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  作者: 東郷十三
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1、空模様

前作「悪女」(北浜 緋乃 作)で語られた主人公の主の身の上。ありがちな出会いから二人の関係は始まり、次第に深まっていく。出会う人との話も含め、わが身にこういうことがあったら嬉しいと言う理想話を書いてみました。登場する人物は架空のものですが、現実にいそうな姿にしました。読む方に、「どこかで見聞きしたような話だ。」と思っていただければ幸いです。


いままで映画、食事、ドライブと伴にしたが、すべてこちらから誘った。しかし、今回は緋乃のほうから温泉に行きたいと言ってきた。受身であった彼女が変わったということは、こちらの事を憎からず思っているということか?それなら嬉しいが、ただのわがままかも。自分としては、「二人で温まりたい」と気兼ねなく言えるような間柄になったと思いたい、いくら一緒に湯に浸ったことがあったとは言え。


昨日までの数日間は、時折雪の降るどんよりとした天気だった。山間部では雪が降り積り、いくつかの峠ではチェーン規制などが続いている。暖冬だろうという当初の予測を裏切り、数十年振りという猛烈な寒波が襲って来た。年明け前にも何度か雪が降り、本格的な冬に備え防寒用品・雪対策用品が飛ぶように売れ、一部の商品は入荷待ちの状態が続いている。雪不足を憂えていたスキー場は十分な積雪となりコンディションは良くなったのだが、一方で豪雪により交通機関・道路が寸断されていまだ孤立したままの村がある。


 今回の最終目的地は、高原の温泉。道路状況が気になり現地に電話を入れると、

「山の天気は変わりやすいので、装備をお持ちになったほうがいいでしょう。」

と、アドバイスを受けた。装備を買ってでも行くか、それとも雪と関係のない方面に行き先を替えるのか。しかし“特に雪の後がすばらしい”と聞いているだけに、あの温泉は捨てがたい。


 ずいぶん悩んだ。昨日夕方の予報では、晴れ時々曇。おそらく大丈夫だろう、と賭けた。休みというのに夜明け前から目が覚め、ところどころ雲が切れ明るくなっていく空を見て、まずは一安心。しかし問題は山道だ。シャーベット状に中途半端に雪が融けていると、かえって危ない。ハンドルを握りながら、少し身をかがめて空を見上げる。浮かんでいた雲は太陽に押され、居心地悪そうに姿を消していく。気温もやがて上がるだろう。


 しばらく続いていた周期的な振動と音は、いつの間にか感じなくなっていた。 道はやがて緩やかに左へ、そして右に折れながら坂を上り、パーキングエリアを過ぎたあたりで、左、右と弧の浅いS字カーブを降りていく。このあたりにくると嬉しくなる。前方の車の流れ越しに見える山並が、都会の雑踏から抜け出した自分を歓迎してくれているような気がするからだ。特に雪が降り続いたあとの今日は、山肌に残った雪が一体どこを走っているのかさえも忘れさせてくれるようだ。


市内を出発してから30分、高速に乗ってから10分と経っていないのに。

ただの遊び友達だった二人は関係を深め、互いの存在を強く意識するようになった。この先の二人に何が起こっていくのか。次作をご期待ください。

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