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  作者: 東郷十三
21/46

21、番犬

 峠から何度か大きくハンドルを切りながら下り緩やかな右カーブを過ぎると、前方に瀬の本高原が見えてくる。ちょうど南に降りて行く格好になり、窓越しの日差しで暑いほどだ。もう一度右に、そして左に曲がると旧小国街道と交差する。

江戸時代に、熊本一帯を治めていた肥後藩。参勤交代の際、熊本から乗船して江戸に向かうより、陸路大分に抜けそこから船で上京する方がはるかに有利であった。そのため、熊本から乗船場であった大分県鶴崎までの街道がいち早く整備された。目の前の国道四四二号がその街道の一部にあたり、道のところどころに残っている松の古木、猪鹿狼寺山道登山口(南登山口)にある一里塚の石燈篭などは、行列が行きかった往時を偲ばせる。

 交差点を左折して入ってすぐ、右手、南側の視界が開けてくる。

「気持ちいいわね、ずっと遠くまで見渡せて。」

「空気が澄んでるおかげで、阿蘇中岳の噴煙まではっきり見えてるな。」

「どのくらいあるの、あそこまで?」

「う~ん、たぶん四十キロメートルくらい。車で一時間と少しってとこかな。」

このあたりの標高は九百メートルほど。雄大な山すその向こうには、外輪山越しに阿蘇五岳もくっきりと見える。六キロメートルほど走ると、右手にホテルがある。その先を左折し久住高原荘の右手を一キロメートルと少しゆったりと上ると、 久住山登山者のための駐車場で舗装が切れる。ここから先、日帰り利用者は車を乗り入れることができない。駐車場に車を停め、入浴施設のある赤川荘までは百メートル。右手に川の流れを聞きながら、新緑の季節はさぞかし気持ちがよかろうと思われる木々のトンネルを抜けると、目の前にピンクのペンションが現れる。少し場違いな感じがしないでもないが、ゆったり滞在して何度でも湯に浸かるマニアも多いらしい。

 建物手前、宿泊者用の駐車場に、白い中型犬が横たわって日向ぼっこをしている。眠っているのか、近づいても起きることなく目を閉じたままだ。腹をなでてやると胡散臭そうにむっくりと頭を上げ、『あまりゴシゴシ撫でるなよ。』とでも言いたげな目でこちらを見つめ、また頭を戻し目を閉じた。これでは番犬にはなるまい。


玄関に近づくにつれて、滝の落ちる音が大きくなってきた。

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