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第一次多次元世界大戦! 完全武装神器リバティ・ギア  作者: 振木岳人
◆ 驚愕!超巨大要塞「ヘラ」襲来 編
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28) 結成!航空自衛隊『空陸機動団』


 北東から南西側へと伸びる日本列島のほぼ真ん中。中央活断層や南北アルプスが縦断するその辺りに岐阜県がある。飛騨牛や美濃焼、白川郷の合掌造りで有名な中部地方の典型的な山間地ではあるが、もちろん岐阜県にも自衛隊の施設が存在する。

 岐阜県の南部にある各務原市、市を臨む西の伊吹山から吹くおだやかな風が離陸に適している事から、現存する国内最古の飛行場があり、航空自衛隊岐阜基地がそこに置かれていたのである。


 日本を仮想敵国として領空侵犯を仕掛けて来る敵性国家の軍用機に対して、石川県の小松基地や様々な航空自衛隊の基地が対領空侵犯措置行動を行うのに対して、この岐阜基地はその防衛最前線に位置しない独自の使命を持って運営されていた。

 航空自衛隊航空開発実験集団隷下の組織『飛行開発実験団』の拠点であり、空自が導入した航空機及びミサイルなどの各種装備のテストや評価を行なったり、テストパイロットの養成を主たる任務として運営される基地がこの飛行開発実験団。この岐阜基地には航空自衛隊が有する航空機ほぼ全てが揃っており、試験運用されていたのだ。

 ちなみに秋の基地祭になると、日本ではここでしか見る事が出来ないと言われる異機種混合編隊飛行のショーは圧巻で、多くの航空機ファンがそれ目当てに全国から訪れる、知る人ぞ知る聖地とも呼べた。


 その航空自衛隊岐阜基地にこの夏、新たな実験組織が誕生した。ーー航空自衛隊【空陸機動団】と言う名の組織がそれであり、陸上戦力と航空戦力による能動的な制空権防衛活動を、主たる任務として編成されたのである。

 ただこれだけを聞くと、「どこかで聞いた事あるぞ」や「何だそりゃ」と首を傾げる者が出て来るのは事実。日本列島の周辺島嶼部の防衛や奪還には、陸上自衛隊の防衛版海兵隊である「水陸機動団」が既に実戦配備され運用されているし、航空戦力と陸上戦力との連携作戦であるならばエアボーン……空挺部隊である「第1空挺団」がそれにあたるはず。

 そうであるならば、何故隙間産業としても成立しないような曖昧なコンセプトの元で、「団」規模の部隊……大隊と師団の間に存在するブリゲイド(旅団)規模の部隊が編成されたのかには、深くて今すぐ白日の下に晒せない秘密があった。


 野党議員が目くじらを立てて大騒ぎし、テレビカメラの前でドヤ顔を作りながら政府と自衛隊を断罪したとしても、国会や予算委員会でエグいプラカードをこれ見よがしに掲げながら騒いでも、絶対に明かせない秘密があったのだ。


 ――巡空艦神州及びリバティ・ギア・スフィダンテの保護。そしてプレイヤー・ウィールの調査研究。更には神州乗組員と日本共和国亡命者たちを隔離した上での適応順応施設構築――


 つまり、この航空自衛隊岐阜基地内に巡空艦神州とスフィダンテを秘匿し、整備補給の一切を提供する代わりにプレイヤー・ウィールと言う魔力発生機関の研究・開発に協力して貰う。もちろん乗組員たちと亡命を申請した二百七十六名の民間人保護も行い、現代日本において社会生活が行えるように隔離教育を行うと言う、そのための名目上の組織が空陸機動団であったのだ。

 ただ、現代日本においてもプレイヤー・ウィールの研究開発が進み、工業技術としての魔力が確立されたならば、それを真っ先に装備化して最前線に展開されるのはもちろん、この空陸機動団である。つまりは全ての極秘情報を秘匿しながら、超技術を開発して運用までに導く組織がこれであったのだ。


 ――佐渡島沖のレアアース採掘基地に突如現れて占領した敵の巡空艦は、人造プレイヤー・ウィールを駆動力とした模造リバティ・ギア部隊と、パワードスーツによる機械化重歩兵部隊に採掘基地を占領させており、自衛隊の従来の作戦要綱では対応しきれなかったのは確か。日本の領空に異世界ソ連軍が現れた有事の際、巡空艦神州に機動部隊を搭載しての防衛作戦を展開する事が喫緊の課題として求められていたのだ。


 八月も終わりが近付き、最後の夏休みを名残惜しそうに過ごす若者の季節。航空自衛隊岐阜基地の周辺に作られた謎の巨大施設……対外的には空陸機動団の屋内演習場と説明されたその巨大な施設で、犀潟智也の新たな物語がスタートしたのである。



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