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空牙  作者: 海鮮巻き
第一章 闇に堕ちた英雄編
6/14

鍛練

side ハヤト



後三分で鬼ごっこがスタートするというところで森奥へと向かう方角から赤い光の玉が打ち上がり、破裂した。赤い閃光が眩しく光った。ソラによる危険信号。そう判断し、黄色の光の玉を打ち上げる。そして、先ほどの赤い玉と一緒のように破裂し黄色い閃光が目に映った。これは鬼ごっこが始まる前にもしものために決めた合図。黄色は中止を意味する。


「ミリア、ラギリは俺に着いてきてくれ!マイクとアイラルはここに残って護衛を頼む!」

「「「「了解!!!」」」」


ハヤトの指示を四人は了承した。

すでに集合場所には何人かの生徒が戻ってきている。ハヤト達を見て、少し不安そうな顔をする生徒が多い。



ハヤト、ミリア、ラギリは急いで赤い閃光が上がった地点へと向かう。暫くすると、何か話し声が聞こえる。そして、ハヤトの目の前に見えるのは弟子が傷だらけで女子生徒の前に立っているという映像だった。そして、もうひとつ。英雄と呼ばれていた男が今にもソラを斬り殺そうとしていた。それを見たハヤトは、


「ソラ!」


と、叫び二人の間に入った。


————キンッ!


刃が交わる音が響いた。


side END



—————————————


時は少し遡りソラside


(アルディーシャさんは今のところ大丈夫そうだな。)


ソラはグラトを相手にしながらサクラの事を気にしていたが問題はなかった。サクラはグラト以外の敵を半分は倒していた。


ソラは再びグラトへと向き直し刀を納刀した。そしてそのまま構え、抜刀した。


「………“狼牙(ろうが)”」


ソラの抜刀術、“狼牙”がグラトを捉える。グラトの防具には“狼牙”によってつけられた傷があった。肉は斬れなかったがグラトを吹き飛ばすことは出来た。吹き飛んだグラトは近くの木に背中を打ち、呻き声をあげる。すぐに立ち上がり何もなかったかの様に大剣を構えた。


「くそッ!」


少し離れた方から悲鳴らしき声が聞こえた。ソラはサクラの方を見ると、手を拘束され敵から攻撃を受ける寸前の光景が目に映った。ソラはすぐさまサクラの前にでるが敵によって放たれた魔法がソラに直撃した。ソラは膝をつき呼吸を整えている。そして、ソラの目の前にはグラトが大剣を高々と持ち上げ振り下ろす構えをしていた。そして、振り下ろす。だが、その攻撃は当たらなかった。


—————キンッ!


ソラとグラトの間に割って入ったのはハヤトだった。


(し、師匠………)


———ドサッ


ソラはハヤトが到着したことに安心したのか気を失ってしまった。





ソラが目を開けると白い天井がみえた。いつも来ている馴染みの部屋である医務室だ。


(痛い………)


そう思っていると医務室の扉が開かれた。


「ん?目覚めの気分はどうー?ソラ君。」

「微妙です。」


入って来たのはサティアスだ。サティアスと話していると、もう一人いることに気がつく。カーテンから顔を覗かせたのはサクラだ。


「すまなかった!」


サクラの突然の謝罪に驚くソラだがすぐに表情を戻し、微笑みながら言った。


「アルディーシャさんは何も悪くないですよ。それに俺の力不足でもありますし。」

「いや、それでも私がちゃんとしていなかったせいで君が傷付いた。」

「あれは体が勝手に動いたんです。それに女の子を守るのが男の役目でしょ?」


ソラがそういうと、サクラは頬を赤く染めた。


「ところであの後どうなったんですか?」

「あぁ、ハヤトさんが到着した後君は気を失ってしまってね。その後は敵はハヤトが相手だとまずいと思った感じですぐに闇魔法で姿を消したのだよ。ハヤトさんも君が心配だった様で追わずに君を回復魔法で応急措置をしてここまで運んだのだよ。」

「そうですか。」


サクラの説明に納得した様に呟いた。


————————


「じゃあ先生。今日は失礼します。」

「ソラ君、大丈夫かい?無理したらダメだよー?」

「はい!ではこれで。」

「うん、バイバイ。サクラちゃんもね。」

「はい、さよなら。」


ソラとサクラはサティアス先生に挨拶をして、医務室から出た。会話をしていくうちに同学年なのに敬語はおかしいという話になりソラはサクラに対して敬語をやめたが、それでも少し遠慮して敬語になってしまう時がある。


「何もこんな時間まで一緒にいなくてもいいのに。」


と、サクラに言うとサクラは、


「私は君に二回助けられた。はっきり言えば私はあの戦いは足手まといだったと思う。」

「そんなことないですよ。敵を半分倒したじゃないですか。俺なんか一人も倒せなかったんですよ?」

「いや、一人も倒せなかったとしてもかの英雄と互角に戦えていた。充分じゃないか。」


サクラはソラをフォローするように言った。だが、ソラはあの戦いで敗北感を味わっていた。


「互角じゃないよ。」

「え?」

「あの戦い、互角なんかじゃなかった。俺の完全負けだった。」

「何でそんなことがいえるのだ?」

「だってあの人、あれで四割ぐらいの実力だよ?俺なんか最初から全力だった。」


サクラは黙ってしまう。

実力の差を痛感していたソラにサクラが声をかける。


「だったら、時間が空いている時でいい。私と一緒に鍛練しないか?」

「え?」

「悔しいのだろ?私もそうだ。悔しい。だから一緒に鍛錬してくれないか?」


今日のことを思っているのか、サクラは涙を流しながらソラに言った。ソラはその涙を見て決断した。


「うん、よろしく!」


そう言って笑顔を見せたソラだった。



あれから数日が経ち、休日である今日は初めてサクラと鍛練をする日だ。ソラはサクラの家の前につき、呼び出し用のベルを鳴らす。すると中から執事らしき人が出てくる。


「どちら様でしょうか?」


執事らしき人はソラに尋ねる。


「ソラ・リアンティールと申します。サクラ・アルディーシャさんの通うサンディアス学園の生徒です。今日は約束をしていたので来ました。」

「ソラ・リアンティール様でしたか。サクラお嬢様からお話は聞いております。どうぞお上がり下さい。」


ソラの応答に納得した執事はソラに中に入るように促した。ソラは玄関で靴を揃え執事に案内されながら奥へ進んだ。


「こちらになります。それでは私はこれで。」

「はい、ありがとうごさいます。」


執事はソラを案内したあと来た道を戻って行った。


ソラは扉をノックした。中から「どうぞ」と、言う声が聞こえたのでドアノブを回し、中に入った。


「失礼します。」


ソラはお辞儀をしながら言った後、顔を上げた。そして、ソラは忘れていたあることを思い出した。


(しまった。ここ、一回来たんだった。)


ソラはサクラの母、エリカの顔を見るとやはり気が付いているみたいでニヤニヤしていた。


「あら、お久しぶりね。このあいだも、今回もありがとう。」

「い、いえ大した事は………。」


自分でもわかるくらいに顔が引きつっている。アルディーシャさんは………


「え?どう言うことだ?」


と言っている。


「この方よ。この間、貴方を運んでくれた人は。」

「そうなのか?」

「え、えぇまぁ。」


ソラはばつが悪そうに言った。サクラは少し怒ったような表情をしている。


「何故言ってくれなかったのだ!」

「いや、だってそれで気遣いされても困るからさ。それに見返りを求めてやったわけじゃないしな。」

「それでも、私の命の恩人だ。それなりのお返しはしたい。」


サクラの勢いに思わず黙ってしまったソラにエリカは提案をする。


「だったら鍛練の日は昼食と夕食をご馳走するわ。それならいい?」

「分かりました。」


ソラは渋々承諾した。サクラの方を見ると満面の笑顔をしていた。


「じゃあ、早速やるか。」

「あぁ、そうだな。」



ソラとサクラは庭に出て、少し歩いて屋敷から離れる。


「それでは始めるぞ?準備はいいか?」

「うん。」


ソラとサクラは自分の武器を構える。先手を打ったのはサクラだった。


細剣による突きをソラは刀で防ぎながら攻撃のタイミングを伺う。


「アルディーシャさん。刀は鞘も武器になるんだよ。」


ソラはサクラにそう言うと鞘でサクラの右手を叩く。少しだけ気を込めて殴ったため細剣がサクラの手から零れ落ちるように離れた。が、それを左手で地面に落ちる前に掴みそのままソラに斬りかかる。


「どうしたんだ?」


サクラは少しニヤッとし、ソラを挑発する。ソラに細剣が当たるかと思いきや、ソラは再び鞘で殴る。だが、サクラにではない。細剣にだ。


———パリィン


気を込められた鞘に殴られた細剣は硝子が割れるような音をしながら砕けた。


「あ、ごめん。少し本気で殴ってしまった。」

「いや、いいんだ。丁度変えようとしていた頃だし。」


少し申し訳ないと思っていたソラだが持って来た荷物の中に大事な物があるのを思い出した。


「ちょっと待ってて。」


ソラはサクラにそう言って自分の持って来た荷物のところに行き布で巻かれた物を手に取り、サクラの下へと戻った。


「はい、これ。」

「?何だこれは。」

「細剣だよ。小屋にあるのを見つけてね。師匠に相談して持って来たんだ。最初に渡すつもりだったんだけど忘れてて。」


サクラが巻いていた布をめくり、細剣を鞘から抜く。


「綺麗だ。」


サクラは細剣を見ながら呟く。


「それ、有名な武器職人が造ったらしいんだけど、俺たちの武器は刀だから別にいらないんだ。」


ソラがそう言うと、サクラは目を輝けて言った。


「これ、もらっていいのか?」

「うん、いいよ。」

「ありがとう!大事に使わせてもらうよ!」


そう言いサクラはソラに抱きついて来た。


「え、ちょっアルディーシャさん???」


そして、エリカがサクラに向かって一言言った。


「あらサクラ、大胆ね。」


サクラは母の言葉を聞き、冷静になった。そして、沸騰したかのようにボンッと頭から湯気が出て顔を赤くした。


(アルディーシャさんも普段は冷静だけど、こういう時もあるんだな。)


「気に入ってもらえてよかったよ。」


ソラはサクラにそう呟いた。

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