プロローグ①—―双頭竜
「俺たち、強いから」
剣を握った少年と少女が、闇夜で魔人たちと対峙する。
「リア、無理するな」
「ホークこそ」
二人が跳ぶと、最前線に立つ魔人たちの首が落ちる。
敵が反応するより早く殺してしまえば、リスクを負うことはない。
だが、他より大きな体躯の魔人が少女の剣を受け止める。
少女は衝撃の反動を受けて後方へ飛び退く。
同時に、後ろから飛びかかってきた少年の剣が魔人の背を裂いた。
月のない夜に血飛沫が舞う。
怯んだ魔人に向かって少女が再び跳び、胸元を浅く切りつけて後退。
直後に後ろに来るはずの少年を見越してか、魔人が後方に剣を振る。
その一撃は、少年が身を躱したことによって空振りとなり、魔人は大きく体勢を崩す。
すかさず、少女が先程よりも重たい一撃。
さらに、今度は少年が一撃。
少年と少女のヒットアンドアウェイ戦法に、魔人はなす術なく血を噴く。
魔人の動きが徐々に鈍くなる中、ついに少年の剣が魔人の首を捉え――。
首が宙に舞い、魔人の胴体が崩れ落ちた。
「今回も上手く行ったね」
「当然だろ。俺たち、強いから」
場末の安い酒場。
少年と少女は安酒を呷った。
賞金首の魔人を殺した報酬で、二人はかなり潤っている。それでも二人は、ここの安酒が気に入っていた。
「わたしがいないと依頼もまともに受けられないのに」
「それに関してはいつも助かってる。ありがとう、リア」
「ふふっ。わたしだってホークがいないとここまでは来られなかったから、お互い様だよ」
ホークと呼ばれた少年とリアと呼ばれた少女は、互いに敬意を持って接していた。
「双頭竜も、そろそろ名が知れ渡って来たよね」
「そうだな」
ホークとリアの二人は、双頭竜という名のチームを組んでいた。
双頭竜は、この王国の首都であるここ王都でも最強格と呼び声高いチームだ。
二人とも十五歳という若さながら他の戦士たちからは畏敬の念を抱かれるような強者。
「ホーク様、リア様。戦士組合からの通達で、明日朝、王都門前に集合するように言われております」
戦士組合の連絡網で、双頭竜の一つ前に位置するチームのリーダーが、二人に報告した。
ホークとリアは顔を見合わせ、黙ってうなずく。