港町マルクス
私と兄はお父様から、領地の為に働く事 をある程度お許しを頂いています。
後々お兄様は当主として、私は嫁ぎ先で相手の家の手伝いが出来るように、練習をさせられているのです。
お兄様は北と南の領地両方でいろんな試みをされています。
なので、今回の北の領地の災害で被害を被った施策もあったみたい。
今はお父様とその後始末もしてるようです。
私は幸いにも南の港町でお店を出したり、交易をちょっとかじったりしている位なので、今回は何の被害もなかった。
そんな訳で北が落ち着いて、目処がついてきたから港町に赴いてみたいのです。
◇◇◇◇◇◇
━ジャルジェ伯爵領
港町 マルクス━
マルクスはジャルジェ伯爵領の最南端にある港町です。
港から北へ町のメインストリートがのびています。
その中程に私の営む商会があります。
建物は白を基調とした三階建てで、
一階は外国から仕入れた小物類を販売するお店と応接室、従業員の休憩室など、二階はそれらを扱う商会事務所、三階はここへきた時の私の家です。
「テッド ただいま!」
ちょうど入り口にいた相談役のテッドに声をかけます。
「あれ?お嬢さんお帰りなさい
今回はずいぶんとお店を空けましたね」
「テッドも北の領地の事は知ってるでしょ?
お父様があちらにかかりっきりだし、私も身動きがつかなかったのよ」
「わかってますよ、手紙で指示も来ましたからね。ドミニクさん達も変わりなくやってましたよ」
彼はテッド。
この商会で私の相談役として、頼み込んで手伝ってもらっている貿易アドバイザーだ。
ドミニクは商会を立ち上げた時に私の右腕としてお父様が付けてくれた伯爵家の財務官。
ドミニクの実家は商会を補佐する仕事をしている。
だから商会の事はお手のものなのだ。
その他の従業員も真面目で働き者をドミニクが雇っているので、業績は年々上がっている。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま、ドミニク。
変わりはないかしら?」
私は2人を連れて自分の執務室へ向かう。
大まかな経過報告をうけて、一息ついた時にテッドが言った。
「それで、北の災害の目処はついたんですか?」
「ええ、テッドはロエベ商会を知ってる?」
「もちろん! 国でも一、二を争う商会を知らない訳ないでしょ?」
「そのロエベ商会が融資を申し出てくれたの、ついでに我が伯爵家との事業協力の話も出てるの」
「なんと!」ドミニクも驚いてる。
「つい数ヶ月前は莫大な借金をしてもなかなか復興が進まないだろうって諦めていたところなのよ。
それなのにロエベ男爵のお陰で今は反対にジャルジェ家は業績アップの兆しよ!」
「「おお!」」
「よかったです、この町の人々も心配してましたよ。
町長がお嬢様が戻られたら話を聞きたいって言ってたんですよ」
「そう、じゃあちょっと町長の所行ってくるわ」
「1人で行く気ですか?」
私と一緒に帰ってきた侍女のパティまで、怪訝な顔をしてる
「この町は治安がいいし、大丈夫でしょ?」
「いや、北の災害の後少し町も騒がしくなってきてるから、オレも一緒に行きますよ」
「お嬢様、その方がいいです」
パティまで心配し過ぎじゃない?
ドミニクもうんうん頷いてるし…
3人そろって心配するから、言う通りにしますわ。
テッドと商会を出て港と反対方向へ歩いて、一つ目の角をまがって突き当たりが町役場だった。
歩いて5分としない所なのですよ。
3人とも過保護だわ。