第2話 フラウィス君は使い魔になりたい その2
<登場人物>
魔女:半人前の魔女。名前はまだ無い。ブラックコーヒーを飲める。
フラウィス:羊の姿をしている悪魔。ブラックコーヒーが飲めない。
マスター:喫茶店のマスター。立派なひげが生えている幽霊。
場所:喫茶店内
マスター(以下『マ』)「ご注文はお決まりですか?」
魔女(以下『魔』)「ブレンドコーヒーを2つ、メロンソーダフロート1つ、プリンアラモード1つください」
マ「かしこまりました」
フラウィス(以下『フ』)「魔女ちゃん、プリン来たらひと口ちょうだい」
魔「おっ?戦争するか?」
フ「僕にプリンひと口あげるのと、僕を使い魔にするの、どっちが嫌?」
魔「どっちも死ぬほど嫌」
フ「死ぬほど!?」
魔「てかね、何回も言ってるでしょ。私の使い魔になったって、フーちゃんが一人前の悪魔になれるわけじゃないって」
フ「なってみないと分からないよ」
魔「フーちゃんにとっての『一人前の悪魔』って何だっけ?」
フ「えっとねー、強くて、威厳があって、どんな時も頼りになって、いつも笑顔で楽しそうにしてる悪魔!」
魔「ハードル高いな……私の使い魔になったくらいで達成できる目標じゃないよそれ」
フ「強くなるためには『責任』と『守るべきもの』が必要だってお父様が言ってたよ。だから、魔女ちゃんを守りながら使い魔として仕事をすれば、きっと強くなれると思うんだ」
魔「急にまともっぽいこと言った……でもそれだと責任と守るべきものが軽すぎて、たいして強くなれないと思うよ」
フ「まずは軽いものから始めよって言葉があったような」
魔「てめー、私という存在が軽いってのかぁ?」
(魔女がフラウィスの胸ぐらを掴んでぶんぶん揺する)
フ「うわああああああああ」
マ「お待たせしました、ブレンドコーヒーでございます」
魔「ありがとうございます」
フ「よーし、ブラックで飲むぞ!」
魔「せいぜい頑張りな」
フ「(ひと口飲む)……うへぇ…」
魔「ふふっ…面白い顔になってる」
フ「苦いよぉ……どうして皆こんな苦いのを飲めるの?」
魔「ふっ…フーちゃんはまだまだ味覚がお子様だね」
フ「魔女ちゃんの使い魔になれれば成長するかも」
魔「そんな簡単に成長するわけないだろ人生舐めんな」
フ「魔女ちゃん、もしかして怒ってる?」
魔「…あのねフーちゃん、使い魔という肩書きは君にとっては軽いものだろうけど、私にとっては重いものなの。そりゃあ、半人前の魔女の使い魔なんて、責任も仕事も軽くなるだろうけど、私にとっては重い繋がりなの。私は使い魔のことを家族に近いパートナーのような存在だと思ってるから、そんな簡単に契約なんてできないし、良好な関係を長く築ける自信も無いから、何なら一生契約しなくていいと思ってるんだ」
フ「魔女ちゃん…」
マ「お待たせしました、メロンソーダフロートとプリンアラモードでございます」
魔「ありがとうございます」
フ「ありがとうございます!魔女ちゃん、プリンひと口ちょうだい!」
魔「よーし戦争だぁ!オモテ出ろ!」