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一目ボレ ~オレと『彼女』の奮闘記~  作者: 亜里沙
番外編2~『ボク』と『あいつ』の戦闘日記~
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『ボク』と『あいつ』の出会い

ジョン視点の話です。

ある日のジョンの回想です。


「ジョン!てめぇ、いい加減にしろよ!」


 ボクに噛まれた右腕を抑えながら青年が睨みつけてくる。


「ジョン・・・・お座り。」


 ボクの愛する飼い主が悲しそうな顔で命令する。そんな顔、しないで欲しい。


 仕方がないので、それに従うことにする。すると、ご主人様はボクの首に紐をつけ、あろうことかそのまま外に繋いだのだ!


「わん!わん!」


 必至で中に入れてもらおうと吠えるが、ドアは一向に開かない。


 代わりに聞こえてくるのは、ご主人様があの変態ヤローに謝罪する言葉だった。


『本当に、いつもごめんなさい。捺矢君。』


『いや!いつものことだしさ。それに香澄ちゃんが悪いわけじゃないんだから。頼むから、そんな顔しないでくれ。香澄ちゃんは笑っている顔の方がよく似合ってるんだからさ。』


 いけない!このままではご主人様があの変態の餌食になってしまう。何とかして助けねば!


 しかし、どんなに引っ張っても紐は切れない。家の中から、二人が仲良く会話をしている声が聞こえる。

 

 許すまじ、小杉捺矢!!


 何とかしてご主人様を救わねば。ご主人様を助けれるのはこの世でボクだけだ!


 そこで、紐に噛みつき、切ろうとする。が、なかなか硬くて切れない。


 前科があったせいか、どうやらさらに頑丈なものにしたみたい…


 一体、どうしてこうなったんだろう?


 ボクは紐を噛みながら過去に思いを馳せた。














 もう、親兄弟の顔なんて覚えていない。ただ、気がついたらペットショップのガラスケースの中にいた。


 そして、あの日、あの時、すべてが始まった。あいつはボクの目の前に現れて・・・・


「か、かわゆ~い!」


 そして、目を丸くするボクに向かって突っ込んできた。


「うおう!この毛並み、この柔らかさ・・・何て素晴らしいんだ!」


 あろうことか奴は、この美しい毛並みにすりすりしてきた。


 あの時全身に走った悪寒は、今でも思い出せる。そして奴は、ボクが茫然としているのをいいことに、ひたすら愛撫してくる。


 はっきり言って、ヤローにやられても全然気持ち良くない。


「よし、決めた!お前は今日からジョセフィ―ヌだ。」


 笑顔で見つめてくるこいつとは対照的に、ボクの顔はショックで固まっていたと思う。


 その名前が女性名だということくらいは、生後数か月の子犬でも知っている。


 一応念のために言わせてもらうなら、ボクはれっきとしたオス犬だ。決して、決してメス犬なんかじゃない。


「お金が貯まったら一緒に二人の愛の巣へ行こうな。」


 こいつ、大丈夫か?なんか、目がうっとりしている気がする。


 とりあえず身の危険を感じ、こいつの右手に向かって大きく口を開け・・・


ガブリ


「*@&%$?¥!〒…」


 声にならない変態の悲鳴が店内に響いた。


 フンと鼻を鳴らし、軽やかに地面に降りる。そして、思いっきりあいつの足に向かってボクのものをかけてやった。


 再び奴が悲鳴を上げていたが知ったことではない。ボクをメス扱いした罰だ。


 これが天敵、小杉捺矢こすぎとしやとの最初の出会いであり、戦いのコングが鳴り響いた瞬間であった。



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