大いなる力の片鱗
――半月が光る夜。
僕は宿にいた。
ベッドに腰掛けている。
シャワーはもう浴びた。
どうせ明日の朝も浴びるけど。
窓の外を見た。半分だけの月だが十分綺麗だ。僕は物思いに更けていた。
「そういや、薺はシオンと知り合いみたいだったな。それに、シオンはジークの事を何か知っているみたいだった。」
僕はたまに、独り言を言っている時がある。
直そうと思うが、癖なもので中々直らない。
たまに言っている時に他人に横切られると恥ずかしいんだ、これが。
「明日の為にもう寝ようかな……」
僕はベッドに横たわった。……寝付けん!
「むぅ〜、どうしたものかなぁ……」
しばらく考えた結果、夜の街をうろつくことにした。
宿の外に出るとヒヤリ、とした冷たい風が肌に当たった。
僕は部屋から持ってきた毛皮のコートを纏った。
「まずは……何処に行こうかな?」
僕は行くあてもなく夜の街をさまよった。
・・・・・そして今、僕は裏路地にて大柄の男たちにからまれている。情けない事に。
「よぅ、ボウズ。こんな所で何してんだぁ?ん?嬢チャンか?」
「いんや、男だろ?確かにわかんねぇなぁ。」
こいつら、確か夕方にパン屋の前でもめていたか奴らだ!かなり酔っているみたいであっちは気付いてないみたいだが。
僕がどう対処しようかと考えていると、彼らの後ろから一つの人影が近づいてきた。
「そんなことはどっちでもいい。もとがこれだけ良ければ、人売りも高い金を出すだろうさ。」
長身の、眼鏡をかけた男だった。目付きの悪い、いかにも頭のキレそうな悪者っていう感じの人だ。
「おい、皆出てこい。このガキ、捕まえるぞ。」
路地の間からワラワラと男たちが出てくる。数は二、三十人といったところか。
これは多いな。
とりあえず、場所を変えなくては。
こんなにも狭いと剣を振り回すことだって出来やしない。
そう結論づけ、僕は振り返り脱兎のごとく駆け出した。――が。
「おいおい。逃げさせやしないぜぇ?」
その方向にも、男たちはいた。――マズイ、と心の中で毒づく。
左右は壁、前後は僕を捕まえようとする男たち。逃げ道は無い。
《まったく、情けない事だ。こんな者たちに手間取らされるとは。》
そんな時、頭の中に話し掛けてくるような感覚がよぎった。すごく気分が悪くなった。目の前がふらつく。
「お、おいっ……!」
なんだろう?周りの男たちがざわついている。
ゴキ、グキリという変な音が聞こえる。
体が熱い。意識がどんどん薄れていく。
モウ何モ、考エラレナク……ナッテキタ……!?
「コイツは……!?」
プツリ、と意識が途切れた。
「グオオォォォォォッ!!」
それに取って代わるように、化け物のような叫び声がこだました。
――次の朝、この街の路地裏にて数十人の死体が発見された。
それらには全て、剣傷が付けられていた。
今回は短めだにゃ〜。そりゃ授業中にやってたらなぁ〜。それにしてもこの作品、みんなにちゃんと読まれてるのかと心配になってきた。いよっし、もっと有名になる為ガンバルぞー!