表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/32

奪い合い

「クローディア? おい、大丈夫か?」


シュラに声をかけられて、私は我に返った。

あれ? チェリパンナ女王と話していたのに。


「彼女は?」


「とっくに、他の(おさ)たちのところへ挨拶に行ってるぜ。ボーッと突っ立ってるから心配したぞ」


優しく頬を撫でられて、顔が真っ赤になる。ドキドキして、落ち着かない。


「シュラ」


「ん?」


「私……ううん、なんでもない!」


誤魔化すように、もう一度星屑の海を見た。

シュラの心にいたのは、ずっと私だった。そう言われただけで、なんだか幸せ。


高まる胸の鼓動を抑えるように、美しい景色を見渡した。


“シュラ、大好き”。

そう心の中で呟きながら。


ガコン。


船が、着岸する振動が伝わってくる。

もう、着いたの?


「降りるの? シュラ」


「ああ。御神木まで、もう一息だ」


「わかった。行きましょう」


二人仲良く歩く最中、シュラは目線をチラチラと後ろへ向ける。


「どうしたの?」


「振り向くな。ルガリオンが、見てる」


「え」


「クローディアを奪うタイミングを、見極めようとしているんだ」


「何よ、それ」


迷惑でしかない。何のために? シュラに勝つため?


「空を飛びましょうか。妖狼は、飛べないでしょう?」


「百鬼夜行は、歩ける種族は歩く決まりだ。奴もそれがわかっているから、付き纏っている」


「人聞きが悪いなぁ、イシュラヴァ。付き纏うなんて、失礼だよ」


私のすぐ後ろに、ルガリオンが来ていた。

いつの間に!?


船のタラップは、一列になって降りないといけない。シュラは私を先に行かせて、ルガリオンとの間に割り込んできた。


「イシュラヴァ、邪魔」


「やかましい! クローディアに近づくな」


「いいなあ、こんな可愛い女の子がそばにいて」


「お前だって、いつも取り巻きがいるだろうが」


「ふふ、いるよ。私を崇拝してくれる」


「だったら……」


「君は彼女を大事にしてるね」


「当たり前だ。文句あるのか?」


「いや? 何がそんなにいいのか、興味あるから」


「お前は俺に負けたくないから、対抗意識でやってるだけだろうが」 


「そんなふうに、思ってんの? 自意識過剰」


「なら、俺の伴侶でなくても、クローディアを狙うか?」


「もちろん」


「嘘つけ」


言い争う間に、タラップを降りる。

私はシュラと手を繋ごうと、降り向こうとした。


その瞬間、誰かに抱えられて、景色が残像を残して後ろに流れていくのが見える。


「え!?」


景色がようやく止まり、私を抱える相手を見上げた。

そこにいたのは、ルガリオン。

こ、この妖狼、瞬間移動ができるの?


「さ、行こう。ベイビー」


「ルガリオン!」


「ルガル、て呼んで」


「シュラは?」


「後ろにいるよ? 素早さは妖狼一族の方が上だから」


思わず後ろを見ると、タラップを降りたばかりのシュラが、私を探している。


嘘……こんなに離れてる。


「離して! 降ろしてくだい!!」


腕を突っ張って暴れると、ルガリオンはますます興味深そうに見つめてくる。


「へぇ! この私にこうされて、喜ばない女の子はいないよ?」


「そんなの、知りません! 嫌!」


「可愛いなあ。君とは、一度ゆっくり話してみたかったんだよ」


「だったら、さらうような真似はおかしいでしょ!?」


「あれ? 聞いた話だと、君はよくシュラにこうされていたらしいじゃない」


「彼は私の夫。愛する人だもの!」


「なら、私もそうなれる」


「?」


「私は、シュラと双璧を成すほど美形だ。君だってシュラの見た目を好きになったんでしょ?」


「いいえ!」


違う。確かに、最初はあの容姿は美しいと思った。でも、心奪われたのは、素の彼を知ったから。


ずっと、取り繕った姿しか知らなかったら、きっと恋に堕ちていない。


「離して!」


私はバッと羽を広げて、ルガリオンの腕を払おうとした。


私の羽は武器にもなる。

腕を払うなんて、すぐにでき……。


スル!


「!?」


羽が宙を切る。まさか……避けた!?

この距離で、このスピードを避ける?


「やれやれ、何が気に食わない?」


ルガリオンは、困った顔で私を抱え直した。


素早い!

これが妖狼の(おさ)


侮ってはいけないんだ。


「望まないからよ! あなたを取り巻く美女たちに、こうしてあげれば?」


「すぐ落とせるから、つまんなくて」


モテすぎて、感覚が麻痺しているの? いえ、ゲーム感覚なんだ。

相手の反応を楽しんで、翻弄して終わり。


「……降ろしてください」


「手強いなあ。面白くてたまらない」


「私は不愉快でたまりません」


付き合っていられない。

その時、私たちの頭上が、急に暗くなった。


「!?」


「おっと、イシュラヴァを怒らせたかな」


「ルガリオン? どういうことです?」


後ろの方から悲鳴が起こり、みんな一斉に逃げてくる。


何? どうしたの?


思わず上を見上げると、巨大な鬼が私たちを見下ろしていた。


ええ!?

だ、誰?


「グルルル」


低い唸り声。

この声……まさか、シュラ!?

こんなに巨人みたいになれるの?


顔も変わって、額に目がもう一つ開いている。

シュラは三つ目鬼だったの!?


「やれやれ」


ルガリオンは、私を抱えたまま、高速移動で前の方へ逃げようとする。


ズウウン。


進行方向を巨大な手が阻んだ。


上からよく見えてるんだ。


「ふん、覚醒すれば私を抑えらるとでも? 舐めるなよ!」


ルガリオンは、私を背中に乗せたまま、巨大な狼の姿へと変わっていった。


「ガォォォォ!!」


「ガルルルル!!」


二体の巨大な(あやかし)は、唸り声をあげてお互い威嚇し始める。


こ、こんなのいけない。

他の種族たちも怯えて、船に逃げ帰るものたちまで出てきた。


私は、素早く羽を広げて、ルガリオンの背中から離れる。


「シュラ!」


シュラの顔の近くに飛んでいくと、彼はハッとした顔をして私を手のひらで包もうとした。


「ガル!」


すると、後ろから大きな口を開けたルガリオンが、ジャンプして私を咥えようとする。


「目を閉じて! シュラ!!」


私はカッ! と全身を光らせた。


「グワ!」

「キャイーン!!」


あまりの眩しさに、ルガリオンは顔を逸らし、シュラも片手を翳している。


今だ!!


私は光を止めて、シュラの顔の近くにとまると、彼は急速に小さくなっていく。


いつものシュラに戻り、私も変身を解いた。


「クローディア、大丈夫か!? 変なことはされなかったか?」


シュラは、心配そうに顔を覗き込んでくる。

彼の額に開いていた目は、もうない。

巨大化した時だけ開くのかしら。


私は首を横に振って、笑顔を浮かべた。


「大丈夫、なんともないの」


「よかった」


シュラは、ギュッと抱き締めてくる。やっぱり、彼の腕の中の方がいい。


ルガリオンなんて、嫌。


気持ちが落ち着いてくると、周りが見えてくる。みんな散り散りになって、行列が滅茶苦茶。こ、これはいいのかしら。


ルガリオンの姿も見えない。

彼も元の大きさに戻ったのかも。

それなら改めて、みんなに謝らなきゃ。


「おーい」


そこに、スライムチャンプがやって来る。誰かと一緒……元の姿に戻ったルガリオン。いえ、彼だけじゃない。尻尾が二つに割れた猫と、骸骨の体にローブを羽織った人物が、ルガリオンを脇に挟むようにして連れて来ていた。


彼らは確か、化け猫と、アンデットの(おさ)ではなかったかしら。


「化け猫の(おさ)、ジーナ」


「アンデットの(おさ)、ヴィゾン。百鬼夜行の列を乱すのは、御法度である!」


「やべぇぞ? 御神木がお怒りだ」

読んでくださってありがとうございました。

お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ