お前はオレのライバルだ! その1
次の日の朝、オレは教室に入るや否やまっすぐ実の席に向った。
実は毎朝7時30分には学校に来て勉強するという素晴らしい習慣がある。今日もこいつは数学の問題集を広げて勉強していた。
「実~」
オレが実に抱きつこうとすると、「死ね。」という実の言葉と共にゴンとどこからか音がする。
ん?なんか頭が痛いぞ。しかも、だんだん意識が遠くなっていく・・・・
そこはお花畑だった。
『うはは~、ジョセフィ~ヌ~』
『わおーん』
愛し合うオレ達はお花畑の中で仲睦まじく過ごす。
ああ、なんて幸せな日々なんだ。もう、死んだって後悔しないぞ。
「いい加減に起きろ、バカが。」
べし!という音と共に急速に世界がゆがむ。
『ジョセフィーヌ―』
オレは必死にジョセフィーヌの方に手を伸ばす。
ジョセフィーヌも必死になってオレの方に向かってくる。
そして・・・
がぶり
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「うるさい。」
バコンと頭を殴られる。
そこでようやく我に返った。
「は!ここはどこ?オレは誰だ?」
辺りを見回すが、全く覚えのない部屋だ。しかもなぜかベットの上にいる。
「いい加減にしろ。ここは保健室だよ。全く、たかが広辞苑の角に当たった位で気絶しやがって。」
なんか今、さらっと恐ろしいことを聞いた気がするんだが・・・・
「あ、思い出した。」
そうそう。俺の名前は小杉捺矢、17歳。我が愛しのジョセフィーヌの彼氏で・・・
「そうだ、実!オレ、お前に話があったんだよ。なのに途中で意識が無くなって・・・」
あれ?一体どうなったんだ。なんか、さっきから頭のてっぺんが痛い気がするんだが。
「・・・・・多分、寝不足じゃないのか。急に意識をなくしたんだよ、お前は。今は昼休みだ。」
「昼休み!?そんなに寝てたのか。」
オレが意識を失う寸前までの時間は確か8時。んで、昼休みは12時30分から始まるから4時間30分も寝ていたのか。おかしいな。昨日は10時に寝て、6時に寝るという8時間睡眠をとったのに。どっか体長でも崩したのか?
「それで。お前の話って何なんだ?」
おお!いかん。忘れるところだった。
オレは実に昨日の出来事を包み隠さず話したのだった。
「お前、脳ミソに蛆でも湧いてるんじゃないのか?」
話し終えた後、実は大きくため息をつきながら酷いことをいいやがった。
「なんでそうなるんだよ。いくらオレでも傷つくぞ。」
だが、実は冷たい眼でオレを睨む。ちょっ!なんか無茶苦茶怖いんですけど。
「わざわざ自業自得で怪我をしたお前をわざわざ家にまで招いて、しかも介抱までしてくれた人に対する言葉が『認めんぞー』って・・・誰がどう考えてもお前の頭に蛆が湧いているとしか思えん。」
地の底からはいずるような声ってこういうのを言うんだなぁ。オレ、初めて知ったわ。
そうだよ、そうだよ。さすがにオレも悪かったなーって反省してるよ。
うう・・・色々反論したいのに言ってることは正しいから反論できない。
「病院行って、その腐りきった脳でも見てもらえ。」
もっとも、手遅れだろうがな。という余計なひと言付き。
「うるせーよ!反省してるよ、ちゃんと。」
そうとも、いくらジョセフィーヌを取り合うライバルだからと言って、仮にも手当てをし、お茶を出してくれた恩人に礼を言うどころか、訳の分らん叫びをあげて飛び出して行くなんて・・・人としてどうなんだと思う。
・・・なんか、自分で考えてて悲しくなってきたぞ。
そう言えば、それ以前にオレは彼女にどう思われたんだ?うわ!変人とか思われたらどうしよう。
「むしろ、恩知らずのサイテー男と思われたかもな。」
実の冷たい言葉が胸に突き刺さる。
いかん。それはいかん。このままではよくない。
ということで、オレは放課後、もう一度彼女の家を訪ねることを決意したのだった。
登場人物のまとめ
主人公:小杉捺矢・・・難関高校日向学院2年生。顔はいい。
頭も一応良い(学年では上位にいる)
ツッコミ:内藤実・・・捺矢と同じクラス。腹黒。
ヒロイン?:ジョセフィーヌ(ジョン)・・・コリー犬。オス
飼い主:加藤香澄・・・16歳
いつかちゃんとした登場人物?のページを作るかも。