表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/32

※ウドレッダ視点 格下が生意気ですわ

「ボクに悪意はないんですよ。ボクはサトリ鬼。彼女の心を読んだ上で、力を貸しただけてす」


サトリ鬼、ノアジャクマは涼しげな顔で私たちを見ている。


頭にくるわ。勝手に注射したくせに。


「あんたが、無理矢理注射したでしょ!? 私はまだ返事していなかったのに!」


私が噛み付くように叫ぶと、ノアジャクマはふふん、と、笑った。


「薬があるなら、くれと言ったのは君だろ」


「そ、そ、それは、そう言ったけど、醜くなりたくないと言ったはずよ!?」


「保証できないとちゃんと説明した」


「なら、打たなければよかったでしょ!?」


「やってみないと、どんな種族になるのか、どんな姿になるかはわからないんだから、試したのさ」


「こんなふうに、なりたくはなかったわ!!」


「くす。そうは言うけど、そういう姿の鬼の女も、この世界では普通にいるよ。(おさ)だって、別に気にしないと思うけど」


なんですって!? 普通?

(おさ)は気にしない?


私は、チラリとクローディアを見る。人間の容姿に角と翼が生えて、髪や目の色が変わった美しい鬼。


(おさ)だって、見た目は人間の容姿に角が生えているだけ。


このノアジャクマも、似たような見た目。


私から見たら、全然違うじゃない!!

私一人が、ゴツくなってるのよ?


「あんた……あんたはどうやったのよ!?」


私は太くなった腕で、クローディアの首を掴んだ。


「ウドレッダ姫!? 何をす……!!」


「こんなに腕力の違う種族と、どうやって交われたわけ!? 絶対無理に決まってるのに!」


「は、離して」


「あんたも、薬でしょ!? もっと特別な……何かいい薬を、(おさ)にねだったんだわ!」


「違う」


「嘘つき! (おさ)に怪我までさせて、自分ばっかりこんな綺麗になって!! 許せない……生意気なのよ!!」


ぐんと体が膨らむ感触がして、着ていた服が裂ける音が聞こえる。


気がつくと、もう片方の腕も人間の腕ではなくなっていた。


え、まさか……これ。


私たちを見ていたノアジャクマが、肩をすくめてため息をついている。


「あーあ、全身が変わっちゃった。知ーらない、と」


彼は、スーッと森の奥に消えて行った。

どこに行くのよ!?


なんとかしていきなさいよ!!


「あ……」


クローディアが、私の後ろを見て顔が青ざめている。


な、なによ、なによ!?

クローディアは、焦ったように私に言った。


「離して! 早く!!」


なんだというの?

そう言おうとしたのに、口から出てきたのは獣の唸り声のような声。


「ヴォォォォ」


え、なぜ?

喋れないの?


「てめえ、俺の大事な伴侶に、何してやがる」


戸惑う私に、聞き慣れた推しの声が聞こえた。

まさか、(おさ)が来たの?


後ろから近づいてきてるんだわ。


それにこれは……怒ってる。

相当怒ってる声。


「シュラ、私は大丈夫」


クローディアが、私を庇うように言った。何よ、舐めてんの?


庇ってくれなんて、誰が頼んだのよ?


(おさ)に対する恐怖より、クローディアに哀れまれる屈辱の方が上回った。


私より格下のくせに!!

下っ端が、いい格好するんじゃないわよ!


自然と腕に力が入り、首を掴んだまま、彼女を高く持ち上げる。

軽い……!


このまま捻り潰せそう。


(おさ)もこいつがいなくなれば、私しかいなくなる。


(おさ)に、愛してもらえる。

この腕に、あとほんの少し力を加えれば、首の骨を折れるわ……。


カッ!!


突如、クローディアの全身が、激しく光った。

きゃ! 眩しいぃぃ!!


まるで太陽の光を、放っているみたい!


バサ!!


「ンガ!!」


大きな翼に腕を払われて、思わずクローディアを離してしまった。


なんて、強い翼なの?

そ、そういえば、ノアジャクマの一撃を平気で受け止めてた。


く! もう一度……ああ、だめ。目を閉じていても眩しい。


ふわっと体が浮き上がる。


え?


ドスン!!


背中から地面に落ちて、一瞬息が止まりかけた。


「ガ……!」


今度は、何?

光が収まったので、恐る恐る目を開けると、そこには倒れた私を見下ろす(おさ)がいた。


ブン! と目の前で銀色の棒が振られて、盛り上がった地面がならされていく。


冷たい目。

敵を見るような目。

私は彼の不思議な力で、地面から浮き上がって落ちたんだわ。


「クローディア、怪我は?」


(おさ)が、クローディアを呼ぶ。

彼女は、変身を解いてそばに寄り添った。


「大丈夫、なんともない」


なんともない!?

爪で引っ掻いてやればよかった!!


悔しさが溢れて、歯軋りする。

(おさ)は私を覗き込んで、顔を確認してきた。


「この辺では見ない奴だな。種族は紫鬼羅刹族(しきらせつぞく)、か。剛腕で、大岩すら捻り潰せる種族だ。首はなんともないのか? クローディア」


「ええ」


流石(さすが)光鬼天羽族(こうきてんうぞく)。強靭なしなやかさで、剛力をものともしないもんな。でも、見ている方は肝が冷えたぜ」


「ごめんなさい」


剛力をものともしない……。何よ、変身しても、こいつには勝てなかったということ?


悔しい!!


「シュラ、ノアジャクマは?」


「もちろん、捕まえたよ。ほら」


ドサ!!


隣に、顔を殴られたノアジャクマが、放り投げられてきた。


い、いつの間に?


(おさ)……ボクは、悪くありません……」


「黙れ、ノアジャクマ」


「腕を怪我していると聞いていたのに、いいパンチでしたよ……」


「ふん、怪我しているからこそ、お前は生きているんだ。それで、ウドレッダ姫はどこだ?」


(おさ)が辺りを見回している。嫌、嫌、気づかないで!!


こんな姿をしていると、知られたくない!!


「ウドレッダなら……」


ノアジャクマが言いかけたので、私は倒れたまま、素早く彼の顔を殴った。


余計なこと言うんじゃない!!


ノアジャクマは、すぐに気絶する。

そう、それでいい。


「ん?」


(おさ)が振り向いたけど、バレてないみたい。

クローディアも、バラす気はないみたいだし、あとは元に戻る方法さえわかれば……。


(おさ)は、倒れたままの私のそばにしゃがみ込む。

きゃー、私を見てる。

こんな姿を見られて、嫌だけど嬉しい。


「シュラ、今はウドレッダ姫を探しに行きましょう」


クローディアが横から、(おさ)を遠ざけようとする。く……また、余計なことを、この女。


「ウドレッダ姫ね。あいつも見つけたら、即刻人間界に返す。俺の忠告を聞けないなら、父親ともども追放処分だ」


「人身御供としてきたのに、いいの?」


「単なる押しかけだからな」


「押しかけ、ね。この鬼をどうするの?」


「調査と刑罰を受けさせてから、仲間たちのところへ戻すよ。地獄の蟲が蠢く地下道が、本来の棲み家だから」


ええ!?

地獄の蟲!?


いや、いや、いやぁぁ!!


私は必死に首を横に振った。

なんでもするから、それだけは……。


「それより、一刻も早くウドレッダ姫を見つけないと。下手に鬼たちが怪我を負わせたら、それこそ悪鬼に落ちる仲間が出る」


(おさ)!」


そこに、マザージモミが、お父様を連れてやってきた。


なんで、連れてくるの?

お父様の額には、矢印のようなものが浮かび上がっている。


「もういいのか? マザージモミ」


(おさ)、ご迷惑をおかけしたザマス。ウドレッダ姫の父親に術をかけ、血族の印で追跡してきたザマス。それによると、この辺りにいると出たザマス」


うう!? 嫌、いやよ、あっちに行って!!

クローディア以外のみんなの目が、私に注目する。


「何ザマス? この醜い鬼」


「紫鬼羅刹族だよ、マザージモミ」


「知っているザマスが、こんなに醜くないザマス。まるで捻くれ者の心の内が、顕現したかのような容姿ザマス」


うるっさいわね! 千目鬼の分際で!!

あんたなんか……。


「ウドレッダ」


お父様? お父様が私を見てる!!


「お、おじ様!」


「え、ウドレッダ?」

「どこザマス?」


「我が娘ウドレッダ、なぜ寝転がってるんだ?」


───バレた……。



読んでくださってありがとうございました。

お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ