やっと会えた旦那様は
もうダメかと諦めかけた時、急にフワッと身体が軽くなった。
苦しかった胸の上が楽になり、はぁーと息を吐き出し脱力する。
「リディアーヌ大丈夫か?」
ホッとすると私を抱き起こしながら、耳元で声がした。
ん?
この声、聞き覚えがあるわ。
目を開くと目の前に知ってる顔があった。
「テッド…」
「よかった… どこか怪我してないか? 痛い所は?
今縄をほどいてやるから」
そう言って手を縛っている縄を取ってくれる。
「なぜ、テッドがここにいるの?
それに髪… 黒い髪」
顔はテッドなのに、髪の色が違うし、しゃべり方も少し違う。
なんだろ、何かが引っ掛かった。
この違和感と分かっているのに、否定しているような気持ちと。
そこへレジスさんが来ました。
「テオバルド殿、犯人は確保しました。
奥様を拐った男も見付けましたよ」
「ご苦労様、先に連行して警備隊に引き渡してくれ」
「分かりました。
馬車を一台残していきます」
そう言って女を連れて数人で下っていきました。
「今、レジスさんがテオバルド殿って…」
テッドもといテオバルド様は頭をかいて、溜め息をつきました。
「黙っててごめん、俺の本当の名前はテオバルド・ロエベだ」
テッドが、テオバルド様だったの。
「テオバルド様…」
顔をじっと見てしまった。
お父様のロエベ男爵が言っていた通りだ。
黒い髪、濃いブルーの瞳
背も高い…
でも、でもずっと前から知っている顔なのだ。
「行こう パティ達が心配している。
馬車の中で説明するよ」
馬車に乗ってから、テオバルド様が話してくれた。
マルクスに来て私と会ったのは本当の偶然だった事。
私が商会の手伝いをお願いした時は、友達のトレビス様に頼まれてワグナー共和国の建て直しを手伝っている真っ最中だった事。
トレビス様と相談して1年のうち、数ヶ月はマルクスに行くことにした事。
そして、ジャルジェ領の災害があった時に父親であるロエベ男爵に融資を頼んでくれた事。
「では、テオバルド様がロエベ男爵にお願いしてくださったの?」
「ああ だが、その条件に貴方との結婚を持ち出されてね。
私がいつまでも結婚する気を見せなかったのが良くなかった。
リディアーヌにも悪い事をしたと思っている。
ただこのまま、2年間は顔を合わせる事はないと思っていたし、本当の事を打ち明けた時に嫌なら離婚すればいいとも思っていた。
まずは領の復興を最優先に考えたんだ」
ロエベ男爵からの融資を引き出すためにテオバルド様も仕方なくこの条件を飲んだんだ…。
そう思ったら胸がズキンと痛みました。
私は顔も知らなかったテオバルド様と手紙のやり取りをしながら、ずいぶんこの人に好意を持ってしまったのね。
離婚と言われて、寂しくなってしまうくらいに。




