人と魔族と獣人と竜と・前
僕とシオンは歩いていた。
キセラさんという人を助けに、南方にある森へ向かっている。
「ねぇ、シオン……」
「何だ?」
「何故、僕を連れていく事にしたの?」
「……アイツは傭兵所のナンバー2なんだよ。もちろん俺が一番だけどな。アイツがやられる程その竜が強いんなら、他のヤツなんて頼りにならねぇ。でも、お前は強いだろ?」
シオンはまだ少年らしさを残す笑顔でそう言った。
「そんな……僕は……そんなに自分が強いとは思わないよ。」
「でもお前は、ナズナと互角に闘りあった。俺、アイツに勝ったことないんだぜ?」
「え……?」
予想だにしない言葉だった。
「だからって俺よりも強いって勘違いするなよ?ナズナはお前と闘っていた時、手加減してたそうだったからな。本気になったアイツは、そりゃもう鬼の様に強いんだぜ。」
「鬼の様にって……」
苦笑混じりにそう答えた。シオンにはそれが呆れた風に見えたんだろう。
「冗談じゃあねぇんだけどなぁ……」
それから僕達は森に入るまで一言も話さなかった。
森に入ると不思議な感じが森中を包んでいるような、そんな感覚がした。
「この森で竜が出たのか……気を引き締めていかねぇとな。」
「そうだね……」
傭兵所で聞いたとおり、集落跡のある場所へと足を運ぶ。
警戒を怠らないようにして。
最近"魔族"と呼ばれる、人間とはまた違う人外の者たちが人々を襲うようになった。
それからというものの、野獣などの動物までもが人間を襲うようになってきた。
それは、魔族の影響だと言われている。
絶滅したはずの竜が出たというのも、魔族が関係しているのだろうか……?
「おい、リア?」
シオンが考え込んでいた僕に声をかけた。僕はハッとして彼の顔を見た。
「あっ……どうしたの、シオン?」
「それはこっちのセリフだ。ボーっとしてんなよ。着いたぜ。」
考えに夢中になって、集落跡に着いた事にも気付かなかったようだ。
「オイオイ、しっかりしてくれよ……」
僕とシオンはこの集落跡ではぐれたと言われたキセラさんを探した。
あまり広くはなかったので、すぐに見つかると思っていたのだが――
「いないね……?」
「ああ…、そうだな……。移動したんだろうな。この周辺を探そう。」
「うん、わかっ……!」
シオンの方を振り返った時だった。
向こう側の木々の内の一つに、こちらに弓矢を向けている影があった。
「シオン!後ろっ!」
シオンは振り向き、背中の大剣を抜いた。
シオンの脇にあった岩石に矢が突き刺さる。
「動くなっ!」
影が叫ぶ。
その影は僕達の目の前に降りてくる。
獣人――人を基としたような獣、人型の獣ともいえる姿をした、人間とは似て異なる者――がそこにいた。
「何者だっ!?お前達は?ここで何をしている!?」
彼は虎の様な毛並みを持っていた。
見た目こそ虎そのものだが、器用に二本足で立ち、人に近い存在だという事がわかる。
「この辺りは我ら獣人の領域!人間は去るがいい!」
「ま、待て。ここかこの辺りで女性を……人間の女を見なかったか?」
「見た……と言ったら?」
「あつかましいとは思うが、教えてほしい。」
「断る、と言ったら……?」
「力ずくでも聞くまでだ!」
シオンは虎の男に向かって駆けた。
男は腰に掛けたナタの様な剣を抜き、シオンの突撃を受け流そうとする。
「甘いぜ!」
シオンは突き出した剣を上に掲げ、そのまま切り下ろすモーションに入る。
「チィッ!!」
男が横に体を滑らせる。
その結果、シオンの剣撃は空振りになる。
「もらったぁ!」
「ナメんなよっ!」
シオンは宙に跳んだ。
剣を支点にし、男に蹴りを食らわせる。
男が吹っ飛ぶ。
すごい。
だけど、こんな闘いは無意味だ。僕にはそう感じられた。僕は無意識に叫んでいた。
「シオン!こんな所で闘っている場合じゃないだろう!?早くキセラさんを見つけなきゃ、いつ竜に襲われるか……」
「竜だと!?お前達、竜について何か知っているのか!?」
僕の言葉にシオンが、男が動きを止めた。二人がこちらを見る。
「え、あ……え〜と……」
言葉に詰まった。するとシオンが口に笑みを浮かべ、男に話し掛けた。
「……ああ、知ってるぜ。どうやら、竜の事を知りたいらしいな。情報交換といかないか?」
「……いいだろう。ついてこい。我ら獣人の村へと案内しよう。」
男は振り返り、木々の中へと入っていく。僕とシオンは、彼の後についていった。
ハイ、後書きです。ここからがこの作品の見せ所……つーか半分を過ぎた所です。全く関係ない話になりますが、俺は絵がド下手です。そんな訳で俺なんかの為に絵を描いてくれる上手い人を募集します!そして俺を励ましてください(!?)最近、泣きそうな状態なんですよ……。精神が不安定というか欠点課題が多いからなんですが……。まあとりあえず絵を描いてやってもいい、という人はメッセージください。でわ。