もしも、若いころの自分に何かアドバイスをするとしたら
喫茶店でモーニングを頼み、スマホで時間を確認する。
出勤1時間前には、会社の近くの喫茶店で過ごすのは、もう習慣になっている。
いい年をしてはいるが、独身であるので、無駄遣いに苦言を言われることはない。
朝食用に、パンを買っておいても、家においておくと、つい忘れて駄目にしてしまう。
朝ごはんは喫茶店で済ませる。
自分にとっては合理的なことだ。
ネットニュースを流し読みしながら、モーニングの卵を食べる。
塩分は控えるように、健康診断で言われたので、量は少なめだ。
無料のNEWSをみているので、画面の下には、広告がちらちらとアピールをしている。
年齢的な問題もあるのだろう。
広告欄には、毛生え薬とか、アンチエイジング関連がならぶ。
最近はAIで相手に適した広告を選んで表示するらしい。
もしも、若返ることができたら、何をしようかな。
意外と思いつかない。
今のまま若返ったとしても、同じ人生を歩みそうな気がするな。
できたら、若いころの自分にアドバイスをしたい。
若いころの自分は、貧乏で、馬鹿で、優しいだけが取り柄の人間だった。
今はどうなんだろう。
痛い思いをした分、多少は馬鹿がましになったように思う。
正直さも足りなかった。
自分の欲望をさらすことに、臆病だった。
良い人ぶって、随分損もした。
最初に付き合った女の子には、一度も好きだといえないままに、別れてしまった。
次に付き合った女の子は、どうだったかな。
もう思い出せないが、きっと似たようなものだったろうな。
まぁ無理なんだけどさ。
もしも、そんなことができると仮定してだ。
何か、アドバイスをするとしたら、なんて言おうか。
我ながらくだらない思い付きだと思うが、考えることが楽しい。
トーストを頬張りながら、思いを巡らす。
「あの日、あの子とは、最後まで行けたんじゃないか」
んー、違うな。
そういうことじゃない。
「なるたけ、体に負担が少ない仕事して、自分磨きをしなよ。できたら、資格とること。」
意外と良いアドバイスだと思うけれど、若いころの自分がきくかな。
若いころ、仕事は頑張っていたらいいと思っていた。
じっと様子を見たり、配慮や片づけをに注力なんてしなかった。
そもそも、一日の作業や会議に、作戦なんて考えもしてなかった。
「段取りや、片付けが大事なんだよ」
当時の先輩のアドバイスを理解したのは、随分後だったな。
時計を見ると、そろそろ出社の時間だ。
まだ、始業40分前ではある。
が、そのくらいに会社に行くと、今日の欠勤者の電話に出ることができる。
誰かがやらないといけないことだ。
返却のカウンターに食器を返すと、店員から声がかかる。
「ありがとうございました。いってらっしゃいませ。」
なんとなく、軽く会釈をして店を出る。
夏の日差しは、朝だというのに容赦がない。
まぶしさに目を細めたとき、一つ思いつく。
あぁ、これにしよう。
「人生は、本当に一回しかないから、好きなことをするように」