SS〜 リックの人生初告白
デイジーとリックの逃避行の夜、のその後の話です。
ちょっと格好がつかない所が彼らしいな、と思いまして書いてみました。が、少し恥ずかしく書きすぎた感もあります。
お馬鹿一直線の彼です。申し訳ありません……。
「こ、ここが今日予約した宿だ。よし、行くぞ!」
デイジーが珍しく俺にピッタリとくっついてくる。
さっきのキスも凄く可愛くて、もっとしたくて、あーー!もう、俺はどうしたらいい!?
――がっつくのは駄目だ!大切に大切にしたい。
幻滅もされたくない。
ずっと幼馴染として育ってきた俺たち。
このまま、一線を越えたらもう戻れないんじゃないか?いいのか?
デイジーは後悔しないだろうか。
どうしたら、どうやったら好きな女に嫌われないで、一生好かれ続けられるんだ?
出来ることなら。
親方の家みたいに、奥さんや子供たちが笑って食卓を囲むような、そんな未来が欲しい。
(というか、ここからどうしたら一線って越えられるんだ?あーーー!わからない!もっと先輩達の経験談を真面目に聞いていれば!)
だが聞いた話だと、恋人なんて、喧嘩して、浮気して、すぐに別れるものらしい。
そりゃ、デイジーが好きだし全部全部欲しいけど。
そんな簡単に離れてしまうものにはなりたくない。
「どうしたの、リック。お店に入らないの?ねぇ、もうお互いに成人したんだからお酒飲んで乾杯しない?」
「お、おう!じゃあ、入るか」
その上目遣いをな、天然でやっている所が怖いよ。
冒険者で身を立ててから、女の子にそれなりに声を掛けられる事が多くなったが。
それでも一人も、本当の俺を好きになってくれた人は居なかった。見た目だけ、強さだけ、一晩だけ。
何だそれ。そういうものなの?
もっと胸がギュッとなって暴れ出したくなるような感情が溢れてくるんじゃないの?
弱ってたら、頭を撫でてあげたくて。
頼られたら、馬鹿みたいに舞い上がったり。
俺の恥ずかしい所を見ても、笑ってバカだと言ってくれたり。
俺なんて情けないし、実は結構弱気で駄目な奴だ。
楽観的だし、あまり考えないで行動しちゃうし、こうやっていざという時に尻込みする駄目野郎だ。
それでも、それを知りつつ見捨てないで側に居てくれる人が隣にいる。
デイジーの気持ちが一番大事だ。
いきなりなんて女の子には無理に決まっているはずだ。
きっと色々と覚悟もいるだろうし。
――いいか。宿屋兼、食堂で今日はいっぱい食べて飲んでしまおう。そして酔い潰れればいいんだ!
とにかく、がっつく男は嫌いだ、と誰かから聞いたことがある。
でも、でもでも、でも!
いやいやいや駄目だ。俺、ステイ。ハウス。
そう。我慢も出来ないって事も俺の駄目な所に付け加えなければ。
――でも、好きなんだ。
いつからかわからないけど、デイジーが一番なんだ。
ずっと一緒にいたんだ。これからもずっと一緒に居たいんだ。
俺を頼ってくれて、物凄く嬉しかったんだ。
逃げんな、俺。ごまかすなよ、俺!
「デイジー!!」
「わ!なに?」
俺の大声に、デイジーも通行人もこちらを見ている。
「俺は、お前が……!多分初めて会った時から好きだったんだ!」
――あ、やばい、大声で。街中で公開告白してしまった……。
先輩達……。ロマンチックってやつをさ、もっと教えておいてくれよ……。どうやったら、告白する時に余裕なんてみせられるんだよ。
周囲の生温かい目が痛いよ。やっちゃったよ。
そこのおばさんが『あらあら若いわねぇ』って言っている。
あそこのおじさんが親指を立ててやがる。
あっちの子供が俺を指差して母親に何か聞いている……。
デイジーは目立つのが嫌いなのに、何やらかしてしまってんの、俺。――普通に俺も恥ずかしい。
でも、同じ部屋に泊まるのに。
もしかしたら、俺は馬鹿だから止まれないかもしれないから。ちゃんとしないと。
ちゃんとしておきたかった……けど……。
――ムードもなにも無いわ。
「……そんなのとっくに知ってるし……」
でも、こんな空気の中でも可愛らしく照れてくれているデイジー。
――え、かわいい。赤く染まった顔を下に向けている。え、かわいすぎる。
「でも、これ以上は部屋でじっくり聞きたい。早く行こう!恥ずかしい!」
グイグイと俺の背中を押して、その場から逃げようとする。
――やっぱりデイジーには敵わない。
こんな駄目な男の全てを知ってくれていて、駄目な所も許してくれて。
最高にかわいいデイジー。
一生敵うわけがないじゃないか、俺は最初から惚れているんだから。
「でも、これだけは言わせてくれ。ずっとデイジーを愛しているよ」




