二度目の遭遇
サクラと遭遇してから一ヶ月と少しが経ち夏期休暇が終了し、始業式である今日、ソラはいつも通り、寮から校舎に向かって歩いていた。教室に着くと、早速ソラを蔑んだ目をし悪口を言ってくる。そんな事ももう慣れたソラは気にしない。
始業式も終わりすぐさま授業に入る。
ソラの通うサンディアス学園も始業式が終われば下校などと言う甘い事はない。何処の学園でも一緒で始業式が終われば直ぐに授業をする。これが一般常識だ。
ソラは授業が始まるまで席に座りボーッとしていた。すると近くから気になる話が耳に入る。
「知ってるかー。あの“黄昏の騎士団”が明日、Sクラスと合同でランク高い依頼に行くんだってよ。んで、他のクラスの見込みのある奴も参加さしてもらえるらしいぞ。」
「まじかよー。でも、俺らは絶対ねーよな。」
「まぁな。」
(…………珍しい。何か理由あんのかな?)
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side サクラ
「サクラ、明日だね。」
サクラに話しかけたのはサクラの幼馴染であるマリ・ウィーランだ。幼馴染といっても小学校などは別々だ。身長は低く、少し幼なさを感じさせる。
「そうですね。まさかこんな日がくるとは思いもしませんでした。」
「良かったね、サクラちゃん。」
サクラの言葉に反応したのはアカリ・サーベルトだ。彼女はマリの友達で、マリの幼馴染であるサクラとも仲良くなった。
「私も憧れなんだー。“黄昏の騎士団”」
「誰でもそうです。マリだってそうでしょう?」
「うん。私も憧れてる。特にギルド唯一の女性メンバーのミリアさんは凄いと思う。」
彼女達の会話で出たのはミリア・ナタリアーナ。二つ名は“追撃”のミリア。その名の通り敵を容赦無く追撃し、排除する様から取られた二つ名だ。
「ふん、甘いなてめぇら。やっぱり一番はハヤトさんだろ。」
彼女達の話しに割り込んできたのは一学年でSランクが三人しかいない内の一人、フォーマット・アドライト。こちらもまたサクラと同じ有名な貴族の一部だ。ちなみにサクラも三人の内の一人だ。
「“龍斬り”のハヤト。あの人はもう強すぎるな。」
「勝手に話に入ってこないでよ。」
アカリが話に割り込んできたフォーマットに悪態をつく。フォーマットはアカリの言葉を無視しサクラに話しかける。
「それよりアルディーシャ、そろそろ諦めて俺の女になれよ。」
「断る。貴方のような人と一生一緒というのは嫌だ。」
サクラはフォーマットを冷たくあしらう。
「冷たいねー。おっと、先生に呼ばれていたんだった。また来るぜ。」
「もう来なくてもいいぞ。」
フォーマットは教室を出て職員室に向かった。サクラはその後ろ姿を見ながら呟く。
「しつこい男だ。」
side END
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授業もある程度終わり、今は昼食時間だ。ソラは昼食をとるべく食堂に向かう。
廊下の角を曲がった瞬間、誰かとぶつかったソラは尻餅をつく。ぶつかった相手も同じだ。ソラはすぐに立ち上がり、ぶつかった相手のもとに駆け寄り手を差し出す。
「大丈夫ですか?怪我、ないですか?」
「えぇ、大丈夫よ。」
「あっ。」
ソラはぶつかった相手の顔を見て少し驚いた。その相手は夏期休暇の時に森の中で出会った少女、サクラ・アルディーシャだった。
「?私の顔に何かついてますか?」
「あ、いえ。すいません。」
サクラはソラの手をとり、立ち上がりながら聞いた。ソラはすぐに謝る。
「すみません、失礼します。」
ソラはサクラにそういいその場を立ち去った。
(気付いて………ないよな?)
サクラが自分の事を気付いてない事がわかり、安堵した。
side サクラ
サクラはぶつかった相手の顔を見たとき、何故か何処かで見た感じがした。
(彼は確か噂の…………。)
すると、後ろから誰かぎ喋りかけてくる。
「ん?どうしたのサクラちゃん。」
「いや、何でもない。教室に戻ろう。」
サクラは後ろからやってきたアカリとマリと共に教室へと向かった。
side END
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授業が終わり鍛練をするために森深くの秘境にある小屋にいるソラは師匠であるハヤトに今日、教室で聞いた話しの理由を聞いていた。
「珍しいですね、師匠。学園の行事に協力するなんて。」
「まぁな。将来の飲み仲間を探そうと思ってな。」
「六人目を探すのですか?」
「何言ってんだ?七人目だろ?」
「そ、そうでしたね。」
“黄昏の騎士団”のメンバーは現在五人だ。だが、六人目はもう決まっていた。
「でも、俺は冒険者になりたいんですけどね。」
「それでもいいさ。何かあったら呼ぶし。それに気が変わるかもしれないだろ?」
「えぇ、まぁ。」
そう、六人目はソラだ。魔力こそないが剣技などはそこそこできる方なのでもうすでに進路が決まっていた。
「ん?」
ソラは何かの気配を察知した。だが、すぐにだれのものかは分かり安心した。すると突然小屋の扉が開かれた。
「おう、ソラ!久しぶりだな。」
「ソラ、元気にしてた?」
「久しぶりだな………。」
「お、いつ振りだ?」
そう言い入ってきたのは“黄昏の騎士団”のメンバーの四人だ。入ってきた順に、マイク・ホーネット。二つ名は“雷撃”。。二人目はミリア・ナタリアーナ。通称“追撃”のミリア。三人目はラギリ・R・ハミントン(ラギリアール・ハミントン)。二つ名は“暗黒の支配者”。四人目はアイラル。二つ名は“嘘憑き”だ。
「久しぶりですね。半年振りぐらいですよ。」
「そんなに経ったかー。それにしても、ソラは私達の後輩になったのかー。」
不敵な笑みを浮かべながらミリアは言った。その笑みを見た一同は何故か少しだけ恐怖を覚える。
「ミリアさん、何か怖いですよ。その顔。」
「まぁ、そんなことより。明日は楽しみだなー。ソラの実力が見れる。」
ミリアはソラの言葉を軽く流し、明日の事を話しだした。
「明日は俺、居ないですよ。」
「えぇ!?何で!?」
「当たり前じゃないですか。落ちこぼれなんですし。それに今からでも実力は分かるじゃないですか。」
ソラの言葉に少し落ち込むような素振りをみせるミリア。
ソラは席を立ち上がり壁に立て掛けていた自分の武器である刀を手にとり、帰りの支度をする。
「あれ?もう帰んの?」
「はい。明日も学校なんで。」
「そうか。んじゃまたな。」
「はい、お休みなさい。」
「あぁ、お休み〜。」
ソラは小屋を出て自分の寮へと帰った。寮に着くと自分の武器を見る。
「“空牙”………。」
昔から持っている刀の名前を呟く。ソラはいつも思っている。この刀をいつから持っていて、何故名前が分かるのかが。実際の名前ではないかもしれないが、この名前であっているといつも思っていた。いつしか、師匠が言っていた事を思い出す。
———こいつは名刀だ。だが名刀は名刀でも、妖刀だ。———
「お前は何故妖刀なんだ?」
ソラはそう言った後、刀をいつも置いているところに置きベッドへと入った。そして眼を閉じ、眠りについた。
翌朝登校すると校庭に、全学年のSクラスの生徒が集まっていた。そこには勿論“黄昏の騎士団”の五人もいた。ハヤトが皆に何かを話している。だが、このときソラは話の内容など気にしない。それほど気にしなくてもいい事だろうと思っていた。それに………
(…………嫌な予感がする。)
side サクラ
校庭にはSクラスの生徒と他のクラスの見込みがある生徒数名が集まっていた。そして、私達の前にいるのは有名なギルド、“黄昏の騎士団”のメンバーがいる。
「今回は君達に特別授業をすることになった。もしこの授業で見込みがある奴がいたらギルドに勧誘しようと思っている。まぁ、頑張ってくれ。それでは移動するぞ。」
『はい!』
全員がそう答えた。
皆が移動する中、サクラはチラッとハヤトの方を見る。手にはいつの間にか便せんが握られていた。その便せんを見ているハヤトの顔が少し険しい顔になるのがサクラには分かった。
side ハヤト
ハヤトが生徒達に移動を指示した後、後頭部に痛くない衝撃が感じられた。振り返り、地面を見ると紙飛行機が落ちていた。その紙飛行機を開くと文字が書いてある。書いたのは自分の弟子であるソラだろう。と思っていた。
書いてある内容を見ると少し険しい表情になる。それはハヤト自身も分かった。内容は、
———嫌な予感がします。気を付けて下さい。 ソラ———
と、書いてあったのだ。
(ソラの予感は結構当たるからな。警戒しとくか。)
その後、ハヤトはギルドメンバー全員に警戒しておくようにと伝えた。
side END
少し訂正もあります。タイトルも変更しました。青空→空牙