話せてません
マルクスに戻って数週間が過ぎて
商会の仕事や町の人々とのふれあいなど充実した日々を送っていた。
その間にテオバルド様との手紙のやり取りも続いている。
自分から提案した手紙のやり取りは何も知らない相手に対しての苦肉の策だったが、これのお陰である程度の交流をもててテオバルド様の人となりが想像できるような気がしていた。
今、リディアーヌの悩みの種は1つだけだ。
みんなにいつ結婚の話をするか? と言う事。
第2の実家とも言えるここへ帰ってきて、あまりに日数が経ってしまって、余計に言えずにいた。
このままでは、何も話せずに一度王都に帰ることになりそうだ。
そんな事を考えていると、パティが手紙を持ってきた。
送り主はお父様だった。
来月のはじめに王都に戻るので、一度帰ってくるようにと書いてあった。
そうね、悩みは帰って家族に相談してから、また考えよう。
◇◇◇◇◇◇
「きれい」
目の前の色とりどりの羽を眺めて、感動でため息がでる。
うちの商会と契約してくれてる貿易船から先程届いた髪飾り用の羽だ。
「うーん、このまま服飾商会に売り込む? それともうち独自で髪飾りを作る方向で動く?」
テッドに聞けば、
「どちらでもいいと思いますけど、お嬢さんがデザインしてみて、工房に持ち込めばどうです?
何か案があるから、羽の仕入れを考えたんでしょ?」
「あら? よくわかったわね。
確かに自分で使いたい髪飾りの案があったのは確かなんだけど…」
「だけど、私が付けたいだけよ?」
「そこはうまく社交場でアピールしてもらえれば、いいんじゃないですか?」
そうよね、新たな商品は社交界へ持ち込むのが一番早いけど…
今はそこから遠ざかっているからな~
そう、結婚のことで社交界に1人で参加するのが、躊躇われたから。
でも、作りたいな~
自分では出来ないかもしれないけど、お母様につけてもらえれば宣伝にもなるし… よし!
「わかったわ、テッド工房へ後で行くから付き合って」
「やっと、やる気になりましたね。
お供しますよ」
そういって微笑まれた。