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  作者: 東郷十三
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3、時間

左前方に見えていた山並がやがて近づき、道は英彦山山系の南側の山肌を登り始める。道路にも、すぐ左手の斜面にも雪は残っていない。しかしやや見上げたある一定の高さより上には、白い斑模様が多く見られる。目覚めの風呂に定めた最初の温泉はともかく、本日の主役である“赤川温泉”へは曲がりくねったやまなみハイウェイを通り、牧ノの戸峠を越えていかねばならない。平地でさほどではなくても、標高が高くなるとかなりの雪が積もっていることもある。もし積雪による通行規制でもなされていたら、緋乃を喜ばせるどころか他の目的地にしなかった自分を責めることになろう。頼みの綱は、時間と伴に上がっていく気温。幸い今朝の出発は、予定より30分遅れた。

「ごめんなさい。昨日は早く寝たのに朝から何度も目が覚めて、はっとして起きるともうこんな時間だったの。」

無邪気な理由に電話口で笑ってしまい、怒る気になれなかった。


 走っている車が少ないだけに流れはスムースで、見込んでいた所要時間を短縮してしまいそうだ。これでは、彼女のくれた“ケガの功名”が無駄になる。どこかで朝食を食べながら時間をつぶす、と言ってもサービスエリアの食事では興ざめだ。スピードを落として時間を稼ぐのも限度がある。いや、簡単でずっといい方法があった。風呂に入るまでの時間を延ばすのではなく、風呂に入っている時間を長く取ればいいわけだ。じっくりと体を温めれば日頃の疲れも癒されるだろうし、楽しんで時間を“浪費”しているうちに、雪はかなり融けるだろう。そう考えると、逆に急ぎたくなった


道は上り下りを繰り返し、最後の峠を越えた。遠く右手奥の山は、全身真っ白だ。

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