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コメディー集

浦島太郎に転生してしまったため亀は絶対に助けないぞと思っていたら、いじめられてた亀が美少女だったので秒で助けに行った

作者: たこす

ほぼほぼ勢いとノリです。

そして感想欄閉じております、すいません。

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!



 気付いたらオレは浦島太郎に転生していた。



 何を言ってるかわからねえと思うが、自分でも何を言ってるのかわからねえ。

 気づいたらオレは浦島太郎に転生していたのだ。



 はじめは何かのドッキリかと思った。

「目が覚めたら別の場所に連れて来られてた」とか、そういうやつだ。


 けれどもオレは芸人ではないし、ましてやテレビ関係者でもない。

 もちろんユーチューバーでもない。



 にも関わらず、朝起きたらオレは腰みの・・・を身に着けて海の家で寝ころんでいた。

 思わず「浦島太郎かよー」と笑いながらツッコんでたら、長い髪を後ろで縛った上に釣竿を持っている自分に気が付いた。


「浦島太郎かよッ!」


 今度は本気でツッコんだ。

 絵に描いたような浦島太郎ファッションだった。


「ちょっと待って。なにこれ。どゆこと?」


 辺りを見渡しても何もわからない。

 海の家を出ると、青い海に青い空、白い砂浜が目に飛び込んできた。



「浦島太郎かよッ!!」



 オレのビビりはマックス状態。

 とりあえず何か情報を集めようと砂浜を歩き出すと、目の前で子どもたちが亀をいじめていた。



「浦島太郎かよッ!!!!」



 ことここにいたってオレは確信する。

 理由はわからないが、どうやらオレは浦島太郎に転生してしまったらしい。

 だとすればやるべきことは(いや、正確にはやらないべきことは)ただひとつ。



 目の前でいじめられてる亀は絶対に助けない!(←ここ重要)



 浦島太郎と言えば誰もが知っている、助けた亀に連れられて竜宮城に行って、戻ってきたら300年経過していたという恐ろしい昔話だ。知らないうちに年を取ってバッドエンドなんてまっぴらごめんだ。


 オレはいじめられてる亀を素通りすることにした。

 素通りする時、いじめてる子どもたちの声が聞こえてきた。



「やーい、やーい」

「ウスノロ、ウスノロー」

「なんとか言ってみろー」



 おっふ。


 なんというボキャブリーのなさよ。

 いくらモブキャラのいじめっことはいえ、「やーい、やーい」はないだろ。


 興味を惹かれてオレは思わずいじめられていた亀に目を向けた。

 そこでオレは見てしまった。

 いじめられてる亀が、甲羅を背負った超絶美少女だったことに。



 超 絶 美 少 女 だったことにッ!!!!



 次の瞬間、オレは叫んでいた。



「なにしてんだ、ゴルアァーーーーッ!!!!!」



 誤解しないでもらいたい。

 オレは別に亀が美少女だったから助けたわけではない。

 動物をいじめるなんて、オレの倫理観が許さなかっただけだ。


 子どもたちはオレの鬼のような形相を見て、「ギャーース!」と楳図か○おの漫画ばりに泣きながら逃げていった。

 まったく、動物をいじめるなんてサイテーなやつらだな。親の顔が見てみたいわ!


「大丈夫かい?」


 オレはさりげなく爽やかに亀の甲羅を背負った美少女に声をかけた。

 亀の甲羅を背負った美少女は潤んだ瞳で「ありがとうございます」とお礼を言った。



 やっべ、かわい。

 ボブショートの黒髪に、大きな瞳。

 めっちゃ好みだわ。



「いやー、許せませんねあいつら。君みたいな美少女をいじめるなんて。オレの方からきつーく言っとくんで安心してください」


 どこの誰かは知らんけど、調べればすぐわかるだろう。

 この辺りの子どもだろうし。

 オレの悩殺スマイルを受けて亀の甲羅を背負った美少女は言った。


「あの、親切なお方。助けてくださったお礼をしたいのですが、一緒に来ていただけますか?」

「………」

「………」

「………」

「………あ」



 や っ て も ー た。



 思いっきり忘れてたわ。

 そういやオレ、浦島太郎でしたやん。

 亀は助けないぞと誓ってたやん。


 オレは慌てて手を振った。


「い、いや、お礼はいらないよ。オレ、ああいうのほっとけないタチなんで……」


 そう言ってそそくさと逃げようとすると、亀の甲羅を背負った美少女はサッとオレの手を強く握った。


「いえいえいえいえ! ぜひお礼をさせてください!」


 ひええ!

 振りほどけない!


「お礼の場所はすぐそこですから」


 そう言ってグイグイオレの腕を引っ張ってくる。


「いいですいいです、ほんとけっこうです!」

「すぐそこですから」

「ほんといいですって!」


 ってか、強えッ!

 めっちゃ力強えッ!

 なにこの強さ!


 そういや亀って意外と力持ちなんだっけ。


 亀の女の子・カメ子はオレの手をつかみながら「すごそこです」を言い続けながら3時間かけてオレを竜宮城まで連れて行った。

 っていうか、全然すぐそこじゃないじゃん……。




 竜宮城はそれはそれは美しいところだった。

 色とりどりの魚が泳ぎ、虹色の海藻があたり一面に生えている。

 そして天女のような乙姫様がオレを出迎えてくれた。


「ようこそお越しくださいました。うちの亀を助けてくださって本当にありがとうございました。ささやかですが、こちらにお食事をご用意しました。どうぞ存分に召し上がってください」


 もうここまで来たらあとには引けない。

 オレは腹をくくって目一杯贅沢を味わうことにした。


 そうだ。

 昔話の浦島太郎は玉手箱を開けたからおじいさんになってしまったんだ。

 なら開けなければいい。

 簡単な話だ。


 そう思うと、ここでの贅沢三昧もなかなかのものだった。


 美女たちの美しい舞を見ながら美味しい料理を堪能する。これ以上の贅沢はあろうかというくらい贅沢を味わった。



 やがて。



「ではお腹もいっぱいになりましたし、これでおいとまいたします」

「あまりいいおもてなしも出来ず申し訳ありません」


 そう言ってうなだれる乙姫様。


「いえいえいえいえ! 十分すぎるほどのお食事でした! どうか頭を下げないでください!」

「そう言っていただけるとこちらも嬉しいです。では最後にこれを……」


 そう言って乙姫様は両手サイズの箱を手渡してきた。


「ええと……これは?」

「玉手箱です」


 はい出たー!

 玉手箱出たー!


 いつも思ってたんだけど、なんで乙姫様って浦島太郎に玉手箱なんて渡すの?

 百害あって一利なしじゃん。

 あれか?

 現実世界に戻って絶望する浦島太郎を安楽死させるために渡したのか?


 とりあえず受け取らないと帰れそうにないので差し出された玉手箱を受け取った。

 すると乙姫様は予想通りの言葉を言ってきた。


「ですがこれは決して開けてはいけませんよ」

「あ、はい。わかりました」


 言われなくても絶対開けません。


「本当に、本当に開けてはいけませんよ?」

「あ、はい……」

「絶対にですよ?」

「はい」

「開けたら大変なことが起きますからね?」

「はい」


 ってか、しつこいな!

 言われなくても開けないよ!


 っていうか、そこまで言うなら渡さなきゃいいのに。

 なんでそんな危険物みたいな箱を渡してくるの?


「決して開けませんので安心してください」


 オレの言葉に乙姫様は安心したのか「約束ですよ」と言ってニッコリほほ笑んだ。


「それではごきげんよう」




 こうしてオレは乙姫様に見送られて、助けた亀と一緒に元の浜辺へと戻って来た。


 元の浜辺はオレが浦島太郎に転生した時とあまり変化がないようだった。

 昔話だと300年経ってるんだよな?

 普通に見覚えのある砂浜なんだけど……。


「それでは助けていただきありがとうございました」


 お礼を言って帰ろうとする亀を慌てて呼び止める。


「ちょちょちょちょい!」

「はい?」

「あのさ。ここ、さっきの砂浜だよね?」

「はい、そうですよ」

「あれから数百年経ってる……なんてことないよね?」

「数百年? ないですないです。竜宮城で過ごされた時間はこちらの時間とまったく一緒です」


 あれー?

 なんか思ってた展開と違うぞー?


 でも考えてみれば亀がこんな超絶美少女だった時点で昔話の浦島太郎とかなり違ってるもんな。


 もしかして300年経過してるというのも変更されてて、玉手箱を開けるとおじいさんになってしまうという設定もないのかも。


 そう思うと、俄然玉手箱の中身が気になってきた。

 あれだけ乙姫様が開けるなと言っていた玉手箱。

 昔話とは違う何かがが入っているのかもしれない。


 そう思ったオレは、興味本位で玉手箱の蓋に手を置いた。


「ああ、それは! 乙姫様が開けてはダメだと言っていた玉手箱!」


 慌てて止めようとする美少女亀の言葉を無視し、オレはえいやとばかりに蓋を開けた。



 するとそこには……。



「乙姫の♡」と書かれたノートが入っていた。



「なんだこれ」


 ペラペラッとノートをめくってみる。

 中は、誰が描いたかわからない謎のイラストが描かれていた。



 イケメンが裸になってポーズを取ってるイラスト。

 イケメンが裸になってとろけるような顔をしているイラスト。

 イケメンが裸になって他のイケメンと向き合ってるイラスト。

 イケメンが裸になって他のイケメンとくんずほくれつしてるイラスト……



 ってか、イケメンしかないな!


 しかも後半になればなるほど描写が生々しくなっていくし。

 これはあれか?

 BLというやつか?


 いったい誰が描いたものなのだろう。



 と思っていると、急に背後に気配を感じた。




「見ぃぃぃたぁぁぁなぁぁぁ」




 振り向くとそこには、鬼の形相をした乙姫様がいた。


「ひ、ひいいいいいい!?」


 思わず玉手箱ごとひっくり返る。

 な、なんで? なんで乙姫様がここにいるん?


「あれだけ念を押しておいたのに、帰って来るなりいきなり開けるなんて。玉手箱を開けたら転送する術を施しておいて正解だったわ」


 玉手箱を開けたら転送する術?

 なにそれなにそれ。

 混乱するオレに美少女亀は言った。


「ああ、見てしまわれたのですね。乙姫様の黒歴史を……」

「く、黒歴史?」


 ってことはあれか?

 これ全部、乙姫様の手描きのイラストか?


「何度も何度も言いましたよね? 絶対開けてはいけませんと」

「は、はいいいぃぃぃ! すいません!」


 こ、怖っ!

 めっちゃ髪の毛振り乱してる、怖っ!


「それなのにあなたという人は!」

「すいません、すいません! つい出来心で!」


 なんというか。

 昔話の浦島太郎とは違うけれど、同じような展開になってる気がする。


「亀を助けたあなたなら信用できると思って渡したのに!」

「マジですんませんでしたあああぁぁぁぁ!!!!!」

「殺す! とりあえず殺す!」

「ぎゃああああああ! とりあえずって何いいいいぃぃぃ!?」


 こうしてオレは浦島太郎に転生したうえに乙姫様から鬼の形相で追いかけられる羽目になったのだった。



 やれやれだぜ。



お読みいただきありがとうございました。


ちなみになぜ彼が浦島太郎に転生したのか、誰にもわかりません(笑)


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