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ゆずの勇者  作者: 風雅
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ヨシヒコとセルス

暇つぶしに書きました。

「やっと見つけた。やっと見つけたぞ!これでこれで勇者になれる!」

勇者見習いのヨシヒコは宝箱を思いっきり開けた。



「それでヨシヒコ。宝箱を開けたらそのゆずが出てきたのか。くふふ。」同じ勇者見習いのセルスは笑って言った。

「もうやめてくれよ、セルス。泣けてくるよ。君はいいよな。宝箱から出てきたのが立派な剣でそれで試験受けられるんだからなぁ。」ヨシヒコは半分泣きそうな顔で言った。

ここはナンタラカンタラ地方にあるゾナの村で、ヨシヒコとセルスは勇者見習いから勇者になるために「勇者認定試験」を受けに来た。

「全くおかしいよ。長老のばあちゃん。勇者になるために第一に必要なのは武器を獲得することじゃ!とか言って百もある洞窟から一つを選んで中にある宝箱から武器をとってこいだなんて。なぁセルス!」

「確かにね。でもこれって勇者はどんな武器でも使えなきゃなれないから、それを次の試験で試そうっていう魂胆じゃないのかな?」

「うむ。いい推理だな。」いきなり二人の背後から長老のばあちゃんが現れた。

「長老のばあちゃん!」二人同時に飛びのいた。

「セルスお前さんはいい頭をしているが、全くの不正解じゃ。残念ながらわしの気まぐれだ。ははは。どうじゃ?我ながら名案じゃろう?」

にやにや笑う長老にセルスとヨシヒコは呆れ顔をしていたが、ようやくセルスが口を開いた。

「ええ。長老は相変わらず面白い思いつきをなさりますね。」

「ちぇ。じゃあ僕が宝箱からゆずを引いちゃったのは運がなかっただけか。」ボサボサの短い茶髪を掻きながらヨシヒコは黒い目を上に向けて手でやれやれというポーズをした。

「まあまあ。ゆずだって役に立つことはあるぞ。まだ試験まで時間がある。よく考えることじゃ!じゃあの。」背を向けて手をひらひらさせながら長老のばあちゃんは年寄りで杖をついてるとは思えないほどの速さで歩いていった。

「きっと大丈夫だよ。ゆずだって使えることもあるよ。ほら例えば柚湯とか。風邪予防!体は強くなるし!」金髪の流れる髪を振り乱しながら青い目で必死に説得するセルスを見てヨシヒコは思わず吹き出した。

「前から変わらないな。面白いやつだよなお前。」

セルスと僕は幼馴染で二人とも幼い時から勇者見習いにあのばあちゃんの下で修行した。

幼い時からセルスは何事に対しても必死になるたちだった。彼女に惹かれる人は多くいたが、前から一緒にいるせいなのか、セルスも僕もお互いに恋愛感情を抱いたことがなかった。

「全くひどいなぁ。面白いって言うなんて。こっちは必死に心配してたのにさぁ。でも大丈夫そうだから安心したよ。」セルスは心配そうな顔から少し微笑んだ。

「よし。腹いせだ。柚湯にして風呂にでも入るか!」

二人で旅館に戻ると旅館のおばさんに挨拶をしてから食堂に向かった。広い食堂は明るく清潔感のあった。そこで空いてたテーブルに向かい合う形で座った。注文してセルスはきつねうどんを食べて、僕はカレーを食べた。

庶民派っていうのも悪くないよなとか思ったりもしている。雑談して食べ終わるとセルスと僕は二階の別々の部屋へと向かって行った。ヨシヒコは二階の東側の部屋を取っていた。少しだけ洋室を期待していた部分もあったが、部屋はこじんまりとした畳ばりの部屋だった。入ってくると右側にテレビの置かれた広い台があってそばには熱いお湯の入ったポットが置かれていた。丸い円錐の缶からお茶の葉を急須に入れて、ポットから熱いお湯を注いだ。そして急須から湯呑みに注ぐと一気に飲み干した。

「よしお風呂に入ろう!」

ヨシヒコは洗面所に向かうと服を脱いで風呂場で体を洗った。湯はもうためてあったのですぐに例のゆずをそっと中に入れてみた。

しかし、まったくもって変化はなかった。

「はぁ。」

ヨシヒコも湯の中に入った。明日は試験だ。

今まで剣や槍など武器の訓練、馬、バイク(スパイダーサイクルのようなのだったらよかったのに)、戦闘車(もはや勇者じゃなくて兵士)、他にも勇者の心得、人や世界を救うためにはという長い参考書を読み、敵を倒した時にどんなかっこいいポーズをするかということまでした。ここまで頑張ってきたから明日は絶対に長老のばあちゃんに認められて、合格してみせる。そしてセルスと共に一緒に同じ時に勇者になるんだ。武器なんかなくても戦える。素手で敵と戦ってやる。

考え事をしている間にいつの間にか時間が随分と経っていた。ゆずはいつの間にかふやけていた。

「でもこれでゆず湯入ったから風邪引かないな。ははは。」

彼はゆずを持って風呂を出ると体を拭いて服を着た。髪の毛をある程度乾かすと畳の居間に戻った。

入ってすぐ左手にある押し入れから布団を出して畳の上に敷いた。電気を消してから布団に潜り込んでそのまま深い眠りに吸い込まれて行った。



また書きます。

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