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お正月だよ 2010

とてつもなく古いです。しかし、友人が読みたいというのでupしておきます。

暇つぶしにどうぞ。

ちなみに、この年はトラ年でした


 それは、2010年1月1日のことであった。


 新年を迎え、俺は恋人である香澄ちゃんに挨拶&初詣をすべく、彼女との待ち合わせ場所の公園にいた。

「おい、捺矢。」

 聞き覚えのある声に名前を呼ばれて振り返ると・・・

 げ!新年早々嫌な顔を見ちまったぜ。よーし、見なかったことに……

「誰の顔を嫌だって?」

 多分きっと親友の内藤実君がうすら笑いを浮かべながらオレの頬を引っ張る。

「ふへぇ・・・ふひゃ・・・・・・ふぁ!」

「何言ってるか全くわからん。」

 おしゃる通りです。自分でもわからん。じゃなくて!つーか、いい加減手を離せ!!

 オレは何とか奴の手から逃げると、思いっきり睨みつけた。

「ふざけんな!新年早々、人の顔、引っ張ってんじゃねぇよ!!」

 そもそも、なんでこいつがここにいるんだよ。オレはここで香澄ちゃんとデート……じゃなくて!いや、まぁ、違わないけど……もう、なんでもいい!とにかく、香澄ちゃんと二人っきりで初詣に行く予定なんだぞ!いや、待てよ。二人で行くわけだからやっぱりデートになるの…

「ならないぞ。」

 っなんでお前がそんなことわかるんだよ。そもそも、オレの考えていることが何故わかる!

「なぜなら俺も同行するからだ。」

「ふーん、そうなんだ。」


 ・・・・・へ?今、なんとおしゃりました?


「孝道おじさん・・・つまり香澄の父親に彼女の護衛を頼まれた。」

「・・・・・・・って、護衛ってなんだよ!!ふざけんなよ、お前!」

 オレと香澄ちゃんの貴重な時間を・・・・許さん!

「そんなこと言ってもな・・・俺としてもお前なんぞを紹介した責任があるからな。まぁ、何もないことはわかってるが。」

 そこで言葉を切ると実はにやりと笑う。嫌な予感がする・・・こいつが笑っていいことがあったためしがない。

「それに、まだ、キス止まりなんだろ。」

 それは確認と言うよりも確信だった。

 ああ、そうだよ、そうだよ。悪いかよ。キス止まりでも良いだろうが!まだ、オレたちは高校生だぞ!そりゃ、オレだって男だし、あんなことやこんなことはしたいけどさ・・・したいけどさぁああああああああああ。


「あんなことやこんなことって?」


 またしても、聞き覚えのある優しげなソプラノの声にドキッとなった。

 うーん、まさか、聞かれてた・・・・?

 オレは恐る恐る後ろを振り返って固まる。そこには衝撃的な生き物がいたのだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・香澄ちゃん?」

「は、はい!あ、あの、あけましておめでとうございます。」

 ああ、今日も君の笑顔はオレを癒してくれるよ~

 ・・・・いや、そうじゃなくて! 

「ああ・・・うん・・・あけましておめでとうございます。」

 動揺しまくるオレとは対象に実の奴は涼しい顔で挨拶をする。

 ちょっとまて、このことに誰も突っ込まないのか?俺だけか?俺だけ気になってるのか?

「か・・・香澄ちゃん?」

「は、はい!」

 うわぁー、顔が真っ赤。今年もかわいいなぁ、香澄ちゃんは。じゃなくて!

「そ、その服は一体・・・」

「似合いませんか?」

 不安そうに尋ねる香澄ちゃん。いや、似合うか似合わないかっていうと超萌えというかなんていうか・・・もう、サイコーですとしか言いようがないんですけどさ・・・・・・ないんですけどね。でも、新年早々、その格好は・・・恋人としてどうかなぁと思うわけで。

「す、すみません。捺矢君を驚かせようと思ったんですけど・・・」

「いや、うん、驚いたよ。今日はお正月じゃなくてエイプリルフールなんじゃないかな?とか思わず疑ったくらい驚いた。」

「どこか、変ですか?」

 不安げな表情に軽く首をかしげるその可愛さ。やべぇ、鼻血出そう・・・いや、しかし、その格好はちょっと・・・・

「いや。どこも変じゃないが。」

 って!実!!貴様、何ほざいてんだ!お前、まさかそっちの趣味があったのか!?

 それとも、オレか?オレがおかしいのか?

 だってこれだよ!かわいい恋人が初詣に寅のコスプレしてんだよ。ちゃんとトラ耳&尻尾付けて、手にはトラの手の手袋はめて(しかも肉球付き)靴も(靴っていうのかいまいちわからんが)寅の足の形をしたものを履いている。

 例えて言うなら、寅が人間の美女に変身した姿って感じだ。

「やっぱり、似合いませんでしたか・・・?」

 落ち込む香澄ちゃんにオレは慌てて諸々の言いたいことを押し込める。

「そんなことないよ!あんまりにも可愛過ぎてうまく言葉が出なかっただけ。」

 これは一応本当だ。ウソはついてない。ただ、言葉が出なかった理由が他にもあるだけで。

 実が驚いてないってことはこれはこの一族にとって普通なのか?というか、もしかしてこれを突っ込みたがってるオレの方が変なのか?いや、オレが変なのは昔からって何言わせるんだよ!

「ほんとですか!よかった。思い切っておしゃれして。」

 嬉しそうに香澄ちゃんは笑う。それがまた可愛い。

 いやいや、おしゃれってこれが?この寅のコスプレがおしゃれ?う~ん、女の子の神秘だな。

「しまったな。俺もその姿でこればよかった。」

 は?何気持ちの悪いこと言ってんの・・・うげ!思わず想像しちまったじゃねぇか・・・・・・・

「ちょっと待ってろ。今、着替える。」

 はい?今?どこで?

 オレはわけがわからず、実の方に目をやると・・・

「・・・・ぷ・・・・・・・ぷははははははははは!」

 やべー、腹痛てぇ。

「何がおかしい?」

 真顔で尋ねる実にオレは腹を抱えて笑い続けながら答える。

「だって、そりゃお前、なんでトラのきぐるみなんて着てんだよ!」

 そう、実の奴はなぜかトラのきぐるみを着ていたのだ。しかも、口の部分から顔が出てるやつ。

「これが、一応正装なんだが。」

 お前らの一族、なんか間違ってないか?

「なんか、色々間違ってる気がしないでもないけど、とにかく初詣に行こうか。」

「はい!」

 にっこりと笑う香澄ちゃんにオレは手を繋ぐ。

「あ、あの・・・捺矢。」

「何?」

「まだ、新年のキスをしてもらってないんですが・・・・」

 ぷはぁー!!

 ちょ、ちょっとまて!なんか鼻から赤い液体が出てくるんですけど!

 夢か?これは夢か!?いや、でも、香澄ちゃんがオレを見上げながら瞳をうるわせている。

 ちょっと、これは我慢できない・・・・

 男捺矢。ありがたくこの状況、食べさせていただきます!

 オレはがっしりと香澄ちゃんの肩を掴む。香澄ちゃんはそっと目を閉じた。俺も目を閉じ、ゆっくりと彼女のものにオレのものを近付ける。


ガブリ


 ふぅ。またか・・・なんかいつも以上に痛い気がするんだが・・・・

 オレは覚悟を決めて痛みのする右足を見た。

「・・・・・へ?はい?」

 オレは一度目を空にやり、再び見る。その後も、目をこすったり頭を叩いたりしたが、その光景は変わらない。

「こら!ジョン。ダメでしょ!!早く捺矢君から離れなさい!!」

 慌てた口調で香澄ちゃんがその生き物をオレから引き離そうとする。

 ちょっと待て。これがジョン?

 どこからどう見ても、この生き物の体は黄色の地に黒の横じまがある上に、体長はゆうに2mはあるように見えるんですが・・・・

「ダメでしょ。ジョン!」

 なんか、今にも食ってやる的な目でオレを見てるんですけど・・・・

「ちょっと待て!これはさすがにおかしいだろ!なんでトラなんだよ。いくら今年が寅年だからってこれはおかしいだろ!!」

 だが、二人はきょとんとした顔でオレを見る。ちょっと待て。今のはどう考えてもまともな意見だよな?なんでそんな不思議そうな顔をしてるんだ?

「何言ってるんだ?犬がトラになるのは普通だろ。」

 ちょっと待てよ、優等生。どう考えてもそれはおかしいだろ。だいたい、トラってネコ科だろ。犬がネコ科の生き物になったら怖いだろ。

「新年早々、ついに頭が壊れたか・・・いや、もともと壊れてたな。」

 ちょっと待て!何、さりげなくさらっとひどいこと言ってるんだよ。

「そうだよ、捺矢君。犬がトラになるのは普通だよ。」

 ちょ、香澄ちゃんまで何言ってんの!?ん?ちょっと、ジョセフィーヌさん。なんか獲物を狙う目で僕を見てません?

「ガウ!」

 ああ、これがこいつの鳴き声か・・・とか考えてるうちにジョンの体が宙を舞い、オレに向かってくる。

 グッバイ!オレの人生。ああ、せめて香澄ちゃんとあんなことやこんなことをしてから死にたかった・・・・

 そして、目の前が暗くなり・・・・

「起きろ!馬鹿兄貴!!」

 ぐふぁ!

 オレの上に誰かが乗る。くそ、ジョン・・・重い・・・・

「誰がジョンよ!寝ボケないでよ、兄さん。」

 ん?この声は・・・

「咲・・・」

「やっと目が覚めたのね。全く、もう。早く着替えなさいよ。もう、お父さんたちは起きて下で待ってるよ。」

 今年も可愛げのかけらもない妹咲はそれだけ言うとさっさと部屋から出ていく。

「ここは・・・・」

 あたりを見回すとそこはオレの部屋だった。

 そうだ。そういえば寝る前に・・・・

 オレは携帯をつかむと新年を迎えてすぐに送られてきたメールを開く。

『あけましておめでとうございます。今年も捺矢君にとって幸せな年になるよう、一生懸命頑張ります。』

 その文章の下にはトラの格好をさせられどこか不機嫌そうなジョンと寅耳をつけて恥ずかしそうに微笑む香澄ちゃんが映っている。

「これのせいか・・・・」

 だから、新年早々、あんな夢を見たわけだ。

 最後はひどい目にあったが、でも、ま、あんな積極的な香澄ちゃんを新年早々見れたからよしとしよう。しかも、君付けじゃなかったし。・・・最後だけだが。

「捺矢!まだなの?」

 下から母親がオレを呼ぶ声がする。

 オレは送られてきた写真を保存すると服に着替えて下に降りる。

 そうだ。あとで香澄に電話をしよう。夢の通りにはならないだろうが、一緒に初詣のお誘いをしよう。

 自然に笑みが浮かんでくるのを抑えられない。

 今年も良い年になりそうだ。ジョンに噛まれなければ・・・・・



まさかの夢落ち

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