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  作者: 東郷十三
14/46

14、贈り物

道は蛇行しながら杉林の中を登っていく。右に左にハンドルを切っていると、時々目がチカチカする。左足の違和感は無くなったが、まだ先ほどの影響が残っているのだろうか。


突然スッと息を飲み込み、緋乃が正面を指差した。

「きれい!」

右にほぼ直角に曲がったところで、前方を阻んでいた杉林の間隔が広くなっている。その木々の間から差し込む太陽の光を受けて、キラキラと何かが左から右へと渡っていく。先ほどの感覚は、体調

のせいではなかったようだ。細かな粒子が、一粒一粒光を放ってい

るようにも見える。

「まるで、輝くレースのカーテン。」

正面からの光に目を細めながらも、視線を宙に注いだまま呟いた。

「確かに。ゆったりと流れて、神々しいくらいだ。」

「風が見えてるって感じね。あ、あなたは見なくていいから運転に集中して。」

「見なくていいったって、正面を横切ってんだから…」

輝きの正体は、雪の結晶が集まってできた氷の針だ。細い杉の葉の上に雪が積もり、葉の上に乗っているうちに結晶同士がくっついた。それが風に吹かれて宙に舞い、逆光の中をガラスの粉末のように光を反射しながら漂っている。テレビでしか見たことはないが、まるでダイヤモンド・ダストの輝きだ。 空気中の水蒸気が氷結したものと雪の結合体という違いこそあれ、キラキラと輝きながら漂う様は、非日常という表現を超えてファンタジーの世界にでも迷い込んだようだ。氷の粉末が漂っていた、と説明してもイメージしても

らえるかどうか。輝く風にチラリチラリと目をやりながらゆっくりと車を走らせていたが、これから先の残雪が心配だ。


 自然の気まぐれな贈り物に感謝しながら、山道を登り続けた。


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