領地の悲劇
そこら中の木がなぎ倒され、道と畑の区別も出来ないほど泥と瓦礫で全てが覆われていた。
想像も出来ないくらい巨大な竜巻が雷や暴雨と共にやってきたのだ。
自らの命を守るのがやっとだった。
何もなくなってしまったこの村は一体どうなるのだろう…
人々は途方にくれていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お父様、お帰りなさい」
「ああ、ただいまリディアーヌ」
憔悴しきったお父様を見て、領地の状態が思った以上に悪かったのだとわかった。
ジャルジェ伯爵領に自然の猛威が襲ったのは1ヶ月前の事だった。
一報を聞いたお父様はすぐさま領地に向かった。
そして今日やっと戻って来たのだ。
お父様の湯浴みと着替えが終わった頃、書斎を訪ねると家族が揃っていた。
お父様、お母様、お兄様… 弟のロンは庭で遊んでいていなかったけど。
私たちが揃ったところでお父様が話し出した。
「今回の災害で領地の北側の5つの村が被害にあった。
どこも村自体が消滅してしまった程のひどい有り様でね」
お父様はため息をつき、疲れきった声で続ける。
「領地の屋敷の辺りは被害はなかったから、屋敷の倉庫に備蓄してあった食料やテント類を全て運んで、いろいろ手を尽くしているが被害があまりにも大きくてね」
我がジャルジェ伯爵家の領地は北から南に縦に広がっている。
今回、北側の領地で嵐と竜巻が同時にやって来て、5つの村を壊滅的に破壊していった。
奇跡的に人的被害は少なかったものの、畑と建物はほぼなくなってしまった。
全て元通りにするには、莫大なお金と時間がかかりそうだった。
お父様は村長や村人たちと話し合い3つの村に統合して、開拓を進めるらしい
物資の搬入や建物の整備上5つに分けるのが難しいらしいのだ。
それでも伯爵家の全財産をなげうっても足りず、莫大な借金を作ることになりそうだとお父様は言った。
国に援助も願い出るつもりらしいけど、到底賄える規模の話ではないらしい。
何年もかけてゆっくり出来るのであれば、そこまで借金をする必要もないだろうが、なにせ、今住むところや食べることに困っている領民が数百人いるのだ。
それを見捨てる事も出来ない。
「みんなすまないが、これから少し我慢してもらう事も増えてしまうかも知れない」
頭を下げながお父様が言った。
「何を言っているの、あなた。
こんな時だもの家族で力を合わせましょう」
そうお母様は言ってお父様の手を握っていた。
そうよね、みんなで乗り切らなくっちゃ。
お兄様も私も頷きあった。
それからは毎日お父様が知り合いへ援助や借金のお願いをしに奔走している。
そんなある日の事。
とある大商人が家にやってきた。
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