覚醒
side サクラ
サクラがソラを怒鳴った翌日サクラはソラを追い、北の街“アルティス”に来た。しかし、サクラ一人だけでは無かった。
「君まで着いてこなくて良かったんだぞ?」
「別にいいじゃない。」
「でも、リアンティールの事が嫌いなのだろう?」
サクラの言葉にクレーディアは肯定しない。
「どうした?」
「違うの。別に嫌いじゃ無いの。」
「じゃあ何故だ?それよりも、嫌いじゃない?どういう事だ?」
「それはまぁ………むぐぐ。」
クレーディアは言葉濁らせる。
「そう言えば、妙に心配していたな、昨日。」
「それは………。」
「まぁ、言いたくなければ言わなくてもいいが。」
「えぇ、今はそうしますわ。」
クレーディアはそういいソラを探す。街の人に聞きながら歩いていると、ソラが走って行くのが見えた。後を追い、着いた場所は無法者達が集まるような場所だった。暫く走るとソラともう一人、男の姿が見えた。いや、二人だ。
「あ、あれって。英雄?」
「あぁそうだな。」
何かを喋っている。そんな様子を二人は見ていた。するとソラが屋根の方を見た。そこには五人の男が武器を構えている。一人のリーダー格の男が何か喋っている。サクラはその男の口元を見る。
(?コ……ロ……ス?殺す!?やばい。)
サクラがそう思った矢先、リーダー格の男を含めた三人がソラに向かって走った。サクラは自然と身体が動いていた。隣にいたクレーディアも一緒で、ソラに向かって走り出していた。そして、
———キンッ!
「な、何で……………。」
ソラが驚いた様に呟く。
「ねぇ、一体どういうこと?これ。」
「話しは後だ。今はこの者達を撃退する。」
クレーディアが誰に向かってかは分からないが、聞いた。
「おぉ?ソラ君の友達かな?まぁ、取り敢えずこの雑魚どもを片付けるか。君達、ソラ君をサポートするよ。」
サクラとクレーディアは内心驚いたがすぐに返事を返した。
「「はい!」」
side END
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「何で二人がここに?」
「話しはあと!今はこいつらをどうにかするわよ。」
ソラが二人に聞いたがクレーディアが返した言葉に黙る。
「ソラ君、この五人は僕達が何とかする。だから君はボスを頼む!」
「分かりました!」
ソラは二人の事はおいといて、戦闘に集中することにした。三人が敵の五人を足止めしている中、ソラはグラトの下へと歩いていく。
「勝負だ、グラトさん。」
「あぁ、行くぞ。」
そして、ソラは納刀した刀の柄を握り、そのままグラトに向かって走る。近くまできたソラは袈裟斬り、逆袈裟を放ちグラトに斬りつけるがグラトはそれを全部防ぐ。
「火よ、球となれ。“ファイアーボール”」
「詠唱魔法か!」
「火の球よ、増えろ。」
グラトがそう言った瞬間、一つだった火の球が大量に出現した。
「これ、………何個あるんだ?」
「突風よ、火の球を導け。」
すると、突如突風が吹いた。その突風に火の球が乗り、スピードを付けたままソラに飛んでいく。
「くっ、避けきれない!」
何個か避けるが、避けきれずに当たってしまう。一回当たった事により、体制を崩してしまい後から飛んでくる“ファイアーボール”を全て受けてしまったソラは所々、黒くなっていた。
「くそっ。グラトさん、本当にそれがあなたですか?」
ソラは唐突にグラトに聞いた。ソラの言葉にグラトは、
「あぁ、そうだ。」
と、言った。しかしソラはそんなグラトに真剣な眼差しで言った。
「いや、違う。あなたはそんな人じゃない。」
「貴様に何が分かる。」
「グラトさんの…………願い。」
「!!!」
ソラの言葉にグラトは驚いた。グラトの心の中では揺れ動くものがあった。何故、こんな少年がそんな言葉を言えるのが不思議で仕方なかった。
ソラは驚いたグラトを余所目に言葉を続ける。
「あなたは多分自分の幸せじゃなく、他の人の幸せを願っている。それは今も同じはず。でも、何故か出来ない。そうじゃないですか?」
「…………違うな。俺はそんなこと思ってはいない。」
「違うくない。あなたは自分のやっている事が怖くて逃げ出しているだけだ。その弱くなった心を利用された挙句、街の人達を傷付けてしまったことを悔やんでいる。」
後ろの戦闘の音がソラには聞こえてなかった。それだけ、グラトの事を助けようと集中して考えていると言うことだった。
「俺がグラトさんのお母さんにグラトさんの事を聞いているとき、周りの人も聞いていたと思う。けど、皆気にしていなかった。」
「それは私のことがどうでもいいからだ。」
「違う。そんなんじゃない。街の人達は多分、グラトさんのやってきた事はもう許していると思いますよ。」
グラトの心は徐々に動き始めていた。
「それほどあなたが街を救ったに皆さんは感謝しているんだと思いますよ。」
「そんなこと………」
グラトは言葉を詰まらせる。そんなグラトにソラはさらに喋る。
「街の人は心配してますよ。勿論、アルミアーナさんもね。」
「そうですよ、ボス。皆、あなたが昔のあなたに戻るのを待っています!」
後ろで戦っているサディスがソラの言葉に便乗し、グラトに言った。
ソラとサディスの言葉にグラトは無言のまま、持っていた大剣を地面に置いた。そしてソラに口を開く。
「なら、お前の拳で俺を目覚めさせてくれ。」
その言葉を聞いたソラは“空牙”を地面に置き拳を握り、構えた。
「手加減は無しだ。本気でこい。」
「はい!」
そして、ソラはグラトに向かって走り出した。グラトもソラと同じくタイミングで走り出す。
「「おぉぉぉぉぉらぁぁぁ!」」
二人は叫び声をあげながら、お互いを殴り合う。
「流石ですね。」
「貴様もな、リアンティール。」
ソラは喋りながら体を真っ直ぐに伸ばした。そして「ふぅ」と、言った後、再び拳を握り構えを取る。だが、その構えは始めとは違った。
「その構えはまさか、…………龍拳!」
ソラは無言で頷く。
「ほう、面白い。そうでなくちゃあな。」
「えぇ。」
そして、再び殴り合いが始まる。しかし、“龍拳”を使っているソラの方が優勢だ。暫くするとグラトが片膝を地面につける。
ソラは構えていた手を下ろした。
「目、覚ましてください。」
そういいグラトに一気に詰め寄り、顔を思いっきり殴った。
「ぐはっ!」
グラトは後方に飛び、背中を擦る。むくりと立ち上がりソラを見た。
「感謝する。おかげで目が覚めた。」
「良かったです。」
グラトはソラに思いっきり殴られた事で昔の自分を取り戻した。後ろでは三人が敵を倒していた。三人は二人の下へと駆け寄った。誰もがこれで終わったと思っていた。ソラ以外は。
「そろそろ出て来たらどうですか?」
唐突にソラが一点の方を見つめ呟いた。すると、ソラの見つめていた方から男が出て来る。その男は一度ソラと接触していた男だった。
「ほう、俺の気配を感じ取ったか。」
「この前の言っていた事か?」
「いや、まだその時ではない。しかし邪魔者は消しておかないとな。“ダークアロー”」
男はそういい、"ダークアロー”をサクラとクレーディアに向かって放った。ソラは咄嗟に二人を守ろうと二人に向かって走り出す。
———ザシュッ!
小さく、肉が切れるような音が二つ聞こえた。
「くっ……。」
ソラは痛そうに横腹と脚を押さえる。
「何………しようとしたっ!」
怒りの表情を露わにするソラ。そんなソラを見て、その場にいるソラ以外の人が寒気を感じた。そんなソラの言葉に男は、
「殺そうとした。」
と、ニヤリと口角を上げながら言った。その言葉にソラは等々怒りを爆発させた。
「ふざけんなっ!」
そう怒鳴ったと同時にソラに変化が現れた。髪が黒、白と交互に変わる。
「俺は絶対に守ってみせる。友達を!」
ついにソラの髪の色が完璧に白になった。その瞬間、ソラの心の中で声が聞こえた。
『へっ、やっと覚醒したか。』
「?誰だ。」
ソラが突如言った言葉にその場にいた皆がぽかんとしている。
『俺か?俺は空牙だ。』
「え?どういうこと?空牙は俺の刀の名前だろ?」
『あぁ、そうだ。その刀が俺だ。』
その瞬間、ソラはハヤトの言っていた事を思い出した。
「妖刀。」
『そうだ。って、まぁこの話しはまた後だ。とにかく俺の力を貸してやる。さっさとあいつを倒せ。』
「………分かった。」
ソラは空牙の言うとおりにすることにした。小さく呟いたソラに空牙は話しかける。
『いいか、今のお前は俺の力が入っている。お前は確か気を使えたな。』
「あぁ。」
『じゃあ、気を刀に込めるよう俺の力を刀に込めてみろ。』
無言で頷き、刀に気を込める容量で空牙の力を込めようとする。
(ん?これか?)
ソラは自分の中にある初めて見る力の存在に気付いた。空牙に言われたとおりにその力を刀に込める。
『ん?まじかよ。こんな簡単にやりよった。』
空牙がソラの心の中で驚いた様な声を出している。ソラは気にせず刀を構えた。
「いくぞ………。」
『振ると同時に力を放つように振れ。』
「はぁっ!」
その言葉を聞き言うとおりにソラは刀を振ると同時に力を放つ。
———ザァァン!
放たれた力は斬撃となり、男に向かって飛んでいく。男は嫌な予感がし、姿勢を低くしてその斬撃をかわした。
『それが“斬空牙”だ。』
戦闘シーン苦手かも^^;