第7話 Side story. 君を思う
前回までのあらすじは
名無しの勇者は異世界の魔の王と戦う。
決戦は長引き、まるでどちらかの延命を願う思いが、ほんの少しだけ叶っているようだった。
3週目の2回目
( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
今週は祝日サプライズで、もう1話。
洞窟のような光源の僅かで狭い空間。
尻窄みに狭くなっていく場所で大勢の武装した人間達が大量のエイリアンと戦っていた。
二足歩行の2メートル程の背丈に映画に出てくるような未来テイストなバトルコスチュームに両鉈のような武器を持った蜥蜴のような風貌。
相手をしている人間達は劣勢だった。
広場のような所で先頭に立つ騎士の格好をした青年が仲間を鼓舞するように宣言する。
槍を掲げて突進しようとした瞬間、彼は首元から上が弾けて体から前に倒れると動かなくなる。
彼に連いて行こうとしていた後ろの群れは、たちまち悲鳴を上げて逃げ出し烏合の集と化してしまう。
それをエイリアンに囲まれながら隣の方から見ていた上半身裸の粗暴な男がトカゲに切り掛かって次の攻撃を止める。
逃げ惑う彼らを助けるでも無く食われていても興味がないのか目の前の敵のみを相手にしていた。
「人間を生かすだけじゃ駄目なんだよ。
ちっ、何故それが分からねぇ!」
言いながら男はトカゲを袈裟斬りにして自分の後ろに控えている条件の済まされた者達を舌打ちして睨む。
「しょうが無いわよ、導くのは彼の本分だもの!
ワタシは嫌だけど……あらゴメンなさい」
彼とは別の斜め後方に陣取っていた神官の格好をした女は自分の後ろを振り返ると舌を出して率いている人間達に軽く謝る。
持っている杖で魔法を放ってトカゲへの攻撃も忘れない。
「阿保がぁよぉ!!
仕事じゃなきゃ、こんな辺境くんだりに何て来たきゃね~ってのによっッと!!!」
次々とトカゲを捩じ伏せながら少しずつ前へと歩みを急ぐ裸の男。
「そう?
でも可愛い子もいるから役ッ!?」
言おうとして神官の女はトカゲの尻尾に吹き飛ばされ転がって動かなくなる。
「気ぃ抜いてじゃね~ぞ!
馬鹿がぁ!!」
口悪く罵るも身体は神官の女に向き直り駆け寄ろうとしてトカゲに阻まれてしまい、その苛立ちを拳で直ぐに発散させる。
「あら、ずいぶんな物言いね。」
倒れていた神官の女の身体は粒子に変わると背景に有った洞窟に描かれていた壁画の荘厳な女性が光って1つ消えると床の同じ位置に血の痕も汚れもない状態で神官の女が光に包まれながら体の下から現れて立っていた。
「ふん、オラァ!!
お前ぇも、さっさと起きねぇかぁ!!」
そう言って粗暴な男は騎士の青年の背中を踏む衝ける。
頭の無い騎士の男は神官女と同じ手順で姿を現すと顔に影を落とす。
「彼らは誰1人として殺され喰われ生き延びていない」
状況を確認した途端に落胆して悔しそうに跪いてしまう。
「なら早く復活すりゃ良かったんだ!
トンチキがぁ!!」
柄を持ちながら殴ってトカゲを見ずに騎士に問いかけた。
「私は皆に加護を授けていた。
直ぐには顕現できなかったんだ。
」
「そりゃ、馬鹿だな。
お前は飛びっきりのマヌケで、お人好しが度を越してる。
奴等に渡れてやる程の価値が、どれ程あったかよぉ、え?
うぉりゃ!!」
自分の後ろにも聞こえるように言いながら左袈裟斬りしてトカゲを殺しながら戦闘は止めはしない。
「よしっ隙が出来た。
今だ!
お前らぁ先にさっさと進めーーー!
足上げて走りやがれーーーー!
あそこがゴールだぞ!!」
「行きなさい!
これが最後のチャンスよ。」
杖が光って竜巻を発生させるとトカゲ達のみ、を巻き込んで、これ以上を通さないように必死に維持する。
「殿は私が務めましょう。
せめてものの償いです。」
騎士は槍を両手で構えて粗暴な裸の男や神官の女とは逆方向に走り出すと、トカゲ達を相手取り始める。
突き刺すと、そのまま後ろにいたトカゲごと串刺しにして盾で別のトカゲを殴る。
少し後ろでは彼を見ながらトカゲが近付かないように粗暴な男と神官の女も油断せずに追撃を絶やず意を組んで前を目指して進む。
★
天上は更に低く狭くなり袋小路に辿り着いた武装した人々は一人一人がソフトボール大の光の珠を手に抱え集まってはトカゲが来ないかと震え怯えていた。
遅れてやって来た粗暴な男と神官の女は守っていた生き残りが総勢200人程も居ない事に二人は内心、焦りを募らせる。
「(クソっ)‥‥‥あとは送るだけだ。
気張って生けよ!」
壁を叩いて焦燥に駆られながら魔力を集めて率いていた者達にむけて放つが、その姿には悔恨を隠せずにいた。
「力を抑制されてるのは言い訳には成らないわね。
生き残った、この子達の面倒は見ないとね。」
折れた杖を投げると透明になって光に消える。
そして粗暴な男と同じ事をするために胸の前に魔力を集め始める。
集めた魔力をゆっくりと解き放つと彼等が持っていた光の珠が反応して1人ずつを包み込むと光の玉に変わって飛んでいく。
壁を通り抜けて外へと逃げおおせて事なきを得たのを確認してから彼女は、安堵の溜め息を吐く。
「…………ひとまず役目は達成ね。」
「転生者が何人も死んじまったがな。
クソぉーーーーーーー!」
粗暴な男は落ちていたトカゲの切断された尻尾を片手で掴むと握り潰して投げ捨てる。
言い様の無い感情の逃げ場もコレにしか解消る他、無い程に追い詰められている証拠でもあるからだ。
「私の甘さが招いた結果だ。
このまま、ここに残って1匹でも【闇の使い】を殲滅しよう。」
「あぁ?
いや、そりゃ却下だろ。
俺達は、ここに残って任務続行だ。
そうじゃ無くても腹の虫が治まらね~っ何より死んでった奴等に申し訳がねぇ~だろがよ。」
「しかし!私にはっ!!」
「しかし?
しかしも、でもも、ねぇーんだよ!あぁ!?
そんな我が儘が通じるターンは、とっくに終わってんだよ!!!」
騎士の青年の首元を掴んで言い合いが過熱しそうになるのを神官の女が手を叩いて辞めされ冷静に戻すよう促す。
「はいはい。
そこまでよ。
今、ようやく上と繋がって定期連絡が届いたわ。
やり直しっていうと陳腐だし意味合いも多少違うのだけれど成って変わったわよ。
数柱は人間を導かなきゃみたいだけどワタシは飽きたわ。
何よりも、やりたい事が山積みだから帰らせてもらうわね♡
(確認したい事もできたことだし♪)」
「おぉ!成功したのかッ!!
ヨッシャあ、介入出来たのか。上々だぜ!!
ハン!
行けっ行けっ、ど~うせ、お前が1人だけでも姦しいんだ。
人間達の前じゃあ猫被ってただけマシだったけどよ!」
手でシッシッと大げさにジェスチャーをしながら神官の女を邪険にする。
「ワタシ相手に言うようになったじゃないの?
貴方、元は人間のクセにね!
偉そうになった者ね、フン!!」
険悪な雰囲気はせず、流れる空気は数分前までの殺気立っていた物から緩やかな物へと変わっていた。
「お前はクソババァじゃね~かよぉ!!」
「はぁ!?」
「あぁ!!」
「もっぺん言ってみなさいよ!」
「お前は自由奔放が過ぎるだろがぁ!?」
「まぁまぁ、まぁ良い知らせの後なんだ。
止さないか二柱共!
それにしても、これで彼等も少しは報われるはずだよ。」
さっきとは逆に二人を仲裁しながらガッツポーズを取りそうに心底、喜ぶ騎士の男を他所に神官の女は少しだけ不服そうだった。
「はぁでもワタシ、分岐とか血筋主義って嫌いなのよね」
「そうなのかよ?
でもよ?
今回は偶然なんだしよぉ~、直接の関係は無いだろが。
いいんじゃね~のか?」
「そうでも無いよ。
彼等は複雑に絡み合って知らず知らずに、いずれ出逢う運命に在るはずさ。
それでも私は信じているよ。
世界は如何も不確かでも何処かでは希望に充ちているはずだってね!」
視界には映っていない違う光景を思い描いて見ながら後悔するように騎士は自分を責めるように下を見て言い淀むも希望を忘れては為らないと顔をを上げる。
「そうか?
あーーまぁ、そんなもんか、まぁ~だよな。
おん、仕方ねぇ~か。……………の奴だもんな。」
「私があんな事をしなければ。」
「言っても始まらないでしょ?
それこそ運命で偶然って奴なんでしょうから。
んじゃワタシは先に行ってるわね!
やっと会えるものね。
ワタシの選んだ、ギフテッド………………、今はヴァレンって名乗ってるのね♪
逢うのが愉しみだわ!!」
言いながら透けるように静かに透明になると神官の女は居なくなった。
「あぁ、俺も後で行く。
黒の糞裏切り野郎がぁ~よぉ~、Xデイなんて呼ばれて崇められてやがるのかよ!
許せねぇ、少しでも痛手を残してやるから活躍、見てろよ!!」
「君だけに無茶は、させられないな。
私も一緒に居よう!」
「はぁなんだぁ!?
お前何年まで親気取りなんだよ!あぁ!?」
粗暴な男と騎士の青年は半透明になって消えて飛んでいく。
壁を通り抜けて風に乗るように外に出ると自然豊かな熱帯森林の中で、この場にそぐわない悪目立ちする無機物の巨城に有機物を無理矢理に融合されたドロドロとした液体を垂れ流しているドラゴンのような失敗作染みたソレは鈍い歩みと蒸気を出しながら千メートルからの重量の足跡を残している。
空中で姿を表すと粗暴な男は腹癒せのように不可能と知っていながら剣を振り翳して傷を微かに作る。
喜んだのも物の束の間に修復されてしまい腹立たしそうに叫んでから空に溶けるように姿を消すのだった。
「魔人どもめッ、必ず何時か眼にモノ見せてやるからなッ!
覚悟してろよーーーーーーーーーー!」
「やれやれ(´-ω-`;)ゞ」
★
その出来事の一部始終を固唾を呑むのも忘れて茫然としていた人物達がいた。
その中の少年少女等から1人が片手で持てる大きさ程の水晶に掌を触ると機能は停止される。
抱いた感情が乗った吐く白い息は無意味だと実感させるように霧散していく。
それは歴史が止まらないという唯一無二の事実を表している化のようで悔しく、その事を再確認させられたんだと余計に思えて来て仕方なかった。
──未来を想う──
来週も月曜の12時です。