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  作者: 東郷十三
5/46

5、ところ

「わっ、寒!」

車を降りると、冷たい空気が頬を刺す。時計を見るとまだ10時前。連休中日だが、この時間だと駐車場はまだ貸切状態。山鳥の声が聞こえ、川を渡る風に吹かれた木々の葉ずれの音が時折それに重なる。雲はますます勢いを弱め、もうほとんど快晴と言ってよい。 道の右手はまばらだが樹木に覆われた小高い丘があり、その丘を背にして建てられた温泉施設は古い民家を模して造られている。道から人の背丈より少し高く積み上げられた石垣の上にある入り口までは、並んで歩けるくらいのスロープを壁に沿って上っていく。上りきって左に折れた右手が料金所をかねた産地直売の土産物コーナー、左手が日替わりで 場所が入れ替わる男女別の湯殿だ。それぞれの脱衣所の先は30畳ほどのタイル敷きの内湯、ガラスの引き戸の外は 半露天の檜風呂、一段下がったところが完全露天の岩風呂になっている。岩風呂からは丘の木々が見え、紅葉の時期は色とりどりの葉が目を楽しませながら、気ままに落ちてくるのが楽しい。


 先ほどの料金所には、八部屋の貸切家族湯が写真付きで紹介されている。料金は1時間2,000円、2時間だと3,000円となっており、今の時間はまだどの部屋も空いている。

「へえ、色々あるんだ。一戸建て、内湯のみ、座敷つき…。あ、これがいい、内湯、半露天、水風呂だって。」

今日の主役は緋乃だ。彼女が選んだ部屋に決め、1時間の使用料を支払い部屋札をもらう。と言うのも、部屋に鍵はついておらず使用中を示すためその札を部屋の外に掛けるのだそうだ。

みやげ物コーナー奥のガラス戸を抜けると、右手に2部屋の家族湯。正面には小さなのぼり階段があり、回廊のように小さな丘を左に回り込みながら奥へと続く。


 階段左手の湯気を上げている小さなお手水の中で、卵が気持ちよさそうに温泉浴をしていた。

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