表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

第二章第二話

挿絵(By みてみん)


「どうやらこっちからエルを”召喚”して連れ戻すのは難しいみたいだ。

 俺の持ってた『張力』はエルをそっちへ送るのに使われちまったみたいだし、今すぐ助けに行く、ってわけにもいかないな」


 魔導通信機(でんわ)の向こうで告げるカズマに、エルは「そうですか」と肩を落とす。


「まあ、分かったのはなにも悪いことばかりじゃないさ。

 エルが召喚できないのは、まだそっちの世界に”馴染(なじ)んで”ないからみたいなんだ」


「”馴染んで”……ですか?」


「そう。俺の魔法で召喚できるのは茨城のものだけだ。

 つまりエルがそっちの世界のことを見聞きしたり、食べたり飲んだりして十分俺の世界の一部になったら、こっちから召喚できるかも、ってワケ」


「よかったぁ。じゃあ、いつになるかは分からないけどいずれは帰れる、ってことなんですね!」


「ん。確約はできないけど、十中八九な。

 こっちの準備が整うまでは……そうだな、そっちの世界を観光してみるとか、どうだ?

 異世界短期留学、ってとこだ。ちょうど、おあつらえ向きのところに居ることだしな」


 通信機ごしなのに、エルにはカズマが向こうでにやりと笑っている気がした。


 ◆◆◆


 カズマの世界にやってきてはや数十分。

 最初は大きな道路を行き交う車や見たこともない建物に困惑しどおしのエルだったが、驚くほどの適応力を見せて今ではすっかり落ち着いている。


「エルが今居るのって、この地図のどのへんなんでしょうか」


 国土地理院の庭、地面に埋め込まれた地球儀の上をうろうろとさまよいながらエルは通信機の向こうのカズマに問いかけた。


 エル召喚の準備といっても、エルがこの世界に"馴染む"のを待つだけだ。

 カズマはおしゃべりでもしながらその時を待てば良い。

 つまりは留学の先生役だ。


「あー……真ん中に細長い島があるだろ? 真ん中あたりで曲がってるところの東の海側だよ」


 「日本列島」とか「関東」という言葉を使えないことにもどかしさを感じながらカズマは解説する。


「ほへー……確かに、海岸の形がイヴァ=ラキとよく似てます!」


 エルは地球儀の上に膝をつき、海岸線に目をこらした。


「それにしてもカズマさんの世界ってひろいんですねー! 

 イヴァ=ラキと同じ大きさの茨城が、地図の上じゃこんなに小さいんですから!

 ところでどうしてこの地図、おわんみたいに丸まってるんですか?」


「……もしかしてエル、その地球儀が世界の『全部』だと思ってないだろうな?」


 カズマの問いかけに、エルは「えっ、違うんですか」と驚きの声を漏らす。


「この世界が球体だと聞いたことは? 確か、今俺がいるエルの世界も同じはずだ」


「うーん……セカンド=ツクヴァの先生が、前にそんなことを言ってた気がしないでもないです」


 カズマがセカンド=ツクヴァで得た知識によれば、イヴァ=ラキを含むエルの世界の広さは地球のそれとほぼ同一だ。


「向こうに地球儀……ボール型の地図があるだろ。そっちを見てみろよ。

 今エルが見てるのと同じ『島』があるはずだから」


「ほほー、どれどれ」


 エルは地球儀の周りをぐるりと一周し、日本列島に目を留めると、


「もしかして、こっ、この小さいのですか!?

 い、いやまさか……でも確かに……ぐぬぬ」


「エルの世界だって、本当はこれくらい広いんだ。

 しかも、この地球はもっともっと広い宇宙の中に浮かんでいて、

 こんな星が数え切れないくらいあるんだ」


「星って……あの、夜のお空で光ってるお星さまですか?」


「光ってるのは恒星……太陽みたいなものだから厳密に言えば違うんだけどな。

 ほら、向こうの方に白いボールが見えるだろ?」


 エルは離れたところにある白い球体に目をこらす。


「あれが月だ。地球がこのくらいのサイズだとすると、月はあれくらいの大きさで、あれくらい離れた場所にあるってこと」


 ぐらり。

 めまいを感じたエルはその場に倒れ込む。


「あっ……。おい、エル!? 大丈夫か!?」


 音声だけでつながっているカズマは、ただならぬ物音に慌てて問いかける。


「だ、大丈夫です。いきなり世界が広がりすぎて、ちょっとくらっとしちゃっただけです」


 カズマと出会ったことで、イヴァ=ラキと鏡写しの世界があることを知りエルにとっての”世界”はいきなり2倍に広がった。


 それから王様の試練を巡る冒険で旅をし、今まで知っていたはずの世界も、まだまだ見たことも聞いたこともないものだらけだと思い知った。


 それだけでも気が遠くなるほど世界の広さを味わっていたエルだったのに、ここに来て”宇宙”はイヴァ=ラキの万倍も億倍も広いのだ、なんて言われたって、到底理解が追いつくはずもない。


 以上のようなことをつたない言葉で述べた後で、エルは深い溜息をつく。


「やっぱりエルはおばかさんなんですね……」


「あのなエル」


 カズマの声がやおら優しい声色に変わったのに気づき、エルはフードの下の耳をぴん、とそばだてる。


「むしろ真逆だ、と俺は思うぜ」


「逆……というと」


「普通はさ、世界の突拍子もない広さを見せつけられた時、人はびっくりして、ひとしきり考えて、その後で諦める。

 そういうもんなんだから、実際そうなってるんだから仕方ない。

 受け入れるほかない、ってさ」


 カズマはイヴァ=ラキに飛ばされたばかりの自分を思い出す。

 異世界にいる自分、魔法が使える自分を『そういうもんだ』で片付け、困惑を勢いでごまかしていた自分を。


「だけどエルは最後まで自分で考えて、自分の感覚で世界を理解しようとしたから、こうして目を回しているわけだろう?」


「そうなのかも? そうなんですかね?」


「そうだよ。光の速度が絶対で、その原則を守るためなら時間の方が歪むだなんてとんでもないことを、『そういうもんだ』で片付けてたら相対性理論は生まれなかった。

 ……いや、アインシュタインと比べんのは流石(さすが)にほめすぎか」


「あいんすたん? そーたい……なんですか?」


「いや、いい。気にすんな。

 ……とにかく、俺だってお前との旅を通してようやくそれじゃダメなんだって気づいて、やっとこの世界のことを考え始めたんだ。

 だから最初からそれができるお前はおばかなんかじゃないよ。俺が保証する」


「ほ、ホントですかカズマさん……!!

 ずびっ。あ、ありがとうございます。

 エル、とってもうれじぃですぅううう、びぇえええ」


「だぁああああ、泣くな泣くな、めんどくさい!!

 ……ったく、ガラにも無いこと言わなきゃよかった」


 そう言いながらもカズマの言葉には照れがにじむ。


「そこは国土地理院だからな。

 建物の中にもそっちの世界を知るのに都合のいいものが色々あるだろ。

 見終わったら……そうだな、実験植物園にでも行くのがいいんじゃないか?」


「実験植物園?」


「そっちの世界の色々な植物が展示してある場所だよ。

 お手軽に世界旅行気分ってところか。

 それにエルは王様のところで庭師やってたんだろ?

 きっと気に入ると思うぜ」


 カズマの言葉にエルは目を輝かせる。


「そうそう、念のため言っとくけどエル、そっちでフードは脱ぐなよ。絶対だぞ」


「そ、そうですよね、カズマさん。

 こっちには魔物ハーフどころか魔物すらいないんですもんね!!

 怖がらせちゃいけないです」


 強くうなずくエルだったが、


「いや、違う。怖い目に遭うのはお前の方だ。

 いいかエル、第一におまえは幼女だ」


「ようじょ……」


「しかも褐色で猫耳だ」


「かっしょくで、ねこみみ……」


 エルの目が次第に点になってゆく。


「それがお前のそのハイテンションで『魔物ハーフのエルでーす♡』なんて名乗ってみろ。最悪その手の人間に取って食われるぞ」


「この世界で魔族はまさかの被捕食者側ですか!? 

 こ、怖いですカズマさん!! カズマさんの世界は怖いとこです!!」


「ま、ほとんど冗談だけどな。むしろ違うベクトルの変態に出くわす可能性はあるけど」


 通信機の向こうで笑うカズマの声に、エルはほっと胸を撫で下ろす。


「そのくらい言っとかないと、知らない人にでもほいほいついてっちゃうだろ?

 『こっち』なら俺が助けてやれるけど、今はそうもいかないんだから」


「はぁい。分かってますよぅ」


「いいか、道路は横断歩道のあるところを渡ること! 横断歩道ってのは……地面の白いしましまだ。

 あっ、それからもちろん信号機が青になってから渡るんだぞ!? 人の模様が書いてある光ってるやつ!!

 知らない人が運転してる乗り物には乗るな。

 エルの持ってるお金はそっちじゃ使えないから、お腹へってもお店に入っちゃダメだぞ。

 食べ物については……由々しき問題だけど、なんとかエルが行き倒れないように手は打ってやるから――」


「はい、カズマさん。えへへ……」


「何笑ってるんだよ、こっちは本気で心配して――」


「だから。だからですよ、カズマさん」


「変なやつ。……んじゃ、いっぺん切るからな」


「えっ、えっ、なんで切っちゃうんですか!?

 もしかして怒っちゃいました!?」


「違うっつーの。待ちに待った『お客さん』だ。

 お前がいなくなってすぐ呼んだんだけど……思ったよりかなり早かったな。

 ふふ、エルも知ってる奴だよ」


 エルはまたしても、音声通話の向こうにカズマの笑みを見た。


「植物園……ですか。ふっふっふ、相手にとって不足なしです」


 通話の切れた通信機を握りしめ、エルは低く笑う。


「エルちゃんをあまりナメないでほしいですねカズマさん。

 いくらエルがびっくりしぃだからって、異世界に飛ばされて宇宙の広さを思い知った今、ちょっとやそっとのことなんかじゃ驚いたりしませんよ!!」


 ◆◆◆


「はにゃーーーっ!? な、な、なんですかこの花はーーー!!」


 数時間後、筑波実験植物園には、ガラス張りの温室を突き破らんばかりのエルの驚きが響き渡っていた。


「でっかいです! くっちゃいです! インパクト宇宙規模ですーーーっ!!」


 巨大な花が植えられた円形の花壇の周りを、ぐるぐると駆け巡るエル。

 七年に一度しか咲かないと言われるその花の開花を見に集まっていた人々も、小さなエルの喜びように思わず頬を緩ませる。

 親切な人々がエルにその花の解説をしてくれた。


「ショクダイオオコンニャク……っていうんですか? この花?

 そしてこれが世界最大……つまりエルは今、花について世界の最果てを体験しているということなんですね!?

 『だいおー』……ってことは、王様の花ですか……。

 ふむふむ、お城に飾ったら王様怒りますかね? 怒りますよね?

 でもでも、このショッキングなかおりとぷりちーなビジュアルは捨てがたいです!! ガーデニングの”しんきじく”です!!

 どうにかして種を譲ってもらう方法はないもんでしょーか」


 興奮覚めやらぬ様子でショクダイオオコンニャクにかじりつくエルは、額に伝う汗を拭う。


「それにしてもあっついですね、ここ……。

 話に聞く『南国』ってこんな感じなんでしょうか。

 お手軽世界旅行という触れ込みに偽り無しです」


 ぱしゃり。かしゃっ。


 耳慣れぬ物音に、エルはそちら側に耳を(かたむ)ける。


「わっ、耳だけ動いたっ!? ってことはやっぱり本物!?」


 振り返ると幾人かの見物客がエルに向かってスマートフォンのカメラを構えていた。


 それがなんとなく、”板を向けた方向にあるものを記録するためのもの”だと察していたエルは、すすす、と身をかわす。


「あっあっ、すみませんです。お邪魔でしたよね……」


 しかしカメラはショクダイオオコンニャクには向かわず、避けたはずのエルを追いかける。


「ああうぅ……どうして皆こっち見るんですか?

 恥ずかしいですよぅ……」


 頭を抱えたエルは、はた、と気づく。

 髪の感触。フード、被ってない。


「も、もしかしてさっき汗を拭ったときに……。

 えと……えとえと!! エルは違うくてですね!?

 全然怪しいものなんかじゃ……ふきゃ!?」


 ごにょごにょと言い訳をする首根っこを背後から持ち上げられる。

 それは白衣に身を包んだ一人の男性だった。

 彼は汗に濡れたエルの横髪をぺろりとめくり上げる。


「ふむ……。やはり人間的な耳は存在せず、あくまで頭頂の耳が集音の機能を(にな)っているのか。

 そしてその尻尾の動き、どうやら飾りではなく骨格の入った『本物』だね?

 ……ちょっとお口を失礼」


 男の親指がエルの口内に侵入する。


「あぐぐ」


「ふむ……舌のざらつきは少なく、この点においてはむしろ人間に近い……か。

 手のひらにも肉球はなく、10代前半の少女のそれだ。

 変異部も左右で均整が取れており、末端における奇形とは考えづらい。

 ……実に興味深い。私は生物学を研究している者なんだが、君、ちょっとサンプルをくれないかね?」


 男の声はあくまで理知的で冷静だが、エルの(さと)い耳は彼のはぁはぁと荒らげた呼吸を捕らえている。


「大丈夫大丈夫、ちょっとこそいだり、ちょっと切り取ったりするだけだから」


(ぎゃあああ、変態さんです!!

 カズマさんが言ってた違うベクトルの変態さんです!!

 た、助けてくださいカズマさーーーん!!)


 しかしいくら呼んでもカズマが来るはずはない。

 エルは今、彼とは違う世界にいるのだから。


(ごめんなさいパパ、ママ、王様、カズマさん……。

 エルはどうやらここまでのようです。

 ちょっとこそがれてちょっと切り取られて、残りは虫ピンで止められて標本箱に入る運命みたいです……)


「ちょっと失礼しますよ。やぁ、妹がどうもお騒がせしました」


 人混みに割り込んでエルの手を取ったのは――


「カズマさん!!? どうしてここに……」


「説明は後だ。まずはここを出るぞ」


「待ちたまえ。妹だって? どの形質を見ても、そんなこと遺伝的にありえない――」


「血がつながっていなければ、妹とは呼べないとでも?」


 カズマの厳しい声に、白衣の男はうぐ、と言葉を詰まらせる。


「……だとしても、その子が学術的に非常に大きな価値を持っているのは確かだ。このまますんなり行かせるわけにはいかないな」


「エル、ごめんな。ちょっと我慢しろよ?」


「へっ? どうしたんですかカズマさ――きゃん!?」 


 カズマはエルの頭から一本の髪を抜き取る。


「ほら、サンプルなら差し上げます。

 ”本体”を調べるのは、遺伝的な特異性が明らかになってからでも遅くはないでしょう。

 ……実のところ、僕もこいつの正体には興味があったんです。

 分析結果が分かったら、二人で意見を戦わせましょう」


「ふ、ふむ……そ、そういうことなら……」


 白衣の男が一応の納得を見せたのを確認し、カズマは改めてエルの手を引く。


「す、すいませんカズマさん。こ、腰がぬけちゃって……」


「……ったく仕方がないな。ほら、ちゃんと掴まってろよ」


 カズマはエルを膝からすくい上げ、お姫様抱っこする。


 エルは驚きに目を丸くするが、すぐにカズマの首根っこにぎゅうと抱きついた。

 野次馬たちの感嘆とひやかしの声を背に、カズマは温室を後にした。


 ◆◆◆


「まったく……心配させやがって。あれほどフードは脱ぐなって言ったのに」


「ふぁい。ごめんらはいカズマはん」


 植物園のベンチでおにぎりにがっつきながらエルは答える。


「だけど、どうしてカズマさんまでこっちに?」


「誰かがお金か食べ物か届けないと、エルがはらぺこになっちまうだろ?」


「そうじゃなくて、どうやって、っていう……」


「もう一人……いや、一匹いるだろ。世界をまたぐ『張力』を持ってるやつが」


「ジロー!! ジローさんです!!

 まさか、さっき言ってたお客さんって……」


「そういうこと。後はジローがもう一度あっちへ召喚してくれる手はずになってる。

 ……ちょっと心配だけど」


「……やっぱり、カズマさんはすごい魔法使いさんです」


「こっちじゃ普通の人間だよ。残念ながらね」


 苦笑するカズマに、エルは強く首を振る。

 

「カズマさん。カズマさんはやっぱり、いつかはこちらの世界に帰るべきです」


「えっ……どうしたんだよいきなり。

 ずっとイヴァ=ラキに居てほしいんじゃなかったのか?」


「こっちの世界に飛ばされた時、思ったんです。

 もしもこの先、パパやママや王様、それにカズマさんに永遠に会えなかったら、って。

 エルも寂しいし、皆とっても心配するだろうな、って思ったら、カズマさんも同じだって気づいたんです。

 あなたのことを心配してる人、きっとたくさん居ます」


「それは……」


 自分の家族の事を思い、カズマはうつむく。


「それに魔法が使えなくたって、カズマさんは十分カッコいいって、今回のことで良くわかりましたから!!

 帰ったから英雄じゃなくなるなんて、そんなことありません!!」


「エル……。はは、俺もまだまだだな。

 助けに来たはずのお前に、逆に励まされちまうなんて」


「それから……えっと、それからですね」


 エルはにわかに頬を染め、もじもじと人差し指を合わせる。


「エル、ずっとカズマさんの『妹』でいるの、ちょっと嫌かも……って思っちゃいました」


「えっ、ちょっと待てエル、そりゃどういう意味だ!?

 もしかして俺、なんか嫌われるようなこと――」


 カズマが大慌てで問いかけ始めた矢先、二人の身体を光が包む。

 エルは思いがけずに早く、”こちら”の世界に馴染んだようだ。


 世界から音が消え、お互いの声はもう聞こえない。

 エルはからかうように舌を出した。


 出会った頃は騒がしくて食いしん坊の小動物。

 近頃は世話のやける妹分。

 だけど今のエルがふと可愛く思えてしまい、カズマは必死にかぶりを振る。


 帰る理由と、帰らない理由がまたひとつずつ増えた。

 カズマの葛藤(かっとう)は、まだもうしばらく続きそうである。


 ◆◆◆


 こつん。

 カズマらが去った後、温室をうろついていた白衣の男のつま先に、なにやら固いものが当たる感触がある。

 怪訝に思いながら拾い上げたそれは、一丁の使い込まれた剪定バサミだった。


「これは……見たことのない意匠だ。

 しかも金属質にもかかわらず、非常に軽い。

 アルミニウム……? いや、違うな。

 ふふふ、実に興味深いじゃないか!!」


 ガラスの温室に男の高笑いが響き渡った。



(担当:伊織ク外)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ