表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

語りの継ぎ手

作者: 伊藤紙幣

 人の心の中には、決して途切れない(ウタ)が流れている。

 それは時に魔法のようにその人の足を進めることもあれば、逆に呪縛のような足かせにもなりえる、美しくも残酷で、何よりも高らかに響く詩だ。


 他ならぬ私の中にもその詩は流れている。

 でも私は、一度としてその詩を口に出して詠ったことがない。

 これまでも。そしてこれからも。

 きっと詠うことはないだろう。


 だからせめて、何かに書き落としておこうと思う。

 今は名もなき詩人の、題名も旋律もない、この一つの詩を。 



 §



 朝日が山稜の陰から顔をのぞかせつつある、暗がりの空。

 夜明けの淡い紫色の日差しに包まれた宮廷の庭を歩いていた時、ミアロロは立ちこめる緑のにおいの中に人の気配を感じて、とっさに花壇の陰に身を潜めた。


 ふわふわとした金髪に昼間の空の色を映したかのような碧眼をした少年だ。

 ぱっちりと見開いた両目は、顔立ちと一緒にまだ子供らしさを色濃く残していて、背丈を見ても年齢は10歳くらいといったところだ。


 着ている服は上下が一続きになっている、外套のついた白の聖職服ローブ

 汚れ一つない純白の服の上に、まだ晴れきらない朝闇の影がねばりついていた。


「誰だろう……こんな時間に」


 ミアロロはいぶかしげに目を細め、夜露に濡れて冷たくなった花の茎を手で押し開けながら、庭園中央にある噴水の囲いに腰かけている人影をのぞき見た。


 パシャパシャと間断なくしぶきを上げる噴水を背にし、ひざを組んで座っている。

 まるでここが自分の庭だとでもいわんばかりのくつろぎ具合だ。


 髪は長い。後ろの髪が黒い絹糸のように悠然と伸び、腰掛けている石段にまで届くか否か、というところだった。そしてその頭には、鳥の羽根らしき髪飾りがひとつ。

 

 羽織っているのはポンチョだろうか。まるで襤褸のようなくすんだ茶色の麻布が体を覆っていた。


 萌葱の朝という幻想が描くのか、それとも背中の方で朝焼けを七色に反射しながらはねる水がそう見せるのか。


 凛と居座る旅人らしき人間の姿は、聖書の挿し絵にでも出てくるかのような幽玄さをかもし出していた。

 ――と、少しのあいだ見入っていた時。


「みゃあ」


「……うわぁ!!」


 花壇に向かってひざをついて前のめりになっていたミアロロのおしりに、なにかぷにっとしたものが当たった。

 悲鳴を上げながらボテッ、と鈍くさい尻餅をついてそちらの方を見ると。


「っててて……って、なんだ猫かぁ。おどろかさないでよ……」


「オァァン?」


 すぐ後ろには、翠色に煌めく縦長の瞳孔を不思議そうに傾げる、小さな黒猫が一匹。

 おしりに当たったのは猫の手、ニクキュウだったのだ。


 ミアロロは安堵の一息をつき、思わず顔をほころばせ、おそるおそる猫に手を差し伸べてみた。

 黒猫はきょとんとした目で白い指先を見ている。

 そして、何かを確かめるみたいに、その指先を一度だけ、ザラッとした手触りの舌で舐めた。


 かなり人慣れしているようだ。

 ミアロロは思い切ってその手を黒猫の腹の下にまわして、抱き込んだ。


 抵抗もなにもしない。

 今自分がなにをされているのかもわからない、といったよそよそしい目つきを保ったままだった。


「どこから入ってきたんだよ? 勝手に宮廷の中に忍び込んでたら捕まっておしおきされちゃうぞ?」


「おや、それは本当か? それはまずい。私とて猫の端くれ、まだ猫ステーキなんかになりたくにゃいにゃあー……」


「っ!?」


 一瞬、本当に猫がしゃべったのかと息を呑んだ。

 しかし、自分を覆う大きな人影が地面に落ちているのに気づき、肩越しに見上げると。


「はは。なんちゃって」


 そこには、涼風に黒髪をそよがせる、彫刻のように整った顔立ちにふてぶてしい笑みを浮かべる若い女がーー腰に両手を当ててこちらを見下ろしていた。




 §




「あ、うぁ……あの……」


 まぎれもなく、さっき噴水に座っていた人だ。

 遠目からでは分からなかったが女性だったらしい。


 艶やかな長いまつげの下に、それよりもさらに昏い黒真珠のような双眸があり、まっすぐこちらに妖しい輝きを放っている。


 月と朝の狭間の空を背にしたその姿は、まるで教会の壁画に描かれている女神――アリアンロッドのようだった。


「ごっめーん。驚かせちゃった? いやぁ、ごめんごめん。でもさぁ、人の心を盗み見てるのも、それはそれで趣味が悪いと思うんだよね、私としては」


「……ここ、ろ?」


「そう。私は今、猛烈に感動していたのさ!」


 意味が分からない。ずびしっ、と皮の手袋に包まれた指をこちらに指されても意味が分からない。ミアロロの頭の中で、ものすごい勢いで疑問符が飛び交った。


 とすると、女はミアロロの瞳からやや下に目を移した。同時に指先も視線に合わせて下ろす。


「あっ。ところで、そいつを離してやってくれないか? 私の連れなんだ。苦しそうなところを見てられない」


「えっ? ……あ」


 気が付いた。

 いきなりの事でびっくりしたせいで、知らず知らずのうちに黒猫を抱える手に力が入っていたらしい。苦しそうな素振りでなんとかミアロロの手から逃れようと、必死にもがいていた。


 パッと手から解放すると、すぐさまその女の後ろまで走っていき、乱暴に自分の肩口を舐め始める。


「かわいいやつだろう? 名前は真っ黒だからイーハだ。そのまま過ぎると思うかい?」


 黒猫――イーハを見下ろしていた目をこちらに流し、女は口の端を緩やかに上に曲げて問う。

 ミアロロは怯えながら、素直に答えた。


「そ、そのまま過ぎると思います」


「うむむ、辛辣だな……。いやしかし、私の付けた名前ではないんだよ。大事なので二度言っておく。私の付けた名前ではない。だから決して私のネーミングセンスを疑うんじゃないぞ? そんな噂が広まったら商売上の沽券に関わる」


 女は相変わらず一通りマイペースにしゃべると、煉瓦レンガで組まれた花壇の上に腰掛けた。


「自己紹介が遅れたね。私の名は『カタリ』。旅の吟遊詩人バードだ。お財布事情はこの格好から察してくれると嬉しい」


「あ……僕は、ミアロロ。ミアロロ・シベリウス」


 ついつい反射的に、まだ引け腰で地面に座るミアロロは答えた。

 すると。


「うっそだぁ?」


 と、カタリは真顔のまま身も蓋もない否定をする。

 なんだかちょっと腹が立った。


「ほ、ホントだよ! なんで疑われなくちゃいけないのさ!」


「え? 本当に? ――ははっ、あはっはっはっは!! 本当か! そりゃすまなかった! ぷくくくく……!」


「ちょ、ちょっと! 何がそんなにおかしいのさ!」


「ククク……いやすまない。なんでもないよ。そうか、ミアロロか。いい名前だね。で、そのミアロロはこんな時間にこんなところで何をしているんだい?」


「それはこっちの台詞だよ! ここはウァテスの教会宮殿だよ!? 司祭ドルイドの人以外、入っちゃいけないんだ!」


 それを聞くと、カタリは水っぽい漆黒の目を丸くして、肩をすくめた。


「おや? それは初耳だ。すまない。この国に入ったのはつい昨日の事で、まだよく分からないんだ。ということは、君は司祭(ドルイド)なのか?」


 いまさら気付いたのか、カタリはミアロロがまとう聖職者の服をまじまじと見つめた。

 真っ白な布地に外套が付き、ところどころに銀糸で刺繍が縫われていて、繋ぎになっている下半身は、足首までを覆い隠すスカート状になっていた。


「僕は見習いだよ……。父さんも母さんもドルイドだから、それを継ぐために毎日ここでウァテス教のお勉強をしてるんだ。朝からここを散歩するのは、その日課みたいなもの」


「へぇ、勤勉だな。そんなに勉強してて楽しいか?」


「うん!」と、ミアロロはすぐさま強くうなずく。


「将来は教帝さまの付き人になって、一緒にメシア・イルダーナが天から降りてくるのを見るのが夢なんだっ」


 弾んだ声で、破顔して答えた。


 教帝国ウァテスは、120年前に現在の宗教国家として成立した国だ。

 その背景には、隣国のリフガル王国から流れ着いたウァテス教の信徒と、現在ウァテスがある未開拓土地の原住民との間で侵略戦争が起こった。


 ウァテス教では現在ウァテス教総本山がある土地『トゥールース』を来世に全治全能の救世主メシア・イルダーナの来る大地と称している。


 ウァテス教ではこの事について『われらが主のおわす場所に巣食う悪魔の手先どもを浄化せん』と記し、聖書に英雄譚が謳われているのだ。


「ふぅん、そう。まぁ頑張んなさいな」


 途端に冷めた声で、カタリはそっぽを向いた。

 熱を入れてしゃべっていたミアロロは肩すかしを食らった気分になる。


「……カタリさんはなんでこんなところに?」


 ちょっと怒った抑揚でミアロロ。カタリはあっけらかんと答えた。


「なんでって、綺麗だったからだよ」


「え?」


「ほら、ここって見晴らしのいい丘の上にあるじゃない? 朝焼けに映る宮殿も綺麗だったんだけどさぁ、ここから見る朝焼けも綺麗なんだろうな~と思ってここに忍び込んだワケ。そしたらびっくり、こんな素晴らしい空中庭園があるじゃないか! それで雰囲気に浸ってたら、君がそれを覗いてた。興醒め。今に至る」


「それだけの理由で……?」


 これに眉根を曲げたのは、今度はカタリだった。


「それだけって、理由はそれだけで十分でしょ? 美しいもの見たさに動く人を否定できるの?」


「でも、普通、そこまでしないっていうか……図々しいっていうか……」


 もごもごと言い淀むミアロロにカタリは笑顔で言う。


 無邪気に笑った時にできるしわがほとんどない。完成された美人顔をしているくせに、陽気すら感じさせる子供っぽさがあった。


「私にはね、嘘がつけない〝魔法〟が掛かっているんだ」


「……魔法? 本当に?」


「本当さ。他人にも、ましてや自分にも嘘がつけない魔法だよ。だから自分の思うままに行動するのは普通のことなんだ」


 荒唐無稽な理屈だったが、カタリの翡翠のように透き通った声色には、それを信じさせるような不思議な響きがあった。

 不審に思っていたミアロロも、話すうちにカタリに対する疑念というものが薄まっていた。むしろ親近感が芽生えつつあった。


 と、カタリは何かに気付いたように煉瓦から地面に身を下ろす。


「ん、人がもう居るみたいね。日も高くなってきたし、ここいらでおさらばしようかな。ミアロロ、この街で一番大きな酒場か広場を教えてくれないか?」


「う、うん。海沿いの下町にトマス広場っていうのがあって、その広場の端にあるのが一番大きな酒場だよ」


「トマス広場だな。ありがとう。じゃ」


「あっ、待って!」


 ミアロロは駆け出そうとしていたカタリのマントをつかんだ。


「……げっ。まさか、私を突き出すつもり?」


「そっちの宮殿を横切る道には、もうこの時間に人がいるんだ。あそこの蔦の後ろに抜け道があるよ。獣道だけど、まっすぐ下町に出れるよ」


 カタリは驚き、また目を丸くした。そしてにんまりと笑って、


「分かった。ありがとう。私はしばらく滞在する気だから、気が変わらないうちにそっちまで来てくれたらうれしいな。それじゃあね」


 言下にカタリはミアロロの指の先にあった、壁にもたれ下がる、ヤドリギの蔦で出来た幕の向こうへと姿を消した。

 イーハも知らないうちにどこかへ行ったらしい。


「……不思議な人だったなぁ」


 気が付けば黎明は暁に、朝焼けだった空は朝に変わっていた。

 一夜の魔法にかけられた気分だ。まるで月の神様が化けて出たのかと思うような。

 また会うような気がする。いや、会ってみたい。

 そんな予感と願望を胸に滲ませつつ、ミアロロは砂を払って立ち上がり、小さな外套を翻して、朝の礼拝へと向かった。


 宮廷の背景にそびえる雪を被った霊峰の山々に、その日も変わることなく、一日の始まりを告げる賛美歌が響きわたった。



 §




 それから三日たった後のことだ。


「異国の吟遊詩人(バード)とな?」


 教義室と呼ばれる、本棚と机に埋め尽くされた部屋の中。

 縁取られた天窓から昼下がりの陽光が照る室内で、ミアロロは使い古された聖書からハッと目を持ち上げ、そちらの会話をする二人を見た。


 見ると、片方はミアロロの父だった。

 ミアロロと同じ聖職服に身を包み、金色のひげを蓄えた長髪の人物だ。波のかかった金髪を肩口で切りそろえていて、掘りの深い顔にはいかにも厳格な碧い瞳が据えられている。


 もう片方はミアロロの知らない、父と同じドルイドらしき人だった。


「ああ、どうやらかなり面白い〝女〟らしい。歌声もそこらへんの語りフイラなんかとは比べものにならんとか」


「なんと! 女なのか」


 ほぅ、と父は感嘆のこもった息を吐いた。


 父は民族学に興味があるらしく、暇があれば昔の文献などを開いている。各地の伝承を語り継ぐことを生業にしている吟遊詩人に興味があるのだろう。


「3日前から夜になるとトマスの酒場に詠みにくるそうだ。下町の市民たちはその話で持ちきりらしい」


「ふむ。それは興味があるな。行ってみるか」


 父は口元に興味を表しながら、鷹揚にうなずく。


 そして一通り話が終わるタイミングを見計らって、ミアロロは席を立った。


「父上」


「ん? ミアロロか。どうした、教典で字のわからないところでもあるのか?」


「いえ。さっき話していたバードの人のことだけど……その、私も見に行ってみたいなと思って……」


「今の話を聞いていたのか……。ミアロロ、お前はまだ子供だ。夜の下町はここいらほど治安がよくない。悪魔憑きに連れ去られでもしたらどうする気だ?」


「……父上、私も明後日で10になります。あまり子供扱いはしてほしくありません」


 父は困った顔をし、口を紡いでしばらくミアロロの顔を見ていた。

 すると、やがてフッと口元を緩めて、


「そうだな。お前もいつまでも子供じゃあない。もう明後日で正式なドルイドの資格を得れる年だ。いいだろう。だが、行くときは私と離れるなよ? それだけは守れ」


「うんっ!」


 自然と出た満面の笑顔に、一瞬ミアロロは「しまった!」と思った。

 しかし、いつもは怒られるはずの失礼に、父は「はっは」と軽く笑ったのだ。


「やはりまだ、年相応の子供かもしれんなぁ」


 父が教義室を出ていく背中を見ながら、自分の未熟さに顔を赤くするミアロロだった。

 席に戻って再び聖書を開いたものの、もはや集中はできなかった。


 カタリにもう一度会える。あの人の詩を聴ける。

 なぜかそれが、胸の内ではこらえきれずに口元に浮かぶほど、無性に楽しみに思えたのだ。

 



 §



 ミアロロは下町のにおいが好きだった。


 広場に並ぶ屋台から漂ってくる魚介料理のにおいや、がやがやとした人混みの中にある活気。いつもお祭りをしているみたいで心が躍る。


 聖職服では目立つので、下町に来るときは必ず市民が着る服に着替えてくる。

 今のミアロロは麻のクリーム色のシャツと、褐色に染まったデニムのズボンだった。


 もっとも、見る人が見れば小ぎれいな顔と手入れの行き届いた金髪で、ただの一般人でないことは分かる。あくまで簡易用だ。


 手を引く父とともに石畳を踏んで人混みをかき分けていくと、やがて酒場についた。

 一言で言うと、すごいことになっていた。


 酒場の中は言わずもがな、開け放たれた入り口や窓、果ては屋根に張り付いて天窓からも、酒場の中をのぞき込んでいる人たちがいるのだ。見知らぬ人が近くを通れば何事かと疑う光景だった。


 今現在、中で詠ってるのかさえわからない。


「これじゃあ中に入れないね……」


「ミアロロ、こっちだ」


 父は何かを閃いたように、ミアロロの手を引いて裏口に回った。

 さすがに裏口には誰もいない。しなびた雑草がやかましいのを避けて月の下でひっそりと群生しているくらいだ。


「ここの店主とは懇意でな。合い鍵を持っている」


「え、なんで?」


「母さんには秘密だぞ……」


 それだけ言って、父は酒場の鍵を開けて中に入った。なにか気まずい事情でもあるのだろうか。

 子供のミアロロには、夜中に密かに呑みに来るという大人の愉しみが分からなかった。


 酒樽などが並ぶ部屋を通り、カウンターの裏と思われる扉に父が手をかけた瞬間。

 

 ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!



 と、店が揺れた。

 次いで、空気が割れんばかりの拍手喝采と指笛の喧噪。


 おそらく一曲詠い終わったのだろう。

 しかしこの歓声はなんだ。

 去年の祭で4代目リホロ教帝が来た時と遜色ない盛り上がりではないか。


 余韻が冷めないうちに父がドアを開ける。熱気を帯びて流れ込んできたさまざまな果実酒の香りが鼻を灼いた。


「よう、盛況だな」


 カウンターの内側で椅子に腰掛け、パイプを吹かしていた中年に父が言う。


「あるぇ? 旦那じゃねーかい!」


 びっくりした様子で応える店主と父を横目に、ミアロロはカウンターの机の下をくぐり、客席側へと出た。

 無理矢理に顔だけを人垣に割り込んで見る。


 ――居た。


 人が周りを囲う中、ぽっかりと空いた空間に椅子が一つと、長い黒髪の女性が一人と――かたわらに一匹の黒猫。


 間違いなく3日前に見たカタリだった。

 しかし、あの時とは比べものにならないほど、さらにその顔は色艶が増していた。


 おそらく化粧をしているのだろう。もはや天衣無縫と呼べるほどの美貌だった。

 手には異形の弦楽器が携えられている。ハープのような細い弦が5つ並んでいるのが見える。


 右手で弦を鳴らし、左手で弦を押さえる位置を変えることで音の高低を操作できる、独特の調弦機構を持った民族楽器だ。おおよそこのウァテスには存在しないものだろう。


 どよどよと盛り上がる周りの人たちに笑みを浮かべた視線を送る女。そしてつい、と頭の羽根が向く方向を変えたかと思うと、


 女とミアロロの目が合った。

 



「よく来てくれたね」



 と、カタリが無言のあいさつをウィンクで送ってくる。椅子のすぐそばで寝そべって目を瞑っていたイーハも、突然何かに気づいたように耳を立ててきょろきょろとし、ミアロロを見つけると、鋭くこちらをにらみつけた。


 ミアロロは自然と目を細めて笑顔になり、うんっ、とそのあいさつに応える。

 



 しゃらん。


 カタリが弦楽器をなでる。するとそれだけで、周囲の人は興奮冷めやらぬ口を閉ざした。

 

沈黙が水面に広がる波紋のように伝播する。一瞬で形作られた静謐な雰囲気に、ミアロロは息を呑んだ。

 そして、次の詩が始まる。


「遠き西の国、ハルシュタットと呼ばれる地。

 彼の地にはその昔、

 ヨハン・ゲオルク・ラムザウアーという名の若き王が居た。

 名戦士ヨハンの戦友であるザクセン卿は敵国の矢の前に斃れ、

 ヨハンは涙を拭い、亡き同胞(はらから)の剣を執り、立ち上がった――」


 まるで一つの器楽のように響く高らかな声。

 耳から入って、胸の奥の奥の底にある、何かやわらかい部分に突き刺さる抑揚。

 ミアロロは最初の一句だけで、全身に寒風が奔る錯覚にとらわれた。


 人器一体の詩は、聞き入っているとあっと言う間に終わりを迎えた。

 内容は、ヨハンという異国の王とひとつの鋼鉄の剣めぐる物語、そして妻との絆を描いた詩だった。


 英雄譚かと思われた序章だったが、次第に妻との結ばれぬ愛の悲劇へと変わっていた。詩の終わった時には先ほどのような喝采はなく、鼻水をすする音の隙間にしめやかな拍手が送られただけだった。


 他ならぬミアロロも、袖で涙を拭っていたのだった。




 §



「今宵もご静聴を賜り、ありがとうございました。今日はここまでとさせていただきます」


 詩が終わり、額に汗で張り付いた黒髪をなでつけながら、カタリは席を立って一礼をした。

 惜しみない拍手が送られる。ミアロロも小さな手を一生懸命鳴らした。

 その中心に立つカタリの口元には、大仕事をひとつこなした後の満足げな笑みが灯っていた。


 拍手が終わると同時に、一人の農夫らしき屈強な図体をした若者がカタリに話しかける。


「いやあ、あんたすげえよ! 俺は学がねえし3日前から毎日通ってるが、一向に飽きねえ!」


「そりゃお前、飽きる頭もねえからだろうが! な、な、姉ちゃん。こんな馬の糞くせえ野郎ほっといて、俺の嫁にならねえ? 一生好きなだけ魚食わしてやるからさ、頼むよぉ」


 他の水夫と思われる男が農夫を押し退けた。


「あはは、どっちも私にゃあ役不足だね。残念だけど私は生涯独身と決めているの。野菜と魚を磨いて出直してらっしゃいな」


「くぅぅ、この毒舌ももはや名物だ、たまんねえなー!」


「それじゃあただの変態だろうが!」


 どっ、と顔を紅潮させた人たちの間で笑いが起きる。

 すると、その笑いの隙間から一人の女性が恥ずかしそうに、小声でカタリに言った。


「あのぅ……す、素敵な詩をどうもありがとう! もし、もしよかったらの話なんですが」


「ええ、なんです?」


「よその国の詩ばかりでなく、この国の詩も詠ってもらえませんか?」


 その瞬間だった。

 カタリの表情がピリリと引きつったのをミアロロは見逃さなかった。まるで恐れていたことが起きたかのように、確かにこわばったのだ。


「おお! そりゃあいい! 姉ちゃん、今日の締めに一曲に頼むよ!」


 そうだ、それがいい、と口々に皆がうなずく。

 しかしカタリは表情をなんとか取り繕って、苦笑いしながら言う。


「……申し訳ありませんが、私は、訪れた当地の詩は詠まないようにしているのです」


「ええ!? なんでだい!?」


「無用な誤解を避けるためです。歴史に正解はありません。だからせめて、自分の土地の歴史のありようは、その土地に住む者の考えが決めること。私の語る外聞はいつでも混乱を招いてきましたから」


「つれないこと言うなよぉ。こっちは客だぞー」


「そうだそうだ! お前の詩に明日の飯代を出してやってんだ! 詠えったら詠え!」


 さっきまでデレデレだった農夫と水夫が畳みかける。

 二人ともかなり酒を呑んでいるようだ。いや、見るからに二人だけではない。

 期待と失望の入り交じった視線が、前から後ろから、果ては上からも集中する。


 ミアロロは何か嫌な予感を覚えた。


「……わかりました。最後の一曲としましょう。ただ、先に断っておきます。決して、決して私の語るすべてが『正解』ではないことを、肝に銘じてください」


「わかったわかった。さ、早く早く」


 急かす農夫にうなずき、カタリは弦を引いた。






 それを聴いた人々は、一様に青ざめた。 


 §


 カタリの読んだ詩の内容はこうだ。


『来世にメシアの来る地』


『その場所に巣食う悪魔の手先の聖絶』と題して行われた、ウァテス教の『トゥールース』への120年前の征伐。


 それは翻せば、肥沃な『トゥールース』という大地を基点にウァテスの布教を行うための〝陣取り〟が目的だったのだ。


 このトゥールースは北に雪解け水の流れてくるノノイ山脈、南には新鮮な魚介類が取れるクランツ海峡と、資源が安定している。


 原住民たちが築き上げた細かな水路のおかげでほとんど水害もなく、治水技術においても優れていた。

 そして悪魔の手先とされたその原住民たちは、一人残らず虐殺をされた。いかにむごく、いかに残酷に葬ることができるかを、自称聖職者たちは競い合い、より多くの『悪魔』を葬ったかでのちの地位が決まったらしい。


 さらに、その時に原住民から略奪された金銀財宝の類は、教帝の一族が未だに隠し財宝として持っているらしい、とまでも。 

 


 詠いきった後、水を打ったかのように静まり返る酒場。

 人々も、店主も、ミアロロも唖然としていた。


 この国において、ウァテス教は国教だ。

 皆、幼い頃から大小なりしも信仰心を持っている。

 それが今、目の前で、美しい声で、在り方を全否定されたようなものなのだ。




「で……っ」



「でたらめを言うな!! 俺たちの先祖がそんなこと考えてやっていたはずがない!!」


「ええ。でたらめなのかも分かりません。けれど、人の歴史とは、往々にして美談よりも闇に葬られた出来事の方が真実である場合が多い。この話も、古い文献を読み解いて分かった歴史の側面の一つです」


 凛としたカタリの声のあと、重い沈黙の帳が下りる。

 彼らがもし敬虔な教徒であったなら、カタリの話など耳も貸さなかっただろう。

 しかし彼らは農夫、水夫、すなわち『市民』だ。


 さほど熱心でもない上に、司祭や教団に税金を献上する立場である。

 人道的凶行。隠し財産。それらは彼らの不信感を煽るのに十分だった。


「それでは、私はこれにて」


 しん、となった酒場の中を、カタリの靴の音だけが響く。呆然となっている人たちはカタリに道を空け、ただ長髪が覆い隠す彼女の背中を見ていることしかできなかった。


 イーハは「やっと終わったか」といったふうにおもむろに身体を起こして、一度大きく伸びをし、カタリの足跡をトテトテとなぞっていった。


「……父上」


 やっと目の焦点があってきたミアロロは後ろを振り向くが。


 そこに、いつの間にか父の姿はなかった。

 先に帰ってしまったのだろうか。あれだけ一人で出歩くなと言っておいて。

 けれどミアロロにとっては好都合だった。

 カタリを追うのに邪魔が入らない、ということだったからだ。 


 §



「カタリッ!」


 左右に家が建ち並ぶ小道で、ミアロロは息を切らしながら叫んだ。

 カタリはそれに気づいてゆっくりと無表情で振り返る。

 月の綺麗な夜だった。まるで出会った日のように。


「さっきの話……本当なの?」


 すがりつくような声色でミアロロが訊く。


 するとカタリは、


「付いてきなさい」


 とつぶやいてマントを翻した。



 着いた場所は古びた宿屋の一室だった。壁に備え付けられたランプが焚かれていて、簡素なベッドと机、そして木造の壁をほの明るく映し出していた。


「ま、そこに座って」


 カタリが指したのはベッドの上だった。

 さすがに子供のミアロロでも、一瞬ドキリとする。


「だぁいじょうぶよぉ。あんたみたいな子供を相手にするほど飢えてないって」


「……。」


 それはそれでショックなミアロロである。 


 ミアロロがおそるおそるベッドに腰掛けると、カタリはその向かい側にある机の椅子に腰掛けた。


「さて、なんだったっけ」


「……さっきの詩のこと」


「おー、そうだ。あれが本当かって? 私が知るはずないだろう」


 この突拍子のない語り口にはいつまでたっても馴れない。


「知らないって、知らないまま詠ってるの!?」


「知るわけないだろうって。今の私が120歳に見える? この目で見てきたわけじゃないものを『知ってる』なんて言ったら嘘つきだ。


――もっとも、知らないものをいかにも知っている風な口で語るのも一種の嘘つきかもしれんがね」


「それって、例の嘘をつけない魔法っていうやつの話? 本当なの、それって?」


「ああ、本当さ」


 カタリは腕を組んで鷹揚に答える。


「私は嘘をつけない。嘘をつくと、綺麗な声が出なくなるんだ。罪悪感とかうしろめたさとか、そういった呪いがかかってしまうから」


「それって、魔法っていうの?」


「私にとって魔法なら、魔法でいいじゃない?」


 ははは、と軽い笑いを放つ。ミアロロは笑えなかった。


「僕は……ずっとウァテスのことを一生懸命勉強してきた……!」


 その一言だけで、カタリはミアロロが何を言いたいのかを察して、真剣な顔になった。


「それが全部間違いだったっていうの……? さっきカタリが詠った詩みたいに、この国の良いことはぜんぶ、ぜんぶぜんぶ、悪い大人たちがでっち上げたものだったの? ひといよそんなの……! 僕、バカみたいじゃないか!」


 ぎゅっと、ミアロロは下を向いて両手でズボンのひざのあたりを握った。

 無理もないだろう。これまで物心ついてから必死に取り組んで勉強してきたものの裏で、そのような真実があったのだ。


「――残念だけどサ、ミアロロくん。真実っていうのは常に残酷な方が正解なんだよ」


 少し間を置いて言いながら、カタリは自分の座る机の引き出しを開けて、何かを取り出した。


「しかし、だからこそ美談が美しい。日常のなにげない冗談が面白い。そして、詩が儚く存在できる。私はそれに依存する人を肯定する。だからこそ他人のそれを壊すようなさっきみたいな真似はしたくなかった」


 おもむろにミアロロの目の前に差し出されたのは、大きな赤い表紙の本だった。

 分厚い日誌のようなサイズの本を開くと、中にはびっしりと黒いインクでケントゥム語が書き殴られていた。手触りからしてかなりの年数が経過した羊皮紙らしい。


「これは……?」


「それは代々、〝カタリ〟の名前を継ぐ人間に伝えられる『真実』が書かれた記録書さ。何の脚色もないからただ読むだけじゃあつまらない。だから私たちカタリは、それに物語いのちを吹き込むために居るんだ」


「え? 『カタリ』はカタリだけじゃないの?」


「ああ。私はその本の記述で行くと、12代目のカタリになるらしい」


「じゃあ、元の名前があるの?」


「……あるよ」


 一瞬あいだを置いて、カタリはいわくありげな笑み浮かべた。


「なんていう名前?」


「ミアロロ」


「……? 僕?」


「いやいや、私の本当の名前。私は元リフガル王国二級司祭、ミアロロ・ヴァレンタインだ」


「えええ!?」


 思わず驚愕する。同じ名前だったのだ。

 ああ、だからか、とミアロロは驚きの裏で合点が行った。

 最初に出会ったとき、カタリは自分の名前を聞いて爆笑した。変な名前だから笑われたとばかり思っていたのだが、裏にそういう理由があったのだ。


「僕、感動したんだ」


「ん?」


「僕さ、もっと、カタリの詩が聴きたいな。それでいつか、カタリみたいな詩を詠ってみたい!」


 ミアロロは、今の素直な気持ちを打ち明けた。

 ウァテス教の幻想が打ち破れて悲しい気持ちもあったが、今のミアロロの胸の内には、さっき酒場で聴いたカタリの美しい歌声が染み着いていたのだ。


「……ふふ。そうか。じゃあ、一緒に旅でもしてみるか?」


「えっ」


 ミアロロは突然の誘いにとまどった。

 今までろくに夜の下町に一人で来たこともないような子供だ。そんな人生で大きな決断など、一瞬でできるはずもない。

 真剣に困った顔をし始めるミアロロに、カタリは茶化すような声色で、


「なーんてね。一緒に旅するにしても、君はまだまだ子供すぎる。――こういうのはどう? 私はもう明日の昼にはここを発つ気でいるんだ。それで、3年後くらいにまたここに来る。それまで、そのカタリの本は君に預けておく」


「うん」


「3年後までに本の内容を完璧に覚えてきてくれたら、一緒に旅に出よう」


「わかった。……わかったけど、父さんや母さんはわかってくれるかな? それに、こんな大事なものを預かっててもいいの?」


「さてね。きっと反対するだろう。そこは君の自由だ。その本に関しては、別に私はそこまでこだわってないよ。すべて頭に入ってるからね」


「……わかった。きっと一緒に行くよ。たとえ司祭になってても」


「ああ。楽しみにしてる」



 二人は屈託のない笑みを浮かべながら、三年後の約束を結んだ。

 それまでベッドで丸くなってその会話を聞いていたイーハは、気だるそうなあくびをして、翡翠色の目を閉じた。



 § 



 今考えれば、カタリはこの時、自分がどうなる運命なのかを予期していたのかもしれない。

 二日後のミアロロは、そう思った。



 §



 翌日、宮廷は朝から騒々しかった。

 朝明けたばかりの時間に宮廷の全員に召集がかかり、宮廷の広場に集められた。

 門前広場の真ん中には、ミアロロの見慣れないものがあった。


 丸い木の輪と手枷がついた木具。そしてその遙か上の方には、いかりのような形をした、大きな鋼鉄の刃がロープで吊してあるのだ。


 ひどく嫌な予感がした。


「静粛に! 静粛に!!」


 上級司祭の老人が厳格な声で叫ぶ。200人は下らないだろう教徒たちはそれで静まった。


「昨夜、同志・ゴルゴダ・シベリウスがこの街で異端者を見つけた。

 怪しい歌声と甘い虚言、さらには偽りの詩でウァテスとリホロ教帝を辱め、下々の者の気を狂わそうとする〝悪魔〟の遣いだ!

 夜通し行われた異端審問会議において、この魔女を処刑することが決定した!」


 ……………――――――。


 ミアロロはその言葉と同時に、多数の信徒に連行されて奥の方から出てきた女を見た。

 そして、何か胸の奥が爪でかきむしられるような焼け付く感覚に襲われた。


「……カタリ?」


 しかし、昨日別れた時とは、その容姿は大きく異なっていた。

 顔中が青い痣だらけになり、女神のようだった美貌が見る影もない。

 艶やかだった髪が無造作に切り落とされている。

 枷がはめられた手の指先から血が滴っている。


 顔は無表情だ。かなり遠目だったのに、ミアロロにははっきり見えた。


 瞬間、ミアロロは駆けだしていた。


 人混みをかき分けかき分け、走る。


 ミアロロの視界から音が消えていた。


 そうしている間にもカタリの首が処刑台に据えられる。


 もう少し、もう少しというところで誰かの足につまづいた。


 自分の目の前にはもう2、3人くらいしかいない。


 手をついて立ち上がろうとした、その時。



「…………!!!!」


 カタリと目が合う。

 そして、その衰弱した顔に最後のふてぶてしい笑みを浮かべると――


「やめろおおおおおおお!!」


 ミアロロの悲痛な叫びは、集まった教徒たちの関の声に遮られ、ミアロロの目の前で――カタリの首が切り飛んだ。


 ミアロロという少年はその日。

 赤い豪奢な本ひとつを持ってウァテスから姿を消した。



 §



 それから何年か月日が流れた同じ日。

 とある荒野のただ中に、一人の金髪碧眼の男と、一人の黒髪黒目の少女と、一匹の黒猫が居た。


 二人は枯れ木に腰掛けていて、一匹はその様子を猫背で座り込んで見守っている。

 やがて、麻の茶色いマントを身にまとった男が、5本の弦が張られた楽器を引く手を止めると、少女は無邪気な笑みを浮かべて拍手をした。


「おじさんすごい!! ねぇねぇ、どうやったらそんなに綺麗な声で詠えるの!?」


 すると男は、


「そうだね。私には、嘘がつけない魔法がかかっているんだよ。これのおかげで私は綺麗な声で詠えるんだ」


「へぇ、不思議だねー!」


 少女の顔は彼女に似ている。若い吟遊詩人はそんなことを思いながら、少女の黒真珠のような瞳を感慨深そうにのぞき込んだ。


「お嬢ちゃん、名前は?」


「あたし? あたしはミアロロ! ミアロロ・シャトー!」


「え、本当に? フフフ、あははははは!」


「ちょ、ちょっとぉ! 人の名前きいただけで笑うなんてシツレイしちゃうわね! おじさんの名前はなんていうのよ!? 笑ってあげるわよ!」


「私の名は『カタリ』。旅の吟遊詩人バードだ。お財布事情はこの格好から察してくれると嬉しいなぁ」



period.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ