手紙の中の旦那さま
テオバルド様から手紙がきた。
ワグナー共和国では、もうすぐ花の季節で、国中に花ばなが咲き乱れるそうで、いつか私にも見せたいと書かれていた。
私が商会をやっている事をこの前の手紙で書いていたから、その事に対しても凄いとほめてくれて、国に帰ってきたら、ぜひマルクスにも行ってみたいと言ってくれている。
お互い歩み寄りは上手く行っていると思う。
テオバルド様は好き嫌いはないけど、甘い物とお酒は付き合いで取るくらい。
体を動かす事は好きだけど剣術は苦手。
本は小説より、旅行記や航海録等の方が好き。
と、旦那さまの好みもいろいろ分かってきました。
その分身近に感じられるようにもなりました。
私は返事を書いてそろそろ一旦王都に戻ることを報告します。
◇◇◇◇◇◇
「お父様、只今帰りました」
私は王都の我が家にて、お父様に帰った挨拶をしに部屋を訪ねました。
「リディアーヌおかえり、マルクスは変わりないか?」
「はい、北の災害の後、一時的に難民のような人が入り込んでいくつか争いもあったようですが、私が滞在中にはいつものように落ちつきました」
「そうか、被害のなかった地区にも迷惑をかけているな、南の領地も順に警備を強化し始めた所なんだよ」
なるほど、他の所でも治安悪化を懸念していたのですね。
「ロエベ男爵にお前が戻ったら、1度伺いたいと言われているよ」
「そうですか、私もテオバルド様と仲良くやり取りしている報告をしたいですね」
「手紙のやり取りは順調なようだね」
「はい、お互いの事もいろいろ話していますから、それなりに仲良くなっていると自負しています」
「そうか、お前の顔を見る限りは嫌々やっているようでもないし、それなら、良かったよ」
「お父様、まだわたくしに後ろめたい思いを抱いておられますの?
わたくしは1度もこの結婚を後ろ向きに捉えたことはありませんよ
むしろこの状況を楽しんでおります」
「そ、そうか…」
「はい、顔が分からない分、手紙の書き方や文章から相手を想像していくのが楽しい程です。
もし、これでテオバルド様が極悪人だったとしたら、とんでもなく嘘に長けたお方ですよ」
そう言って笑ってしまった。
そうなのだ、毎回テオバルド様からの手紙には私の事を気遣う気持ちに溢れているし、少しでも自分を知ってほしいと思っていることも伝わってくるのだ。
そんな人が悪い人間な訳もない。
なら、私の旦那さまは素敵な人のハズなのです。




