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りたーにんぐ!  作者: 消しカス
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閑話 裏の話1

 私の名前は今井藍。高校三年生。共学の普通高の普通の女子高生。


 普通にファッションとかスイーツとかかわいい系の小物が好きな女子高生。の振りをしている。

 実はそんなに服とか食べ物にも興味ない。ただ周りに合わせてるだけ。違うな、それらが別に嫌いってわけでもない。でも他の皆みたいに夢中になれない。っていうか、ほかの皆も夢中な振りしてるだけでしょ?


 ちがうのかな?


 スポーツとか部活とか恋愛とかに夢中になってる人が正直うらやましい。周りの目なんか気にしないで、アニメとかオタクっぽい趣味にハマっている子。サッカーとか野球の特定のチームの勝敗に一喜一憂している子。極端な話だけど宗教に熱心な子とか。形はどうあれ、いいなぁって思う。私にはそういうの無いから。だからといって宗教に入りたいわけじゃないんだけど。


 自分は特別だなんて思う思春期特有の時期も過ぎているから、他の大多数の同年代の子も大なり小なり同じようなことを考えているんだろうな、と思う。ただ言わないだけ。

 悩みっていうほどのことでもないし、じゃあ、なにか始めてみればいいってことで、みんな色んなことに興味を持っている振りをしている。というか、試しているのか。それで実際に何かを見つけられれば、それはそれでいいことだと思うし。


 私は、どうだろう。今は情報があふれているから、何かを始めるときのハウトゥーがすぐにある程度わかる。スマホで調べるだけ。あの小さい画面を五分も眺めれば、ちょっとした専門家だ。一時間も眺めたら、その事柄をもう経験した気分になる。実際は何一つしていないのに。

 動画サイトでやってる料理や工作の動画を見て、やった気分になるようなものだ。そこで満足するか、自分もやってみようとなるかは性格の差だと思うけど。自分の性格が嫌になる。


 色々と理屈をこねてみたが、要は退屈なのだ。受験生がそんなこと言ってる場合かっていわれそうだけど、だからこそ、と言いたくなる。ひとはパンのみに生きるにあらず。受験がすべてっていうわけでもないのだ。この鬱屈したパトスを開放するような事柄が何かないかなぁ。……ああ、また理屈こねてる。やだなぁこの性格。あんた理屈っぽいって、椎子にいつも言われるのに。


 何か理屈をこねる暇もないような、理屈が通じないような事件が起こらないかなぁ。空から女の子が落ちてくるとか?って、もう中学生じゃないんだから、もっと現実的な。……宝くじが当たるとか、すっごいイケメンの金持ちに突然求愛されるとか? ……うーん、現実的ってなんだろ……。あー、兄さんが部屋で死んでる、とかかなぁ。うんそれは比較的あり得そうな大事件だな。ヤバい。


 私には兄がいる。今井詠。隣県で公務員系の専門学校に行っている。ボロのアパートに一人暮らししているのだが、この三日ほど連絡がとれない。ラインの既読もつかないし、電話も出ない。呼び出し音は鳴るので、料金未払いや電池切れじゃないようだし。


 親は、木こりだとか治験だとか、また変なアルバイトでもやってるか、女に監禁でもされているんだろうっていって、あまり心配していない。っていうかしろよ。木こりってなんだよ。


 兄は異性にもてる。それもヤンデレというかストーカー気質の女性にもてる。その手の女性を惹きつけるフェロモンを放出しているんじゃないかと思うくらいだ。冗談じゃなく警察沙汰にも何回かなっている。それで地元にいづらくなって、隣県に引っ越したのだ。逃げるように。


 同級生が付けたあだ名はチャーメン。なんだそれって思うけど、メンヘラキャッチャー、メンチャー、チャーメンという流れらしい。昔流行った蜘蛛の巣みたいな飾り。ドリームキャッチャーっていうらしんだけど、悪夢を捕まえるお守りみたいな意味があったらしい。それから発想を得ているそうだ。兄は地雷女を捕えるお守りと言うわけだ。まぁ、それはどうでもいいけど。


 それで今、心配になった私は、兄の住んでいるアパートに向かっている。親はほっとけと言っていたけど。


 私は普通の女子高生を演じている普通の女子高生なんだけど、普通と違う所が一個ある。強いて言えばだけど。それは結構なブラコンだってこと。私自身は普通だと思っている。兄とそういう、いわゆる男女の関係になりたいとかは思わないし。ただ、兄から迫られたり、どこか遠くで二人で暮らそうとか言われたら断り切れる自信がない。そんな妄想をするくらいには好きだ。他の兄妹もそんな感じだと思っていたが、そうではないらしい。話したら椎子にガッツリ引かれた。しかし、これは誤差の範囲内だと思う、思春期の生娘にはありがちな麻疹かおたふく風邪かデング熱みたいなものだ。私は少しだけ鬱屈したパトスを胸の内に秘めたごく普通の女子高生だ。


 電車を乗り換えて一時間ほど、駅から歩いて十五分。兄のアパートに着く。呼び鈴を押すが音が鳴らない。電池切れか壊れているのか。ドアをノックしてガチャガチャしてみるが鍵は閉まっているようだ。片道一時間半、ここまできて手ぶらで帰るわけにはいかない。しょうがないにゃぁ。

 私はドアの横のガスメーターが入っている壁の鉄製のふたを開ける。ふたの内側にマグネット付きのケースに入った合い鍵が入っているのを知っているから。兄に聞いたわけではなく、兄の部屋の隣の住人の渕さんという人に教えてもらった。渕さんは社会人だが兄と仲良くしているらしい。何やかんやと理由を付けて連絡先を教えてもらったが、この三日間は渕さんにも連絡がとれない。こちらは完全な電池切れか圏外。渕さんに様子をみてもらって無事が確認できれば、わざわざ来る必要もなかったのだけど。


 まぁ、せっかく来たんだし、部屋に上がりこんで待って居よう。明日は学校休みだし、兄が帰って来るまで部屋の中で、終電なくなっちゃったね、ていう妄想でもしてよう。

 鍵を開け、ずかずかと上がり込む。入って左側にキッチン、奥がユニットバス右側が居住スペースなんだけど、スライド式のすりガラスの障子戸でしきられている。何度か遊びに来たことがあるので勝手はわかっている。いたらいたで問題解決だし、いないならいないで家探しでもするかと思いながら、勢いよく障子戸を開けると、部屋のなかに人影があった。なんだ、いるじゃん。と思ったが、それは兄ではなかった。いや、おそらく兄ではなかった。いや、違うな、その姿は私の知っている兄の姿ではなかった。かな。


 カーテンが閉まっている薄暗い部屋の中に、小柄な人影が立っていた。両手を手前に出し、顔をかくしながらこちらを見ている。最初に思ったのは宇宙人だって思った。頭髪は短くて耳が尖っている。顔は彫りが深くて鼻がとてもでかい、そして鷲鼻だ。荒い麻みたいな材質のシャツを着ている。


 私は、なぜ悲鳴を上げたり、逃げ出したりしなかったのか、それはわからない。パニックで動けなかったというのが正解のような気がするが、声を上げるでもなくしばらくただ固まっていた。

 部屋の薄暗さが、画質の悪いUMAの動画を思い出させた。もっとよく見たいのに見えないもどかしさみたいな感じ。信じているわけではないが、あの手の話は好きなのだ。都市伝説とか。


 何秒くらいもしくは何十秒くらいそうしていたのか、私は思い立って部屋の電気をつけることにした。ゆっくりと慎重に動く。

 部屋の明かりをつけるとその人物は驚いてしゃがみ込んでしまった。頭を両手で押さえ、小刻みに震えている。子犬みたいだなとぼんやりと思った。


「あの、兄さん?」


 声に出してから、我ながらアホかと思った。どうみても兄ではない。


「……じゃないですよね。……ははは」


 私の声に反応したのか、その人物はこちらに向かって何かを言ってきた。しかし、ゴギャゴギャとしか聞こえない。本格的に宇宙人なんだろうか? うーん。どうしよう。……あ、そうだ、写真! とりあえず写真撮ろう。

 写真なんていつも撮っているのに、こんな時にかぎってスマホの操作がもどかしい。震える手で何枚か撮った後に、動画の方がいいのかと思い、なおかつ私も一緒に写った方がいいのかなとか考えてしまう。自撮り棒なんて持ち歩いてないけど。ウェーイ、見てるー? みたいな感じで。


 とりあえず写真を椎子に送ろう。『うちのお兄ちゃんです。』送信っと。いや、私アホだな。お兄ちゃんじゃないって。


 そんなことをしていると、目の前の宇宙人が何かジェスチャーをしている。しきりに喉の所を指さし、両手を組んでお辞儀するようなそぶり。……喉が乾いた、水をくださいってことかな?

 すぐ後ろのキッチンでコップに水を汲んで恐る恐る手渡す。すると、相手も恐る恐るといった感じで受け取り、少しだけ躊躇した後に一気に飲んだ。よほど喉が渇いていたのか、そのあと二杯もおかわりした。水を飲んで少し落ち着いたのか、またゴギャゴギャ言い出した。何言ってるのかわからないので、とりあえず曖昧にうなづいて、適当に返事をする。はいはい。


 と、そこで、椎子から返事が来た。どういうことか、というより、なんのネタなのか聞きたいという内容だ。ネタじゃないって。『お兄ちゃんの部屋にきたら、宇宙人がいて、今水をあげました。』送信っと。すると今度はすぐに返事がきた。ビデオ通話できるかって内容だ。『うん』って返事をおくったらすぐにかかってきた。


〈どういうこと!?〉


 いきなり声がでかい。ほら宇宙人さんがおびえてるじゃんか。


「ちょっとまってて」


 私は椎子にそういうと、スマホを部屋の隅に置いて私たちが椎子に見えるように角度を調整した。

 わたしが元の位置にもどると、宇宙人さんはスマホをチラチラと気にしていたが、今度はお腹を指差してペコペコとお辞儀をしてくる。おなか減ったってことかな? えーと、なに食べるんだろう? ドッグフード? じゃないよね。というかこの部屋なにかあるのかなぁ。

 私はまたキッチンに行き冷蔵庫をあさる。ろくなものがないが冷凍室に食パンが入っていた。トースターが一度に二枚しか焼けないサイズなのでとりあえず二枚焼いて、適当にマヨネーズを付けて差し出す。宇宙人さんは少し匂いを嗅いだりした後、まず一口だけ食べて、そのあと、凄い勢いで食べ始めた。二枚じゃたりなさそうだったので、もう二枚焼いているときに、マヨネーズって与えてよかったのかしら、と少し心配になる。玉ねぎをたくさん与えたら死ぬ、みたいなことがあったらどうしようと。


 まぁ、すごい美味しそうに食べてるし、大丈夫だろ、と自分に言い聞かせる。インスタントコーヒーでも入れようかとお湯を沸かすためにヤカンを火にかけたところで、椎子のことを思い出した。スマホを手元に持ってきて聞いてみる。


「どう思う?」


〈どう思うも何も、なにそいつ?〉


「わかんない。宇宙人?」


〈いや、宇宙人なんかなぁ、近くに兄貴がおったから見せてみたら、ゴブリンじゃないかってゆうとるけど〉


「ゴブリン? あー、ゲームとかの? ……たしかにそんな感じだね」


〈な、めっちゃ緑やし〉


「どうしよう。私、どうしたらいいかな?」


〈どうしようって、そりゃぁ、……どうすんねん?〉


「とりあえず、インスタにアップとか?」


〈アホか! やめとけ〉


「たしかにあんまりインスタ映えはしないかな……。あ、その前にゴブリンさんにも肖像権があるもんね。目線入れなきゃ」


〈お前、……相変わらずズレとるな〉


「あ、ちょっとまってて」


 宇宙人さん改めゴブリンさんはキョロキョロと辺りを見渡し必死になにかを訴えてくる。

 ちなみにここまで二人とも立ったままだ。

 ゴブリンさんはゴギャゴギャ言いながら今度は股間を指差してペコペコ頭を下げている。

 えーと、まさか、食欲はみたされたので、今度は性欲を何とかしろ的なことだろうか? それはさすがに、……っていうか、オシッコしたいのか。アホだな私。


 その後、トイレに案内し使い方を必死にジェスチャーで伝える。なんとかわかってくれたようで、ユニットバスの外で待っていると水を流す音が聞こえてきた。

 そうこうしている内に湯が沸いたので、コーヒーをいれようとして、カフェインって平気なのかしら、とか、じゃあお茶もダメじゃんとか、心配になり始め、なにかないかと戸棚を漁るとスープの素的なものがあったので、簡単なスープを作る。たまごスープだ。

 その間、椎子と電話で話し合ったのだがいまいち妙案は浮かばない。


〈なあ、いまちょっと兄貴と話してんけど、今から兄貴の車でそっちいくわ〉


「えー、そんな、悪いよ」


〈ええって、兄貴はどうせ暇やねんから。それに藍はどうすんねん。そのゴブリン君と二人で夜を明かすんか?それとも二人で電車乗るんかいな。その様子やとその部屋に置き去りってわけにもいかんやろ?〉


 確かにそうだ。なんというか、子犬に餌をあげてしまって、情がわいてしまったというか、水道の出し方すら知らないみたいだし、心配で置いていくわけにもいかないような気分になってはいる。


「あー、たしかにそうだね」


〈そのアパートの住所わかるか?〉


「うん」


〈じゃあ、ラインで送ったって、カーナビで行くから。いったん切るで〉


「うん、待ってる」


 電話を切った後、部屋のテーブルにゴブリンさんを案内して座らせる。スープを渡し、そのあとジェスチャーで名前を教えあう。ゴブリンさんの名前はアーニというらしい。ただその後は言葉が通じないのでどうしようもなく、なんとなく気まずいのでテレビを点けてぼーっと見ていた。アーニもテレビをぼーっと見ていた。


 うーん、これからどうしたらいいんだろう。警察とかはなんだかかわいそうなことになりそうだし、うちで面倒見るのも違うような気がするし。うーん。……そうだよ、こんな時こそ驚異の集合知、インターネット様だよ。えーと……


 【うちのお兄ちゃんがゴブリンになってしまったんですけど、どうしたらいいですか?】


 ……書き込みっと。







 :画像もなしにスレ立てとな!?

 :そんなことよりウノしよーぜ

 :そのゴブリンは本当にあなたのお兄さんですか、そもそもあなたのお兄さん自体が想像上の…

 :はいはい、ゆうちゃん、お薬だしておきますからね

 :いいから画像うp、話はそれからだ

 ……

 ……

 ……

 

 ……インターネット様はあまり役に立たなかった。


 やはり、知恵袋のほうがいいかなぁ。あーでも捨てアカ作るのめんどくさいなぁ、っていうか、だめじゃんインターネット。あー、お腹減った。


「……ちょっとトイレ行ってくるね」


 言葉は通じないのだが気分の問題だ。しかし、ゴブリンさんが使った後のトイレかぁ。うーむ。……いや、普通に学校とか駅とかは不特定多数が使っているわけだし、私は潔癖症ってわけでもないんだけど。うーむ。まぁ、背に腹は代えられない。


 部屋に戻るまえに、もう一回冷蔵庫を覗く。……うん、やっぱり何もない。

 あー、腹減ったなぁー、……ってそうか、出前とればいいんじゃん。このアパートの住所はわかってるんだし。お金も5千円ぐらいは持ってるし。スマホで検索して……っと。うーんピザ屋にそば屋に寿司屋かぁ。ピザは魅力的だけど、お金がなぁ。そば屋さんでかつ丼でも頼むか。インターネット様すげー便利。いや、凄い便利。普通にすげーとかいってるヤバい。


 ……あ、そうだ。


 私は、スマホの画面にそば屋のメニューを表示して、ゴブリンのアーニに見せる。そばとか麺類はハードル高そうなので、ご飯ものを中心に見せていく。ものを食べるジェスチャーをしながら、かつ丼、天丼、牛丼、うな重と見せていき、一番反応が良かったのは、うな重だった。……こやつ、なかなかやりよる。


 結局、牛丼とかつ丼を注文した。700円と800円。しめて1500円。普通の女子高生にはなかなか痛い出費だ。女子高生は駅の近くの喫茶店に寄ったり、話題のスイーツなんかを友達っぽい人たちと一緒に食べに行ったりしないといけないのだ。正直めんどい。しかし、ゴブリンにご飯をご馳走する女子高生ってどうなの?


 出前は30分ぐらいで来た。出前なんてあんまり利用しないので30分が早いのか遅いのかわからない。牛丼とかつ丼をアーニの目の前に並べる。アーニは牛丼を選んだので私はかつ丼を食べる。もう、カフェインがどうとか、ゴブリンだし平気でしょ? 正直めn 


 ティーパック式の紅茶があったのでそれを淹れる。牛丼もすげー……、凄く美味しそうに食べていた。そのあとに飲んだ紅茶は驚いている様だった。でも残さず飲んで、おかわりも飲んでいたので、気に入ったようだ。食事が終わったあとアーニは笑ったように見えた。昔、年末のテレビで見たボクシングの試合の、ボコボコに殴られたボクサーみたいな顔の笑顔を見て、不覚にもちょっとかわいいと思ってしまった。


 そんな感じで時間を過ごしていると、私のスマホが鳴った。椎子たちが近くに来ているらしい。


「ちょっとまってて」


 一応アーニに断ってアパートの表に出る。

 辺りはまだ明るいが、今日は少し曇りだから暗くなるのは早いだろう。

 電話で、表に出ていると告げ、話をしていると、遠くから見たことがある車が近づいてくる。椎子のお兄さん、啓介さんの車だ。


 椎子は私の友達。大葉椎子、同級生。高校三年生になったときに関西から引っ越してきた。同じクラスになって、同じ選択授業で、いつの間にか仲良くなってた。私が普通の女子高生の振りをしないでも一緒にいられる数少ない友達。いや、私は普通だけど。お兄さんの啓介さんは近くの大学に通っている。偏差値もそこそこ高めの理系の大学。一応私の志望校の一つにも入っている。椎子のお迎えに来た時に何回か会っているし、遊びに行くときに送ってもらったりしたので、この車にも乗ったことがある。車は中古のボックスタイプの車。この車が本当にボックスタイプで合っているのか、車に詳しくないので自信は無いんだけど、めちゃくちゃアルバイト頑張って、いざ買うときにワゴンタイプとこのボックスタイプで悩んだんだけど、みたいな話を延々きかされた覚えがあるので、たぶんあってる。


 アパートの近くの路肩に車を止めさせハザードランプを灯す。とりあえず二人を部屋に案内する。なにやら大きな紙袋を持っているが、食べ物でも買ってきてくれたのかな?


 部屋に二人を案内すると、二人はとりあえず絶句し、アーニは怯えていた。なんとなく私が守らなきゃって気分になってアーニの手を握ってた。二人はひとしきり興奮しアーニに挨拶し、写真を撮ったあと、持ってきた紙袋から服を取り出した。ニットキャップに紫のスカジャン、カーゴパンツ、シャツとトランクスタイプのパンツ。ワニのマークのサンダルの偽物の奴。あとマスクとサングラス。


 なるほど、私、こんなの全然思いつかなかった。ちょっと考えればわかりそうなのに。アホだなぁ、私。


 頑張ってジェスチャーで服を着てもらう。いつまでも路肩に車を止めておくわけにはいかないので、移動しないといけない。

 頭を下げるしぐさは、お願いするって意味でつうじるみたいなので、三人でペコペコ頭を下げる。怯えながらもなんとか付いてきてくれた。

 車の後部座席にゴブリンのアーニと並んで座る。


 動き出した車の中で、横で慌てているアーニの手を握り、これは、もしかして、宝くじが当たるより、イケメンに告られるより、部屋でお兄ちゃんが死んでいるよりも、大事なのかもしれない。と思った。


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