ヒマワリのように笑う、幼なじみの女の子
テーマ:バレンタイン
「は? チョコレート?」
「うん。作り方、教えてよ」
呆れて、ついため息が漏れた。
このバカ、ろくに料理も出来ないくせに、無謀にも手作りチョコを渡そうと思っているらしい。
その根性は認めよう。だが。
「おまえなぁ。当日に、しかも男の俺に聞くかぁ?」
「だってあんた、料理上手じゃん!」
それでもさぁ。お前が、俺に聞くのかよ。
いや、まぁ。こいつが俺の事を全く意識してないのは知ってたよ?
でも、こう……胸が、痛いな、やっぱり。
「ね、お願いできない? このとーり!」
「頭下げられてもなぁ……まぁ、教えてやるよ」
そんなに手の込んだ物じゃなけりゃ簡単に作れるし。
そうだな……トリュフなんて良いかもしれない。
あれなら簡単だし、ラッピングもしやすいだろ。
なんて。真面目に考えてしまうあたり、俺も相当お人よしだな。
「んじゃまぁ、学校終わったらお前の家行くから」
「ありがと! 材料かってあるから、よろしくね!」
いつも通りのヒマワリみたいな笑顔で、彼女は元気よくそう言った。
放課後。目的地に到着。あいつのお母さんに事情を説明して中に通してもらった。
キッチンに向かうと、エプロン姿のあいつがいた。
「いらっしゃい!」
「おう。ほら、作るぞ」
「はぁい!」
不器用な手つきで、それでも一生懸命、真剣な顔で。
それを見て、また少し胸が痛んだ。
出来上がったトリュフにココアパウダーをまぶしているのを見て、ふと疑問を感じた
「……なぁ、いっこ聞いていいか? お前の母さん居るなら、そっちに聞けば良かったんじゃね? 料理上手だしさ」
昔、手作りの菓子を食わせてもらった記憶がある。
それなら俺に頼む必要なくねーか?
「んー? それはねー……あ、できた! ほら、味見して!」
「あ? おう……」
綺麗に丸まったトリュフを一つ渡された。
「美味いじゃん。後はラッピングだな」
笑顔を作って言うと、俺の大好きな夏のヒマワリみたいな活発な笑顔で答えた。
「ラッピングはいらないよ。もう渡したから!」




