それでもオレはめげないぜ! その1
「はぁー」
景気の悪いため息をつきながら、オレはとぼとぼと自転車を押しながら土手を歩く。
「自転車があるなら乗って帰れよ。」と実につっこまれたが、とても今日はそんな気分じゃない。
「ジョセフィーヌ・・・」
ああ、あの柔らかな肉体に触れて、心ゆくまで抱きしめ、撫でまわしたい。
そして、あの鋭い歯でオレに噛みついて欲しい。
『そこまで行くと最早変態だな』とかほざく実の声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
うん。きっと気のせいだ。なぜなら、オレは変態じゃないから!
・・・なんか、物悲しくなってきたのは気のせいか?
「わん、わん!」
どこからか犬の鳴き声が聞こえる。
そう言えば、ジョセフィーヌもあんな風に毎日鳴いていたなぁ。
ああ。あの楽しかった日々は一体どこへ行ってしまったのか?
思い出すと目から汗が出てくるぜ!
「あはは!くすぐったいよ、ジョン。」
女の楽しげな悲鳴と共に再び、ジョセフィーヌに似た犬の鳴き声が聞こえてくる。
ケ!なにが『ジョン』だ。バカらしい。
オレはなんとなく声のする方を見た。
そして、その姿を視界に入れた瞬間、体がまるで金縛りにあったかのように動かなくなった。
そこにいたのは・・・
「ジョ、ジョ、ジョセフィーヌ!!」
オレは自転車を放り投げるとジョセフィーヌのもとへ走り出した。
きっと、今オレはお花畑を飛ぶように歩いているのだろう。
今のオレに不可能という言葉はないぜ!
「ジョセフィ~ヌ。」
オレの声に気付いたのか、ジョセフィーヌはオレの方を振り返った。そして、オレに向かって走ってくる。
「わぉ~ん」
やはり、愛し合う二人の間に障害など無い!
一度は別れることになったが、愛の力により再び出会い、そしてキ・・・
がぶり
がぶり・・・?なんか嫌な予感がするぞ。
オレは恐る恐る、痛みを感じる左手を見ると・・・・
うわーい!見事にジョセフィーヌの小さくてかわいらしい口の中にオレの手があるぜ。
さぁ、みなさんご一緒に!
「○△□※〒◇☆♂♀#!!」
オレは、2度目の声にはならない叫びをあげたのだった。
今日も、主人公はジョセフーヌに噛まれてます。