エピローグ
「はい、これから質疑応答を始めます!」
「は?」
ここは藤井の家。一人暮らしで勝手が良いので四人の溜まり場となっている。先ほどの発言は怜奈だ。
「何で、私を混ぜてくれなかったのよぉ!!」
「せっかくだから私たちって言ってくれよ……」
悲しげな面持ちで言ったのは藤井。
「ごめんね、怜奈。言いだしっぺじゃなかったら私もあの場にいれたか怪しかったの」
「お前が言いだしっぺじゃなかったらあの場はなかった」
「うるさいわねえ。で、そういう事だから大目に見てよ」奈美香はウィンクしながら言った。謝罪の場面でウィンクとは何と場違いだろう。
「うう……。で、結局動機は?」怜奈が不満を募らせながらも聞いた。藤井の「俺にも謝ってくれよ」という言葉は誰一人聞かなかった。
「さあ? 聞いてない。動機なんて聞いたって気持ちの良いものじゃないからな」
「そりゃ、そうだけど……」
「少なくとも、バッテリーの息が合わなかった、以上のものはあるだろ。そんなんで互いに殺したいほど憎んでたらこの世は終わってる。けど、あんまり想像はつかないな。想像したくないし」
「というか、いつから分かってたの?」今度は奈美香が聞いてきた。
「最初の時点で八割くらいかな?」
「そんなに?」
「だっておかしいだろ。密室にするくらいなら死体を運び込んだ方がいいだろ。部室で発見なんてされたら容疑者は野球部に限られるんだし。だから、どうやったかじゃなくて、どうしてやったかを考えてた。結局、偶然だったっていう結論だったけど」
「野球部、どうなるのかな?」藤井は不安そうな顔で言った。
「元には戻らないな。でも、これを乗り越えていくんだろうな」
そう、高木はいない。
南原もいない。
それでも、誰かがその穴を埋めるだろう。
この悲しい出来事を乗り越えていくのだろう。
けど、傷は残る。
乗り越える、なんて幻想かもしれない。
悲しみを心の奥にしまって見ない振りをするだけなのかもしれない。
もう戻らない。
それでも、乗り越えてほしいと願う。幻想だとしても。
現実を見つめて、目をそらさずに、何かを得てほしい。
そう願う。