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※ウドレッダ視点 無礼は許しませんわ

「ここはどこなの?」


「マザージモミの敷地を、少し抜けた森の中だよ。えっと、ウドレッダでいいんだっけ」


「ええ。あなたは、ノアジャクマね。あの、(おさ)の怪我の話を聞かせて」


(おさ)は、利き腕を怪我しているそうなんだよ」


「利き腕を?」


私は、サトリ鬼・ノアジャクマの後ろをついていきながら、話に耳を傾けていた。


「なぜ、怪我したの?」


「それがさ、クローディア様を館に迎えたその日に何かあったみたいで」


「ええ!?」


「まあ、多分……」


「クローディアね? あいつが(おさ)を怪我させたのね!?」


「彼女の鬼化と、何か関係あるかもね」


「あいつ……私の推しに怪我までさせるなんて。許せない!!」


「おお、すごい怒りだ。彼女が来て一ヶ月経つのに、まだ治っていないということは、重症を負ったんだろうな」


「私なら、そんなことさせないのに!」


「ふふ、そうだね。君はそんなことさせない」


「でしょ?」


「───ま、そもそも、そこまでの覚悟をさせる存在じゃないしね」


「え?」


「んーん、なんでもないよ。心配だよね、何があったんだろうね」


「やっぱりあいつじゃダメなのよ。私じゃなきゃ、私でないと」


「うん、だね。さあ、鬼に変わるプロセスは知っているの?」


「え、ええ。その……鬼と交わることだって」


「あははは、まあ、そうだよね。それしか聞かないよね」


ノアジャクマは、ピタリと立ち止まって振り返る。鼻筋のスッと通った、素敵な顔立ちを間近に寄せてきた。


「───ボクと、どう?」


「え!!」


顔が思わず真っ赤になる。

(おさ)としか考えていなかったけど、この鬼も格好いいのよね。


そりゃ、(おさ)の方が美形なんだけど、今すぐ心変わりするわけじゃないし。


どうしようかしら。


(おさ)がメインディッシュなら、この鬼はさしずめ前菜、てことで。


後でうるさく言い寄られても、(おさ)を手に入れたら、(おさ)に追い払ってもらえばいい。


だって、この世界では、誰も(おさ)に逆らえないのだから。


「ふふふ、悪いこと考えちゃって」


「あ! そうか、あなたは心が読める鬼」


「このボクが前菜扱いとはね」


「だ、だって」


「いいの、いいの。まあ、確かに(おさ)はメインディッシュだよね」


「私にとってはね」


「ふふ、いいねぇ。そこまで正直に言われると、かえってふんぎりかつくよ」


ノアジャクマは、近づいてキスをしてきた。


んん!? ここで? それに……これじゃ!!


私は思わず彼を押しのける。


「あれ、痛かった?」


「強すぎるわ! 舌の根が抜けるかと思ったわよ!!」


「くくく、やっぱり脆いね、人間の体は」


ザワッ。

背中に悪寒が走って、鳥肌がたつ。

脆い……。


ノアジャクマは、私の手を握ってくる。その万力のような力に、手の骨がミシミシッと軋む音がした。


「痛い!!」


「え、これも? 人間の女の子は久しぶりだから、加減を忘れたな。ええっと……確か、鶏の卵並みだと心得よ、だったかな」


「鶏の卵!?」


「そんなものだよ、ボクたちにとって」


嘘……そんなに脆いの?

じゃ、少しでも油断したら、大怪我どころじゃ済まない。


(おさ)が言っていた……本当に私を大切にする鬼と交われと。


この鬼は、私を大切にできるの?


クローディアが、あまりにも(おさ)と普通に接していたから、深く考えてこなかった。


勝手にほどよく加減してくれると、思い込んでいたから。


「そんなに怖がらないでよ」


ノアジャクマは、ヘラヘラ笑って抱き締めてくる。うぐ! し、締め殺される! 全身の血が行き場を失って、暴れ出しそう。


「あ……ぐ、苦し……」


息が詰まる。息を吸いたくて口を開けても、入ってこない。


「えー、まだ、ダメなの? これ以上力抜いたら、触れてるんだか、触れてないんだかわからなくなりそうだよ」


「は、離し……て」


「ウドレッダ。美しい鬼になりたいんでしょ?」


「そ、そう……だけど」


「クローディア様は乗り越えたからこそ、あんなに綺麗な鬼になれたんだよ?」


「!!」


「君の覚悟はその程度?」


ぐ……あいつに負けたくない。

でも、このままじゃ、本当に死んじゃう!!


目の前が真っ白になりかける。ああ、もう……息が……。


「無理!!」


命の危険を感じて、本能的に叫んでいた。

ノアジャクマは、大笑いをして腕を解く。


「あははは! だろうね、君はやっぱりクローディア様に及ばない」


「く……ゲホゲホ! はあ、はあ……あ、あいつだってインチキしたかも」


「インチキだって?」


「こんな苦しいことに、耐えられるはずないもの!! そうよ、薬、何か特別な薬とか」


「薬ねぇ。一応あるよ」


「!!」


やっぱりね!! あいつはそれを使ったのだわ。(おさ)をうまく騙したのね。


「ちょうだい!」


「いいとも。後悔しないのなら」


「するわけないわ。美しい鬼に変われるのでしょう?」


「強く願うしかないよ。こればかりは、運だから」


「保証してくれないの?」


「ないよ、保証なんか。それでもやるかだ」


「……醜くなるのは、嫌」


「ふふ、なら、少し試すか」


「え?」


ノアジャクマは注射器を取り出して、私の左手に刺した。


「あ!」


左手が熱くなり、みるみる膨れ上がっていく。

え! な、何これ!!


(おさ)い爪が生えて、左腕が筋肉質に変わっていく。気がつくと、巨大な腕に変化していた。


「あらー、意外とゴツくなったね」


「いや……なにこれ! 戻して!! 戻してよ!!」


「無理だよ」


「え!?」


「人から鬼へなれても、逆はないの。それこそ、神様にしかできないね」


そんな……そんな、そんな!!

美しい鬼どころか、怖い鬼になっちゃう!!


(おさ)にも選ばれないわ、こんなの。


「ま、ほら、片腕だけでよかったじゃない。ものは考えようだよ」


「ふざけないで!」


ムクリ。

私の怒声と同時に、腕から肩にかけても、太くなっていく。


「ほらほら、あんまり興奮すると、薬液が体の他の場所も変えちゃうよ?」


「ひぃ!」


「落ち着いて、ね?」


これが落ち着いていられる!?

ノアジャクマは、相変わらずヘラヘラしている。


イケメンのくせに、軽薄な鬼ね!!


「おっと? 首のあたりまでゴツくなったよ?」


「!!」


いや……いや。

こんなのいや!!


「ふふ、新たな鬼の誕生だな」


「いやぁぁ!!」


「少し、うるさいよ、ウドレッダ。気絶させるよ」


ノアジャクマが、私の頭を殴ろうとしたその時だ。


「ウドレッダ!!」


聞き覚えのある声。

そして一瞬で目の前を覆う、純白の羽。


これは、まさか。


ドス!!


衝撃音はするのに、私はなんのダメージもうけない。


振り向くと、大きな羽で私を庇うように包んでいるクローディアがいた。


「あんた……なんで!?」


「忘れ物をしたから、マザージモミの館に戻ったの。そしたら、彼女が倒れていたから。話を聞いて、追ってきたわけ」


た、助かったわ。(おさ)に、こんな姿は見せられないもの。


「これは、これは。初めまして。クローディア様でしょうか」


とぼけたような、ノアジャクマの声がする。


クローディアは、ゆっくり羽をたたんで、彼を睨んだ。


「ウドレッダ姫に、何をしようとしたの?」


「彼女が望むことを」


「ウドレッダ姫が望むこと?」


「鬼に生まれ変わり、(おさ)に愛されたいそうです。あなたのように」


「!!」


クローディアが驚いて、私を見る。

ふ、ふん、私は悪くないんだから。


こうなったのは、あんたのせい。

あんたが、何もかも悪いんだから!!



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