人生は自分のもの
明日あなたは消えます。
そう断言されたらあなたは、どうしますか?
消えるまでにやりたい10の事を、できる範囲でやってみる? それとも好きな人に告白する?
どれをやっても、消えたら結局同じ事。
それなら私はーーーーーーーー
⒈自分で終わりにしたいから 〜瀬尾矢 美晴〜
私ーー瀬尾矢 美晴は、屋上に続くかいだんを一段一段しっかりと登って行った。 これでこの階段を使うのも最後になる。
ドアノブを捻ると、いっきに生暖かい風が吹き込んでくる。
そういえば、もうすぐ一学期が終わる。 何事もない平凡な毎日だったな。
高2に上がってからの少し短いように感じられた一学期を思い出し、少し懐かしむ。
まぁ、懐かしんでも仕方がない。
だって今から自分で自分の人生を終わりにするんだから。
簡単に言うと『自殺』だが、それだとなんか聞こえが悪いような気がしたからそう言っている。
こんなことする気はさらさらなかった。
昨日の夢を見るまでは…………
私は小さい頃からあまり夢を見る方ではなかった。
見たとしても、覚えているのはほんの数日。 だから夢を見ることが『すごい』とも『面白い』とも思った事はなかった。
しかし一度だけ、夢を見て『怖い』と思ったことがある。
その夢を見たのは、丁度今頃の時期の小6の時だったと思う。
私は暗闇に閉じ込められていて、いくらもがいても外に出られず、助けを求める事も出来ず、一人でパニックになっていた。
でもそこに、一筋の光が差し込んだ。 私はその光に助けを求めた。
そしたらその光が小さな子供の形になって私に言った。
「6年後、あんたは消えるよ」って。
私は反論しようとしたが、声が出ない。 まぁ、夢だからしょうがないけど……
その子供は続けて言った。
「6年後。高2の今頃にまた会おう。夢の中で。その時にいつ消えるか正確な日にちを伝えるから。それまでこの人生をenjoy!してよ」って。
そいつが話し終わって、イタズラを仕掛けたような無邪気な笑みを見せて、そこで夢は終わった。
時計を見るとまだ5時で、おきる時間より1時間早かったが、寝る事は出来なかった。
そして、高2になった今。予告通り、夢で「明日消える」と宣言された。ここまでされたら、もう信じるしかないだろう。
だからってこの子供に、人生の終わりを決められるのは勘にさわる。
人生の終わりは自分で決めたい。
そんな考えを持つ私がたどり着いた方法は、『自分で自分の人生を終わりにする』だったーーー
私は低めのフェンスによじ登り、フェンスの外側に立った。
そこから見える景色は、今まで一度も見た事ないほどの絶景だった。
でも、今から飛び降りることを考えると、そんな景色もくろずんで見えてしまう。
下を見ると、サッカー部が朝練の準備をしている。
私が飛び降りたら、一番最初に目撃するのはあいつらだろうなぁ。
そんなくだらないことを考えながら、下を深く覗くようにして前に倒れていった。
景色がスローモーションのようにゆっくりと青い空からだんだん下へと移り変わろうとしていた。
その時誰かが私の服の襟を強く掴み、フェンスの上から引き上げた。力の強さからして男子だろうか。
私はこいつのせいで、『死に損ない』となってしまった。