉妬』ってやつかい? 騎士様が独占欲を隠しきれてねえぜ」

「……! 違います、ゼクス殿! 私は不二国の治安を……その、個人的な感情ではなく、規律を守っているだけです!」

 顔を真っ赤にして否定するミユ。その微笑ましい光景に、解放されたイーズ国の民からも笑みがこぼれた。


 タクマは、イーズ国の国民、騎士の前で静かに宣言した。

「今日から、この地は『不二国 拓真連合』の一部だ。旧道は僕たちが守る。王国はもう、ここへは手出しできない。……君たちの魚と農作物は、僕が適正な価格で買い取り、世界一のブランドに育ててやる」

 旧道を封鎖し、王国からのアクセスを断った「不二国」。

 そして、その恩恵を受け、不二国と強い協力関係を結んだ「イーズ国」。

 14歳のタクマが描く、王国を包囲する「経済の壁」が、着実に築かれようとしていた。


 晴れて、王国の支配から脱却し、『不二国 拓真連合』の仲間入りを果たしたイーズ国、そんな国の視察を続ける中で、拓真がかつての騎士団長からこの国の数奇な成り立ちを聞かされていた。


「タクマ殿、このイーズ国は元々、初代『二無勇者』が立ち上げた不二国の直轄領だったのです」

 かつて、初代勇者はこの半島の豊かな資源や『オンセン』を守るため、不二国の一部として自治を行っていた。しかし、勇者がこの世を去った後、強大な軍事力を持つ王国が介入。不二国本国から切り離され、独立という名の「植民地化」を余儀なくされたのだ。

「王国は我々から過去を奪い、ただの『搾取場』に変え果てた。……だが、今こうして再び二無勇者が現れた。これは運命です」

 タクマは無機質な瞳で荒れた王国の残滓を見つめた。「過去の経緯はどうでもいい。だが、奪われた『価値』を取り戻すのは、経営者として当然の判断だ」「タクマ様本当にありがとうございます。どう、お礼をすればよいのかわかりません。」そう騎士団長が言った。「顔を上げてください、まだまだやることがいっぱいなんですから、お礼は後ででいいですよ。まず、復興のためにも、ベルガウ、貴方を不二国 拓真連合のイーズ地方の管理者に任命します。統治は、これまで通り騎士の方々が中心で行っていってください。」少し驚いたような顔で言った「私なんかがですか?」「あぁ。貴方たちが今までまとめていてくれたから王国の暴挙に耐えられてきたのではないのでしょうか。そしてこの地域のこともよく知ってそうですし。」「わかりました。尽力します!」そういった彼の顔は、希望に満ちていた。


 夕刻。少し時間が空いたタクマは、周囲の警戒を兼ねてミユと共に、半島の高台にある森へと足を運んだ。

「……タクマ様、見てください。あそこに石組みの跡が」

 ミユが指差した先には、草木に埋もれた古い浴場の跡があった。これが、ベルガウが言っていた『オンセン』の跡地だろう。かつて勇者たちが傷を癒やしたと言われる伝説の温泉だ。しかし、王国の魔導実験による地脈の乱れで、今は泥が溜まり、ひび割れた岩底が見えるだけだった。

「ここが、初代勇者の癒やしの地か。……ミユ、少し下がっていろ」

 タクマが枯れ果てた湯船に手を触れる。彼の固有能力【厨二病コンセプト・メイカー】が、眠っていた地脈の因果を強制的に書き換え始めた。

「――定義せよ。この泉は【神域の湧泉:不老長寿】浸かる者の細胞を活性化させ、魔力の回路を補強する。その水量は尽きることなく、不二国の繁栄と共に溢れ出す」

 ドォォォォン……!

 地面の底から轟音が響き、大地が震える。


 次の瞬間、岩の隙間から乳白色の、だが透き通った輝きを放つ熱湯が噴き出した。凄まじい勢いで湯船を満たし、周囲に心地よい硫黄の香りと、濃密な魔力が霧となって立ち込める。

「すごい……。傷が、一瞬で消えていく……」

 ミユが驚愕の声を上げた。霧に触れただけで、行軍で溜まっていた疲労が嘘のように引いていく。


 温泉の復活に満足したタクマが立ち上がると、ミユがふらりと彼に歩み寄った。

 湯気で少し火照った顔、湿った髪。彼女はタクマの正面に立ち、逃がさないように両手で彼の袖を強く握りしめた。

「タクマ様。……この温泉、まずは私とタクマ様だけで検分すべきです」

「検分? いや、もう効能は確認できたが……」

「いいえ、不十分です。……アヤカ様やゼクス殿が来る前に、もっと詳しく。……私を、第一の従者として特別扱いしてください」

 ミユはタクマの胸元に顔を近づけ、潤んだ瞳でじっと見つめる。アヤカへの対抗心から出た、彼女なりの「強め」な甘えだ。

「……ミユ?」

「……むすっ」

 タクマが動揺すると、ミユは頬を膨らませてさらに密着した。「……ずるいです、いつもアヤカ様ばかり。……今は、私だけを見てください」

 その様子を、木陰から見ていたゼクスが「ヒューッ」と口笛を鳴らす。

「お熱いねぇ、タクマさん。ミユさん、そいつはやっぱり、『嫉妬』という名の源泉が溢れ出しちまってるんじゃないかい?」

「……! ゼクス殿! いつからそこに!」

 顔を真っ赤にして飛び退くミユ。


 拓真は溢れ出る温泉を見つめ、不敵に笑った。

「これでいい。この温泉を不二国連合の『保養地』としてブランド化し、王国の貴族たちを経済的に依存させてやる。……奪われた領土、そのすべてを利子付きで回収してやるぞ」

最後まで読んでくださりありがとうございました!また別の作品や次の話も読んでくださると嬉しいです!

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