第3話【多対一】
「〜〜〜〜っってぇなボケ!!!!」
噛みついてきた兎を、振り上げた足と近くの木で挟み潰す。兎は「ピギュ」という声を最後に絶命した。
「!」
他の兎が噛みつこうと飛びついてきた為、咄嗟に地面を蹴り、土と共に兎達を吹き飛ばす。
ハルトの右足の脛は大きな歯形が出来ており、そこから血がダラダラと流れている。ハルトはその事実に焦ることはなく、敵の残りを数える。
「6匹か............あ?」
潰した兎を見ると、背中が縦に割れており、そこからガリガリの小人がまろび出ている。
吹き飛ばした方に向き直ると、4匹の兎の背中が割れ、小人が出てきていた。
小人は、縦長の顔に大きな口と虚な一つ目が付いていて、体は細く、肘から先はナイフなっていた。
ナイフは赤黒く染まっており、それで兎の背中を裂き、肉を掻き出したのだと想像させてくる。
残りの2匹は、小人を見て後退り、草むらに逃げ込む。
群れの中であえて2匹だけ本物を残す。ハルトを観察して、完全に油断したタイミングを見て齧りつく、知性。
「賢いじゃん」
ハルトの言葉に対して小人はナイフを上に向け、クロスして、歯をガチガチと鳴らす。威嚇だ。
「殺す」
小人達が一斉にスタートを切る。
ハルトは最初に切り掛かってきた小人を殴る。
小人は、空中で潰れた。
1匹目。
その隙を突いて、もう1匹がハルトの横腹にナイフを突き立てる。だが、ナイフが抜けなくなり、ハルトは右手で足を掴む。そのまま居合いの様に右に回っていた小人にぶつけた。
2匹目。
掴んでいた小人を、唯一飛びかからずに様子を見ていた小人にぶん投げる。その小人は避けれたが、投げられた方は地面に激突した。
3匹目。
最後の1匹は逃げ出していたが、ハルトの快速から逃げ切ることができず、走り出してから5秒もせずに踏み潰されてしまった。
4匹目。
「はい、おしまい。多対一は慣れてんだよね。」
ハルトはこの世界に来る前、たくさんの喧嘩をしてきた。その中には当然、大人数で襲いかかる者、武器を持って襲いかかる者。その両方を行う者もいた。
所詮小人。何人で来ようが、何を持っていようが、人間に比べれば然程大したことはない。それがハルトの結論だった。
血はもう、とっくに止まっていた。
「まぁ、擬態には流石に度肝抜かれたんだけど。」
ハルトは果実をちぎり、今度こそ口に入れる。
果肉は食感が良く、果汁が溢れてくる。甘くて、酸っぱい、蜜柑の様な味だ。
「うんま」
それはまさに、勝利の味だった。
小人のサイズはせいぜい生後6ヶ月の赤ちゃん程度。