役場とパン屋
マルクスの役場に入っていくと、受付に可愛らしい女性が座っている。
「こんにちは、マリーさん」
「まあ、リディアーヌ様お久しぶりですね」
「ええ、ご無沙汰してしまったわね、町長はいらっしゃる?」
「はい、町長室にいますよ
どうぞどうぞ、案内は不要ですね?」
「ええ、大丈夫よ、ありがとう」
私たちは勝手知ったる役場という感じで町長室へ向かった。
コンコン
「どうぞ」
中から返事があったので、ドアを開けながら話し出す。
「アダーモ町長ただいま!」
顔をあげたちょっと髪の薄いおじさんは大袈裟に驚いている
「リディアーヌお嬢様! いつお帰りで?」
「さっき戻ってきたのよ。
ドミニクが町長にも心配かけてたと言うから、早く報告しようと思って」
ソファーを勧められて座ると、後ろからマリーさんがお茶を持って現れた。
このために案内を辞退されたのね。
「私もずっと気になっていたんですよリディアーヌ様も北の領地へ行ってたんですか?」
「いいえ、お父様とお兄様に任せて、私は王都の屋敷で待機していたわ。
お母様と2人のいない間の事をいろいろ処理してたのよ」
「それで、北の様子はどうですか?
やっと落ち着いたとは聞きましたが…」
アダーモ町長も心配気に聞いてくる
「ええ、ロエベ商会の融資のお陰でだいたいの目処はついたの。
5つあった村を3つに統合して、あの辺一帯を作り直したみたい」
「そうですか、もともと端の村は過疎も進んでいたからちょうど良かったですね」
「そうね、私もそう聞いてるわ。
それと1番中央に近い村を大きくして町にするみたいよ。
大きな教会も作るらしいわ」
「おお、それはそれは 北もどんどん栄えてくれれば、こちらとも交流が増えますし、マルクスもいい影響が出るでしょう」
「なんにしても、よかったわ」
マリーさんは安心したのか、仕事に戻って行った。
その後私のいない間の町の様子を聞いたり、王都の流行りなどを報告して役場を後にした。
外へ出て、お店に帰る前にちょっと先にあるパン屋による。
夕飯のパンをパティに頼まれたのだ。
「こんにちは、おばさん」
「あれ、お嬢様お帰りなさい」
この町のお店屋さんは殆ど知り合いです。みんなとても気がいい人たちなので、私もこの町のために頑張りたくなるんです。
ここでも一通りしゃべって、パンと焼き菓子を沢山買って帰ります。
パンを持って、隣を歩くテッドを見上げてふと思いました。
「テッドって背が高いよね?」
「ん? いきなり何です?」
「ううん、何でもない」
旦那さまになるテオバルド様もこのくらいかしら?
何となくまだ見たこともない人を思ってドキドキするなんて変よね。