表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

言の花への駆け込み訴え

作者: イプシロン


     (たね)も植えず 水もやらない

    陽当たりなんか 気にしない 

  それでも花は 咲くという 

      双葉 本葉が茂つたころ 

   立派な花々よ 咲き乱れよ


  邪魔だ!

       邪魔だ!

   造花なんぞになにができる

      蕾もなければ枯れもしない

    いわんや詫びも寂びもない


   葉をば笑うべからず

        wwwwwwwww

   草草草 藁藁藁       草はえる

   ペンペン草ばかり けれど雑草魂 忘れまじ

      葉をば笑うべからず



  ――古人曰く

  倭歌(やまとうた)は人の心を種として

       よろづの言の葉とぞなれりける

                    紀貫之――



 現代の都会に林立する、摩天楼のビルディングは無機質だ。利便の花を咲かせ、効率の花を開かせ、清潔の香りを漂わす。そのうえまだ、現代人は言の華で、ひと花を咲かそうと躍起だ。己の不完全さを知らず、驕慢なること造花のごとし。『道草』を愛せや、『草枕』を愛せや、『虞美人草』を愛せや。ベジタリアンになれ。地球の生物の8割~9割は草食だ。目立たぬように草はひっそりと、だがそこにある、そこにいる、そっと佇んでいる。

 藪のなか、緑あふれる草原で、鬱蒼とした森林で、迷彩服をまとい、狙撃眼鏡(めがね)を覗き、無言の弾丸――撃っている。

 伝えきれないもどかしさに、身を震わせながら、黙ってそれに耐えている。見習いたまえ、草種なる諸君らよ。



  花きちがいの大工がいる

  邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ!


  あゝ、この言の葉の玩弄者達の世に

  奴らの心には、胤はおろか根もないのに花だけある

  葉に嘘などつけはしないんだ

  不完全なればこそ

  あゝ、この音の華の完璧者達の世に

  音の華さんが恨めしい、妬ましい、憎らしい、どうしてくれよう


  おい、言の花

  悔しかつたら、光合成してみろ

  お前にできるのは胤になるだけ

  袋につめられて売られてしまえ

  葉をば笑うべからず、グッド・バイ


  亡き人は花の陰では泣かない

  草葉の陰で泣くのだよ

  そら見よ、『徒然草』も『御伽草子』も

  『草の葉』も『若草物語』の四姉妹も泣いている

  ほろろとほろろと泣いている

  あゝ、麗しいではないか、言の葉草は


  ――古人曰く 略

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ