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『時空探偵』  作者: shiro
2/2

〜第二話〜 鯨の招待




桜木ミノト「…ここなんですけど…。」




蜜羽クロト「…え…。」




桜葉ヨウト「…全部(みんな)死んでますね…。」




蜜羽クロト「…ホントにまんま全部(みんな)死んでるな…。。」




桜木ミノト「…はい。。…もう引っ越したんですけど、また周りでこんなことが起きるなんて思うと、怖くて……。申し訳なくて…。。」




ミノトの声が潤み出す。




蜜羽クロト「…安心してください。私(達)がどうにかしてみせます。キリッ」




桜葉ヨウト「(…おいおい。)」




蜜羽クロト「…にしても…、あなたのお家は意外と被害が軽微なんですね。(…まあ、住める状態ではないが…。。)」




桜木ミノト「…はい。。というのも、私の家にはあまり引火しなかったそうで…。幸い、荷物も、大事なものはほとんど無事で、まあそれはよかったんですけど……。」




蜜羽クロト「…うーん、なるほど。。…取り敢えず、調べてみますか。」




桜葉ヨウト「あ、カメラもありますよぉ!」




ヨウトが楽しそうに首から下げたカメラをクロトに向ける。




桜木ミノト「…あの。。私は…どうしたらいいでしょうか…?」




桜葉ヨウト「…あ、そっか。。…いや〜…ここでずっと棒立ちで待っててもらうのも申し訳ないが…、…うーん…まぁでも、僕たちの仕事現場を見られる訳にもいかないし…やっp…」




蜜羽クロト「んー、まあ、着いてきていいですよー。」




桜葉ヨウト「おぉぉぉぉぉい!!!何言ってんねーん!!」




蜜羽クロト「んー?まぁ、減るもんじゃないし、いいんじゃね?テヘッ❤︎」




桜葉ヨウト「(…こいつ、完全に惚れてやがる…。)」




桜葉ヨウト「…もう、どうなっても知りませんよっ!プンッ」




蜜羽クロト「…じゃあ、まずは…土をぉぉぉ…?どぉぉぉぉぉん!!」




クロトがサッカーボールを蹴る様に思い切り土を蹴り上げる。




桜葉ヨウト「いや何しとんねーーーっん!!」




蜜羽クロト「??いや、土地の状態を知りたくてさ。土地の時空の歪みも大事なの…!」




桜葉ヨウト「依頼主に遊んでると思われたらどうするんですか!!もっと抑えて!!シャーーーー‼︎!」




桜木ミノト「あはは!!お二人とも面白いですね!」




ミノトが目を細め、少し顔を俯けながら泣き笑う。




桜木ミノト「…この家はもう住めないんです。だから、いっそ遊び場にするぐらい茶化して貰った方が、踏ん切りがつくので、全然いいんです。最近は、ずっと不安で一杯だったので、お二人の様子を見て、なんだか少し心が軽くなりました。」




桜葉ヨウト「そう…ですか…。」




桜葉ヨウト「…ごめんなさい…クロトさん。。僕…ウルウル…」




蜜羽クロト「…んー…。」




クロトが顎に手を添えて少し考えた後、鬱金色(うこんいろ)のメッセンジャーバッグから、(みどり)に輝く石を土に向かって投げ落とす。




桜木ミノト「…これは何ですか?」




蜜羽クロト「これは夢翠石(むすいせき)です。夢に翠で夢翠石。時空の歪みやすさを測れるんです。これで、この土地が時空の歪みやすい特異な場所なのか、それともそうじゃないのか、つまり、この大規模な火事が単なる偶然なのかどうか分かります。」




桜葉ヨウト「コレチョーキレイッスヨネー。」




桜木ミノト「…結果は…?」




地面に落とされた夢翠石が、より輝きを増した。




蜜羽クロト「…ビンゴですね。時空が歪みやすい土地です。」




蜜羽クロト「安心してください。この火事はあなたのせいでも、何かがあなたに取り憑いたものでもありません。何とか時空を整備して元に戻しましょう。」




桜木ミノト「ホンマですか!?助かります!」




蜜羽クロト・桜葉ヨウト「…!?」




二人が目を丸め、驚いた顔で、彼女の方を見る。




桜木ミノト「…あ…!す、すみません…!!親戚に関西の人がいたので…ちょっとだけ移っちゃってて…。」




桜葉ヨウト「…あ、あぁ〜…、なるほどねぇ〜…。…まぁでも、関西弁もギャップで可愛くていいですね!!」




一方、クロトは無視して考え事をしていた。




蜜羽クロト「(…うーん…人の影響はなさそうだな…。取り敢えず、調整しとくか…。)」




顎に手を当て、考えながら、クロトが決める。




蜜羽クロト「これから、この地に(くさび)を打ちます。」




そう言って、クロトは欝金色のメッセンジャーバッグから、紫黒色(しこくしょく)に輝く、逆三角形の石と玄能(げんのう)を取り出した。




蜜羽クロト「これを使って、この地の時空を整備します。」

 



そう言って、両手に持った楔と玄能をミノトに見せる。




桜木ミノト「分かりました!!お願いします!!」




ミノトが、元気に答える。




蜜羽クロト「…じゃあ、始めるか…。ヨウト、周り見とけよ〜。」




その場にしゃがみ込み、ヨウトに言う。




桜葉ヨウト「任せてください!」




そう言って、ヨウトは立ったまま静かに目を閉じて、呼吸を整えた。

ヨウトの意識内に、全てが、黒い背景に緑の線で描かれた世界が映り出す。




桜葉ヨウト「(…右よし、左よし、前後よし。…今のところ何も来ていない。…てか意外と神経使うんだよなーこれ…。無防備状態だし…。。…まぁいいんだけど……。)」




その頃、クロトが、地面に楔を刺し、目を閉じ呼吸を整えて、静かに玄能で打ち始める。




蜜羽クロト「…1…、2…、3……」




楔を打ち始めると、周囲に鯨の鳴き声の様な音が響き渡り、その音が静かに消えていくと、また打ち始めた。




蜜羽クロト「…6…。」




蜜羽クロト「…終わりました。」




6回目を打ち終わり、響き渡った音が消えたタイミングで、クロトが目を開け、立ち上がって、言う。



ヨウトも欠伸をしながら目を開け、クロトのところへ向かう。




桜木ミノト「…終わった…んですか…?何か、すごい静かな雰囲気でした。。」




蜜羽クロト「裏の世界は、普段はこちら側とは交わらない様に設計されています。こちら側の表の世界よりも密度が低い、半霊的世界なんです。そして、そこにアプローチするには、脳波を変化させる必要がある為、集中力を要するのです。」




桜木ミノト「…は、はぁ…。」




桜葉ヨウト「つまり、大変ってことです。」




困った様に苦笑いしながらヨウトが言う。




桜木ミノト「なるほど!!」




蜜羽クロト「これで、この地はもう安心です。2度とこの様な不可解な火事が起きることはないでしょう。」




桜木ミノト「ホンマにありがとうございます!!これでもう安心です!私のせいなのかな、なんて思ってたので。。心配で心配で…。」




蜜羽クロト「…では、これにて依頼は完了です。」




〜その後事務所にて〜




蜜羽クロト「アァ〜!!マジ疲れたぁぁぁ〜!!何でこんなことしなきゃならんねん!!嫌だよもぉぉぉぉ〜!!ああいうの、もうイヤッ!!気遣うじゃん?息苦しいじゃん?プレッシャーじゃん!?しんどいねん!!!勝手にしてくれ〜〜!!閉店だよ!へ・い・て・ん!!!」




ソファに座りながら、クロトがジタバタして訴える。




桜葉ヨウト「まぁ、今日はゆっくり休みましょ。売名もできたし、良かったじゃないですか。何だかんだ初めてのお客さんだったし。」




ヨウトがコーヒーカップを持ちながら、クロトに言う。




蜜羽クロト「このやり方は続けられん。閉店だよ、閉店。グルコース消費も激しいし、もう、無理!!これから長期休暇だッ!!キミも休みたまえっ!ヨウトくん!」




桜葉ヨウト「は、はぁ…。わかりましたよ…。。じゃあ、久しぶりに遊んできますよ。あ、給料くださいねー。今回依頼人からお代頂いてないですけど、僕、しっかり貰いますから。」




蜜羽クロト「…ギクッ。だ、大丈夫だ。。う、上から活動資金は貰ってるから…。。わ、渡せるもん!!プンプン」




そう言ってソファから起き上がって、万札の束をヨウトに渡した。




蜜羽クロト「これで美味しいもんでも食べるんだなっ!キリッ 俺は、クジラちゃんと遊ぶんだぁぁぁ〜!!先進気鋭のVチューバー、クジラちゃんッ!!その圧倒的な笑顔と鳴き声で、世界を癒す、孤高のアイドル!!LOVE KUZIRA!! L・O・V・E KU・ZI・RA!!!愛してるよ〜!!!く・じ・ら〜!!!」




桜葉ヨウト「は、はぁ…。…ま、まぁ、わかりましたよ…。じゃあ、うち、帰りますからね〜。ばいばーい。」




ヨウトが背を向けながら手を振り、玄関を出ていく。




扉の音が閉まる。




蜜羽クロト「…はぁ…やっと独りか…。疲れたぜ…今日は…。。…ねー、クジラちゃん❤︎」




タブレット端末で、Vtubeを見ながら、画面に向かって話しかける。




蜜羽クロト「…あいつは、今一体どこにいるんだろうな…。。どう思う?クジラちゃん。ワタシハ、キミノココロナカニ、ソノコガイルトオモウヨ‼︎ そっか、そうだよな。いや、な訳あるかい!!あいつは、もう…。。。」



一人で二役しながら、静かに誰かに思いを馳せる。



その時、鯨ちゃんが、スバル水族館でライブをするという見出しが、画面に流れる。




蜜羽クロト「!?スバル水族館で!?クジラちゃんが!?行くしかねぇ!!待ってろよぉぉぉ!!クジラちゃ〜〜〜ん!!!!」






                    つづく。

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