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空牙  作者: 海鮮巻き
序章
2/14

始まりの物語

×××side

少女はとある一室で目が覚めた

。自分が何処に居るのか理解するには時間はかからなかった。それは彼女にとって見慣れた部屋だったからだ。彼女自身の部屋。何年も住み続けている部屋だが、何処か懐かしい。あれから何日経ったか分からない。でも、この部屋を見るのは最低でも5日以上は経っていることは分かる。


「あっ、お姉様!」


そう叫びお姉様と呼ばれた彼女の元に少女は駆け寄り、抱き付いた。


「サクラお姉様〜!」

「スミレ。心配かけた。すまない。」


姉、サクラ・アルディーシャは妹であるスミレ・アルディーシャに謝罪をする。


「いいのです。お姉様がご無事で良かったです。」


サクラの胸の中で泣きながらスミレは言った。


「サクラ!」


部屋の扉が勢い良く開いた。入ってきたのは母であるエリカ・アルディーシャだ。


「お母様!」

「サクラ、良かった。本当に良かった。」

「申し訳ありません。私がまだ未熟なせいで心配をおかけしました。」

「いえ、貴方は未熟ではありませんわ。それに貴方はアルディーシャ家の娘でしょ?もっと自信持って。」


アルディーシャ家。有名な貴族の一つだ。そんな家系の長女なだけであって、サクラは責任感が人一倍強い。


「はい、お母様。ありがとうございます。」


母の優しい言葉にサクラは感謝を述べる。


「ところでお母様。私はどの位眠っていたのでしょうか?」

「一週間と2日よ。それほど疲れていたのでしょう。」


迷っていた日にちを数えれば二週間だ。


「それともう一つあります。私は誰にここまで運ばれたのでしょうか?」


サクラがずっと疑問に思っていたこと。それは誰がここまで運んだかだ。


「二人の男の人だったわ。一人は貴方と同じ位の少年で、和服を着ていたわ。」

「和服……ですか?」

「えぇ。」


和服は東洋の人間が好んで着る服の事だ。サクラが予想するには東洋人って事になる。結構分かり易い。これなら容易に探せるかもしれないと思っていた。


「それともう一人の人はフードを深く被って口元を何かで覆っていたからあまり顔は分からなかったわ。でも、その二人は師弟関係って事は分かったわ。」

「何故分かったのですか?」

「和服の男の子がその人の事を師匠って呼んでいたからよ。」


それなら確かに誰でもその二人が師弟関係だって事は分かる。


「それよりも貴方、まだ少し疲れているのじゃない?まだ、夕飯には時間がありますわ。もうしばらくお眠りになってわ?」

「分かりました。それではもうしばらく眠りますね。」


母の気遣いにサクラはそれに同意する。


「夕飯頃に起こしに来るわ。お休みなさい。」

「はい、お休みなさい。お母様。」


エリカとスミレは部屋をあとにした。サクラは再び目をとじ、眠りについた。


side END



——————————



和服の少年とフード付きの服を着た男は森深くの小屋にいた。森の中は魔物だらけで危ないが、ここは秘境で、それでもって魔物もいない。いわば、安全地帯だ。


「びっくりしましたね、師匠。まさか、あそこに人が来るとは思いませんでしたよ。」

「あぁ、そうだな。まさかこんな森深くのしかも俺達しか知らない秘境に人が来るとは予想外だった。」

「しかも、俺と同じ学校で同学年の人でしたもの。でも、直ぐに意識を失ってくれたから、もう面倒事は起きないでしょう。」

「ソラは甘いな。ああいう女の子はお礼をしたがるんだ。どうしてでも見つけようとするぞ。」


ソラと呼ばれた和服の少年、ソラ・リアンティールは女心が分からなかった。師匠であるハヤト・ライアンは分かったような口振りだ。いや、実際分かっている。


「それよりもソラ。気の強化鍛錬はどうだ?」

「微妙です。ですが少しずつ強くなっている気はしますよ。」

「そうか。まぁ、お前は魔法が使えないからな。気とかで頑張るしかないもんな。ハハハ。」

「ほっといてください。」


ハヤトは魔法が使えないソラを笑いながら煽る。


ソラが魔法を使えないのはソラ自身に魔力がないからだ。どうしてなのかはソラ自身にも分からない。だが、魔力がないせいで魔法が使えない。そんな理由でソラは虐められている。学園初の魔力なし。いや、世界初といっても過言ではない。それでも、学園に入れたのは彼の魔法に対する知識が凄いからだ。つまり筆記テストは得意だって事である。

それでも、クラスは一番下の落ちこぼれのクラス、Gクラスだ。それは仕方のない事だ。




ソラはそのクラスでも一番の落ちこぼれ。虐められている理由はこれあった。だが、理由はそれだけではない。


「ソラ、傷は癒えたか?」

「はい、そこそこは。」

「そうか。まぁ、何でそんな事になったのかは分からないが、お前は変わらなければならない。いつまでも過去に縛り付けられるなよ。それに今は。いや、今も一人ではないだろ?俺やあいつらもいる。安心しろ。」

「はい、師匠。ところで、ギルドはこの頃活動していないのですか?」


ギルドは二つある。だが、ソラが言っているのはパーティーギルドの方だ。パーティーギルドとは、そのギルド一つで依頼を受ける。つまり集団で依頼をこなすグループみたいな物だ。それと、国からの依頼を受けることができる。ハヤトなどの大物はギルドに入っていなくても依頼されるからあまり関係ないのだが、ハヤト曰く仲のいい奴らで集まってやった方が楽しいから。と言うことで結成されたらしい。ちなみに、ハヤトのギルドは“黄昏(たそがれ)の騎士団”だ。ギルド名に意味はないらしい。ギルドメンバーは5人。ハヤト含め、全員が超大物、SSSランク一人、SSランクが二人、Sランクが二人の猛者達だ。もう一つは冒険者ギルド。簡単に言うと依頼を受けるところだ。パーティーギルドもここで依頼を受ける。が、勿論普通の冒険者もいる。


「今はやることがないだけだ。何だ?寂しいか?」

「まぁ、そうですね。何と言っても、あの人達も優しいですから。」

「お前はあいつらに気に入られてるからな。」


落ちこぼれのソラが気に入られているのは以前、魔物の全員がSランク以上の猛者達でも、気配を察知できない魔物の群れを、もともと気配察知がうまかったソラが気配察知で魔物の群れを察知し、皆に伝えた。初めは信じていなかった皆だが、念のため警戒しながら進んで行くと、本当に魔物の群れが現れた。念のため警戒していたので、適切に魔物の群れを排除した。皆はそのことがあって、ソラを気に入った。


「まぁ、お前は運動神経もいいしな。けど、なんて言うか、それでも何かおかしいよな?もっといいはずなのに。」

「まぁ、少しでも運動神経があるだけでもましですよ。」

「それに打たれ強さもかなりあるしな。」


その言葉を聞いたソラは苦い表情を浮かべた。


「取り敢えず今日は寝るか。」

「はい。」


二人は明かりを消し眠りについた。

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