暴走
ソラが放った“斬空牙”を男は避けた。しかしその斬撃は男の後ろにあった時計台に直撃した。
「す、すごい。」
「……………」
クレーディアは驚いた表情で呟いた。サクラは言葉が出ない程唖然としている。
『これが斬空牙の威力よ。ん?どうした?』
空牙がソラに自慢げに話しているとソラの異変に気が付いた。
「殺す…………。」
『や、やべぇ!暴走しちまった!』
空牙はそう叫んだが空牙の声はソラ以外誰も聞こえない。
「ん?ソラ君の様子がおかしいぞ?」
「さっきの技を出したからか?」
「かもですね。それよりも早く止めた方がいいんじゃないですか?ボス。」
「あぁ、そうだな。」
グラトとサディスはソラの前へと出た。
「ソラ君どうしたんだい?顔怖いよ。」
「落ち着けリアンティール。」
二人は必死にソラを止める。そこにサクラとクレーディアも走り寄ってきた。
「ちょっと!しっかりしなさいよ!」
「どうしたんだいったい!」
二人の制止も聞こうとせず、男に向かって歩き出そうとするソラ。
『ちっ、負担が大きいがあれをやるしかねぇか。』
ソラの中で空牙が呟く。そして、中きら自身の力を放出した。歩き出していたソラの足が上手く進めなくなった。
「どうしたんだ?」
そんなソラを見てグラトが少し心配そうに呟いた。
『よし、これで体力が底を尽きれば………、なにっ!?』
ソラの心の中にいる空牙は驚いた。
『おいおい、まだ歩けんのかよ。もう体力の限界のはずだぞ?しかもまた“斬空牙”放ったし。』
そう、ソラの体力がもう少しで底を尽くと空牙が思っていた瞬間、ふらふらと歩いていたソラが体制を立て直し“斬空牙”を放ったのだ。
「今のはやばかった。でも、今のでわかった。やはり君は逸材だよ。くくく。」
男は笑いながら言った。
「ん?」
男は咄嗟に複数の気配を察知した。そして、すぐにその気配の正体が分かった男は「ちっ」と、舌打ちをして構えていた武器をおろす。
「何があったかは分からないが話しは後で聞こう。」
と、言ってソラ達の前に立ったのはハヤトだった。そして男の方を向き、
「こいつが少し危険な状態っぽいから今回は見逃してやる。それでもやるって言うなら本気で相手をする。さぁ、どうする?」
ハヤトがそう言うと、男は「勿論、退かせてもらうよ。」と、言って立ち去った。
「さてと、取り敢えず休める所に移動しよう。」
と、ハヤトが言った。しかしサクラとクレーディアは目の前の人物に唖然としていてハヤトの言葉が聞こえなかった。
「あ、あれ?おーい?」
ハヤトは反応しない二人の目の前で手を振って気付かせる。
「あ、す、すいません。何でしたか?」
サクラがハヤトに聞き返す。ハヤトは先ほど言った事を再び言った。
「あぁ、休める場所に移動しよう。って言ったんだ。」
「「はい!」」
ハヤトの言葉に二人は口を揃えて言った。
ちなみにソラはハヤトと男が喋っていた時、他の“黄昏の騎士団”のメンバーに気絶させられていた。
歩いている最中にサクラはハヤトに気になっていた事を聞いた。
「ハヤトさんは何故この街にいらしていたのですか?」
「あぁ、少し調べ物をね。ほら、そこにいる英雄グラトの件で。」
「いやぁ、本当に面目ない。」
グラトは笑いながら謝る。
「でも、まぁこい…………、この少年が解決してくれた様だかな。」
ハヤトはあえてソラとの師弟関係を隠そうとした、が………
「確かこの少年がサンディアス学園の落ちこぼれって言われているのだろう?」
「えぇ、ですが本当は強いと思います。」
「あぁ、確かにな。恐らく師匠でもいるんじゃないか?もの凄く優しくて強い師匠でも。」
グラトは内心でニヤニヤしながら言った。
「おぉ、よく分かってるじゃないか!まぁ、俺が認めた弟子だからな!ハッハッハッ!はっ…………!」
見事に自分からバラしたハヤトだった。
「え?は?弟子?いや、でも合点がいくかもしれないわ。」
先ほどまで黙っていたクレーディアが混乱しながらぶつぶつと呟いている。
「あの、全く理解が出来ないのですが。」
サクラは冷静にハヤトに聞き返す。
「はぁ、仕方ないか。まぁ、秘密にしといてくれると嬉しい。」
「はい。」
「まぁ、こいつ………、ソラは俺の弟子だ。こいつが14の時に出会ってな。」
ハヤトは淡々と話し続ける。それを四人は黙って聞いていた。
「でも、こいつはまだ弱い。」
「でも、彼は私のレイピアをいとも簡単に砕けさせたのですよ?」
「そんなこと、気があれば簡単に出来る。武器にもよるけどな。」
「だが、俺の大旋風も弾き返したぞ?」
「多分たまたまだよ。まだ“柳流”をマスターしきれていない。おっと、着いたか。」
話し合っている内に休める場所に移動した一行は中に入りソラを一室のベッドの上に寝かせる。ハヤトは先ほどの話しの続きを話した。
「はっきり言ってこいつは強いけど、本当はもっと強いはずなんだが何故かどんなに訓練しても伸びないんだ。」
「それでも気はマスター出来ているのですよね?」
「大体はな。」
「それとあの刀術はかなり強いと思うのですが。何故、学園でも使わないのでしょうか。分かりませんか?」
サクラの質問にハヤトは言った。
「あいつは力のコントロールが出来ていない。もし、模擬戦や演習で使ってみろ。それこそ死人が出るかもな。」
「ハハッ。」と、笑いながらハヤトは言った。四人はハヤトが言ったことに少し怖さを覚えていた。
「じゃあ、ソラの事は頼んだ。後さっき言った俺がソラの師匠って事、内緒にしておいてくれよ。」
「わかりました。」
サクラは何か事情があると思い追求しなかった。
四人は宿に泊まる事にした。料金は“英雄騎士団”持ちだ。
クレーディアとグラトとサディスはソラの部屋を後にする。サクラは暫くソラを見て呟いた。
「本当、優しいな。君は。」
サクラは先程の戦いを思い出していた。突如現れた男が自分達に攻撃した。しかしそれはソラが自身を盾に守ったおかげで二人は無傷ですんだ。その事を少し悔やんでいた。あの時油断さえしなければソラは傷付かずにすんでいたかもしれない。その事を思い出すたびに胸が痛む。恐らくそれはクレーディアも同じ気持ちだろう。
サクラはドアへ向かい静かに部屋を後にした。
少し無茶苦茶感がある気がするけどまあいっか
感想待ってまーす(^^)




