仲直り
あれから一週間が経った。この一週間特に何も変わったことはなかった。強いて言えば鍛練にクレアが加わった事だ。
「今日も頑張るわよ!」
サクラの屋敷についた三人は早速武器を取り出す。そしてサクラは鍛練を始める前に言った。
「今日私の友人二人も参加することになった。ソラ、クレア、いいか?」
サクラの言葉にソラとクレアは頷いて返事した。
「もう少ししたら来ると思うから先に始めとこう。」
「あぁ、そうだな。」
「うん!」
始めはソラとサクラだ。ソラは刀を構え、サクラは細剣を構える。ちなみに今回から魔法を使ってやることになっていた。。勿論サクラが勝った。そして、次はサクラとクレア。クレアは武器である鞭を使い、魔法と併用して戦うという戦法だった。しかしサクラの方が強かったようでクレアは敗北した。その直後、サクラ邸の呼び出しベルがなった。
「来たようだな。」
サクラはそう言い玄関の方に向かって歩いて行った。しばらくするとサクラが言っていた二人の友人と共にこちらに向かって歩いて来る。
「なっ!!!」
その二人を見た瞬間、ソラは驚きの声を上げる。
「え?うそ………。」
「………!?」
一人はソラ同様、驚きの声を上げもう一人は無言で驚きの表情を見せる。
「アカリ………、マリ………。」
「え!?ソラ、二人を知ってるの!?」
「……………。」
ソラは二人の名前を呟く。それに反応したクレアはソラに聞くが、ソラは二人………、いや、アカリを見て嫌な表情を浮かべる。
「ごめん、サクラ、クレア。今日は帰るよ。」
「え、でも………。」
「…………ごめん。」
「分かった。でも、明日はちゃんとやるぞ。」
「うん、ありがとう。」
そう言ってソラは屋敷を後にした。
ソラが帰った後、サクラとクレアは二人に話しを聞くことにした。
「ソラは私とマリの幼馴染みなの。名簿を見たり、噂でソラの名前は聞いてたけど、本当にあのソラだとは思えなかった。」
「私も。」
「でもやっぱり私、ソラに嫌われてたなー。」
アカリは空を見上げながらそう呟いた。
「嫌われてる?」
「うん、昔にちょっとね。まぁ、私が悪いんだけどね。」
サクラの問いにアカリはそう答える。
「何があったの?」
クレアは気になったようでアカリにその事を聞く。
「昔、ソラはね。虐められてたの。けど、初めねソラじゃなかったんだ。」
「それはどういう………。」
「初めは私が虐められてたの。それをソラが助けてくれた。けど、その後ソラが虐めの標的になった。初めはそれほどだったんだけどね、初めての魔力検査でソラに魔力が無いって分かってそれから虐めも酷くなった。」
アカリが淡々と話す中、三人は黙って聞いていた。
「でもね、ぐすっ、私はそれを、ひっく。」
話していたアカリは当時の事を思い出し、涙を零した。
「もういいよ。辛いならもう話さない方がいい。」
サクラがアカリをあやすように背中をさする。ようやく泣きやんだアカリは首を横に振り、話しを再開させた。
「私はそれを、黙って見ていたの。何もしないでずっと。」
「でも、ソラは何も言っていなかったよ?アカリの事。」
「違うの。それだけじゃない。私はもっと酷いことをした。ソラは『俺は大丈夫だから心配しないで』って言った。でも、私はその時一番言ってはいけないことを言ってしまった。」
「「「……………」」」
三人は黙ってアカリの次に続く言葉を待っていた。
「私は、『別に友達でも何でもないのに心配なんかするわけないでしょ。』って言ってしまった。そしたらソラはその言葉にショックを受けたような感じの顔をしたの。それを見た瞬間、私は後悔した。」
そう言い終えた後、アカリは再び涙を流した。
その日は鍛練せずに解散することになった。
その夜、ソラは寮の自分の部屋のベッドに横になりながら今日の事を思い出していた。
「やっぱりあの二人だったのか。」
そう呟いていた。ソラも名簿を見ていてまさかとは思っていた。しかし確認は出来ずにいた。学園に入ってからほぼ毎日鍛練していたソラはそのことを気にかけていなかった。そして今日、推測していたことがはっきりとなり自分でもどうすればいいのか分からなくなり鍛練をやめた。あれは別に誰が悪いとかはない。そう思っていても納得出来ないでいたソラだった。
翌日、いつものように学園に向かっている途中、こちらを見てくる視線と気配を察知したソラはその方向を見る。しかし誰の姿も無かった。ソラは気にしないようにし、校舎に入って行った。
ソラが教室に入ると途端に静かになる。しかし、すぐにソラへの罵声が聞こえてくる。席に着くとソラの目の前に二人の男女が来た。素行の悪い生徒で有名な二人だ。
「よう、リアンティール。今日の演習、俺らとやろーぜ。」
「ねぇ、いいでしょ?」
男女はニヤニヤしながらソラにそう言った。一見、ソラを演習のパーティに誘っているようだが実際のところ違う。パーティに誘い演習の時にミスを装いソラを痛め付けようとしているのだ。ソラはそれを幾度となくされていた。
「ごめんなさい。今日は俺、演習に出るなって言われてるんだ。」
「あぁ?んなの関係ねぇよ。なぁアリサ。」
「そうだよ、あたし達の言うこと聞けないの?」
男子生徒、アラン・ゾンディアの言葉に女子生徒、アリサ・ラミーシナは同意するようにソラを脅す。
「私が言ったのよ。」
と、声が扉の方から聞こえる。クラスの皆がそちらに目を向けるとそこには担任であるユリアが立っていた。
「ちっ。まぁ、いい。今日のとこは見逃してやるよ。」
「言ったのがユリア先生だったら仕方ないね。」
アランとアリサはソラの事を諦め自分の席に戻って行った。
二人が戻って行った後ユリアがソラに近づいて来た。
「ユリア先生、ありがとうございます。」
近づいて来たユリアに向かってソラは礼を言った。
「いいのよ、あれは。それに私が言ったことじゃない。」
と、笑いながらユリアは教壇へと戻って行った。
その頃アヴェルの森では事件が起こっていた。
「ふん、こんなものか。」
口の周りに血をつけながら自分が殺したゴブリンの死体を見ながら言った。その狼の毛並みは白色から灰色になった。
「ん?ゴブリンロードか。」
草むらから現れたゴブリンロードを見て呟く。そして、毛並みが黒くなる。
「グガァァァァ!」
ゴブリンロードの悲鳴が森に響きわたる。
「白は光、黒は闇。それぞれの色になる時、その力は増す。」
一瞬でゴブリンロードを噛み殺した狼は森の奥に消えて行った。
放課後、ソラはサクラの屋敷へと向かった。ソラが屋敷に着いた時にはアカリとマリを含めた四人がいた。
「では、昨日の事なんだが…………。」
サクラが話しを切り出した。するとすぐにアカリとマリが立ち上がり、ソラに頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「ごめんなさい………。」
「っ!?」
いきなりの謝罪で驚いたソラは言葉を出さないまま二人をみつめる。
「あの時助けてもらったのに、ソラが虐められることになったのに………知らないフリしてごめんなさい!」
「私も何か出来たはず。でも、怖くて出来なかった。ごめんなさい。」
二人は泣きながら再び謝る。ソラはそんな二人をみながら言った。
「もういいよ、昔の事だし。この前は少し動揺して帰ったけど気にしないでいいよ。」
「でも………。」
「それに俺を庇ってまた虐められるのを見ていられないしね。」
「ぐすっ、ありがとぉ。」
「ありがと、ソラ。」
「うん!」
仲直りした三人とサクラとクレアは早速鍛練することにした。鍛練が終わり、クレアは自分の屋敷に帰りソラ、アカリ、マリの三人は寮に戻るため一緒に帰っている。
「……………。」
すると急にソラが立ち止まった。
「誰?」
「「え?」」
いきなりのソラの言葉に二人は驚く。すると路地裏から一人の男性が姿を現した。
「ちっ、気付いたか。」
そこに現れたのはアランだった。ソラはアランを問いただすように聞く。
「何で俺達を付けてたんだ?」
「たまたま見かけてよー。んで、Sクラスのサーベルトとフィーランと並んで歩いてっから気になっただけだ。」
「……………。」
アランの言葉を聞いたソラは無言で首を横に振った。
「たまたまじゃないだろ。」
「はぁ、何言ってやがる。落ちこぼれのくせに生意気言ってんじゃねーよ。」
「話しがあるんじゃないのか?」
「っ!?………はぁ、何でわかんだよ。」
ソラに確信をつかれたアランは本当の事を話し始めた。
「実はよ………一週間ほど前、俺アルティスにいたんだよ。」
「なっ!?」
ソラはアランがアルティスにいた事に驚いた。
「二人とも、ちょっとここで待ってて!」
「え?う、うん。」
ソラは嫌な予感がした。そしてその嫌な予感がアランの言葉で現実のものとなった。
「あん時の戦い、見てたんだよ。あれ、どう言うことだ?時計台を斬ったあの技、それにあの刀術。充分強いじゃねーか。」
「やっぱり見てたのか。俺は全然強くないよ。あの人の技を利用出来たのもたまたまだよ。それにあの時はかなり必死だったしね。」
ソラが言った瞬間、アランが怒ったような口調でソラに叫んだ。
「それでもあれはお前の実力だろ!!」
「!!!??何で怒鳴るんだ?」
「俺は悔しいんだよ!はっきり言ってあの戦いを見て、俺はてめぇより確実に弱い!てめぇは魔法が無くても充分戦えるじゃねーか!」
アランはそう怒鳴った後、ソラに向かって頭を下げた。
「今まで悪かった。」
そんなアランを見てソラは頭を上げるように言った。
「すまねぇ。」
そう言ってアランはソラに右手を差し出した。
「握手だ。仲直りの………。」
アランは少し照れながらソラに言った。
何かストーリー無茶苦茶?笑




