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冒険始まりました。

 トンネルを抜けるとそこは雪国であった。


 某有名な小説の一節である。


 1文にして情景が目に浮かぶ素晴らしい表現だ。


 しかし、何故わたしはそのような素晴らしき一節を思い出してるかと言うと。


 それは、私が今現在進行形で目が覚めるとそこは大森林の真っ只中であった。という状況に陥ってるからに他ならない。

 これあれですよね、異世界転生とかっていうあれですよね。でもああいう小説って車に引かれて神とかって名乗る頭のおかしな人がいる不思議な空間に飛ばされて、こっちの手違いで殺しちゃった!てへぺろ!だから別の世界で生き返らせてあげるよ。的なノリで始まるんじゃないの?


 え、私の記憶をいくら探っても思い出せるのは夜仕事から帰宅して、風呂入って、歯磨いて、布団に潜り込んだ所までなんだが?


 とりあえず落ち着こう、ここは大森林雰囲気的には行ったことはないけどジャングルとか富士の樹海に近しいような感じがする。家の近くにあるちょっとした森とかとはレベルが違う、そんな雰囲気を感じます。

 こういうのって動かずに遭難した場所でじっと体力を温存するのがセオリーなんだけど、今回は特殊過ぎる。そもそも遭難じゃないし、私が森にいるなんて誰も知らないのだから、というか、私自身自分がこんな森にいるのを知った訳だから知人が知るよしもないよな。

 つまり、救助は絶望的。


 逆に動ける時に動いておくべきか。結局水がないと2~3日で脱水症状で動けなくなるだろうし。最悪水はどうにか確保したいところ。水さえあれば少なくとも1週間は動けるだろうし。


「さて、動くとしてどちらに行くべきか…」


 年輪を見れば方角が分かると言われてるけど、年輪が向いてる方が北だっけ?でもそんな都合よく倒れてる木もないし、方角が分かった所でどうするんだ?北に町があるわけでもないし、結局適当に歩くしか無いのか。


 ふと私は自分の服に視線を落とす。


「てか、なんで私スーツなんだよ」


 こんなスーツ姿とか動きにくくて仕方ないよ。


「まぁ、パジャマ姿ってのもそれはそれで嫌だけどさ」


 服装を嘆いても始まらないし、私は冒険の1歩をゆっくりと歩み始めた。




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