第2章1 星たち
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「ミユ……?この後、少し歩かないか。一つ、聞いておきたいことがあるんだ」
不二国の拠点を離れる前夜。タクマの誘いに、ミユは静かに頷いた。「わかりました、タクマ様」
二人は城の喧騒を離れ、夜の静寂が支配する丘へと足を運んだ。
眼下に広がる旧道の村々には、かつてなかった温かな灯りが灯っている。それは地上に降りた星屑のように、暗闇を優しく切り裂いていた。
「少し前までは、こんな光景が見られるとは思っていなかった」
「そうですね……。タクマ様が来られるまで、ここはただの死にゆく場所でした」
タクマは夜風を浴びながら、本題を切り出した。
「ミユ。君はこの世界に伝わる『勇者』というシステムの正体を知っているか」
ミユは夜空を見上げ、不気味に瞬く群星を指差した。その瞳には、初代勇者の従者の末裔として、また元奴隷として耳にした呪いのような「伝承」が宿っていた。
「タクマ様……この世界には『三色の六星』の伝承があります。それは救いではなく、世界が滅ぶ時に奏でられる不協和音の記録なのです」
ミユの声が夜の闇に溶けていく。
「まずは三武勇:赫の断絶。戦うことしか知らず、平和を異常と捉える破壊者たち。今のレオン様たちがその象徴です」
「そして三絶勇:黒の崩落。他者の価値を奪い、略奪と毒で塗りつぶす帝国の駒……。彼らが六星として揃う時、世界は崩壊へ向かうと言われています」
タクマは無機質な瞳で夜の闇を見つめた。
「……やはりな。あの女――王国の宮廷魔術師ユキ。彼女は僕を『無能』と断じて追放したが、狙いは最初から僕の抹殺だったわけだ」
ユキは召喚の際、タクマの持つ力が既存の支配体制を破壊する「劇薬」であることを見抜いていた。だからこそ、餓死を狙って魔力の乏しい最果てへ『廃棄』した。
「三武勇という操りやすい人形を輝かせるための、生贄にされたというわけか」
「……あの女、反吐が出るぜ」
背後から苦々しい声がした。合流したばかりのゼクスだ。彼は煤けた服を叩きながら歩み寄る。
「村の件は片付けてきましたよ。村長たちは『心配しねえで行っといで!タクマさんを支えてやれよ!』って笑って送り出してくれました。……俺の力、あんたのために全部使わせてもらいますよ」
頼もしい仲間の言葉に、タクマは一つ、核心に触れる問いを投げた。
「じゃあ。僕、知恵の勇者はどこに属するんだ?」
「タクマ様は……『二無勇者』の一人です」
「二無勇者? 今は僕一人だが……権能の数か?」
「いいえ。伝承では、知恵・言葉・時、そして……『厨二』。それらを操る知恵の勇者と、農具と漁具で無から生み出す勇者の二人を指します」
(知恵の勇者は、言葉が柱か。……待て。もう一人が農具と漁具の勇者だとしたら、僕が『厨二』の能力を持っているはずだ。だが、そんな覚えは――)
タクマは半信半疑でステータス画面を呼び出した。
すると、固有能力の欄に、はっきりとその文字が刻まれていた。
【固有能力:厨二病】
(……あ。思い出した。兄がいなくなって、悲しみのあまりノートに技名を書いたり、魔法陣を描いたり……。左目を抑えて独り言を言っていた、あの黒歴史か!?)
「タクマ様? 大丈夫ですか?」
「おっと失礼。……ああ、大丈夫だ。問題ない」
タクマは内心の動揺を押し殺し、不敵に笑った。
かつての痛々しい妄想(設定)が、この世界では現実を上書きする最強の定義権能となる。
「へっ、最高だ。あの魔女に、自分たちがどれだけ大きな負債を抱え込んだか思い知らせてやりましょう!」
ゼクスが声を弾ませる。
一人の経営者と、二人の従者の末裔。
星空の下、不協和音に満ちた世界を「再定義」するための、不二国の快進撃が今、ここから始まる。
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