壁は壊せば通れる その2
「捺矢君は本当に優しいですね。私のことを訴えてもいいのにそんなコトせずにいつも笑って許してくれて・・・・」
ご飯を食べ終わって一息ついていた時、香澄ちゃんが口を開いた。
「訴えるって・・・そんなことするわけないじゃん。大体怪我って言ったってたいしたものじゃないし。それにジョンに噛まれるのは毎度のことだから、全然気にして無いよ。」
ああ、本当に気にして無いさ。ただし、毎度毎度良い所で邪魔されるのには気にしてるけどな。
ちなみにうわさのジョンは罰として庭の犬小屋に鎖で繋がれて放置されている。ザマ―ミロだ!
そっと香澄ちゃんが巻いてくれた包帯に触れる。毎度毎度怪我したオレの手当てをしてくれるためか、彼女の包帯巻の技術は格段に上がっている。
だんだんオレの心も落ちついてきた。その時、ふとジョンの気持ちが理解できたような気がした。
「オレさ、なんとなくだけどジョンの気持ちがわかる気がする。」
え?と驚く香澄ちゃんにオレは話を続ける。
「あいつも男だからさ。やっぱり好きな女の子を別の男に盗られて嫉妬してるんだと思うよ。」
まぁ、だからと言って奴には絶対に香澄ちゃんを渡さんが。
とその時、香澄ちゃんの愛らしい瞳からぽろぽろと雫がこぼれ落ちる。
「・・・私、ずっと不安だったんです。」
「か、香澄ちゃん?」
「捺矢君がそのうち私のこと、愛そうつかしちゃうんじゃないかって。」
「・・・・・はいーーーー!!」
な、な、ちょ、ちょっと待ってくれ!!オレが何するって?
「いや、ありえないから。まぁ、その逆ならあるかもしれないけど・・・」
うわぁー自分で言っといて悲しくなってきたー
でも本当だしなー香澄ちゃんもよくオレみたいな奴を見捨てないで今も付き合ってくれるよ。
「だ・・・だって、いつもいつも私のせいで怪我させちゃって・・・」
いやいやいや、あれは香澄ちゃんのせいじゃないから。全部ジョンのせいだから。
ああ、でも、そんな事、気にしてくれてたんだなぁー。やっぱ、香澄ちゃんは優しくて可愛い。
うわぁー、口元が自然とゆるむぞ。
「わ、笑い事じゃないです!」
本当に不安なんですよ!と涙目で頬を膨らませる姿もまた可愛い。
あんまりにも可愛過ぎて写真に撮りたいと思ってしまった。
香澄ちゃんが不安になるんだったら何度だって言ってやる。
「断言するけど、それは絶対にないから。まぁ、前も言った気がするけどさ。」
だが、まだ彼女の顔から『不安』が取り除かれていない。
これはよろしくない。オレはこんな顔よりも(この顔も可愛いけど)笑っている顔の方が好きだ。
だからオレは想いを言葉にする。少しでも彼女の笑顔が見えるように。
「当然だろ?だってオレは香澄に惚れてるんだからさ。絶対にオレが君を嫌うことなんてないよ。」
あれ?正直にオレの気持ちを言っただけなのに、なんか香澄の顔が赤くなってるぞ。
何故だ?なんか変なこと言ったか?
「あ、あの、わ、わたひ、の、の、飲み物、持ってきます。」
え?ちょっと待って!!ていうか、なんか挙動不審になってるよ。
彼女はよっぽど慌てていたのか、立ち上がろうとして失敗し、バランスを崩した彼女の体が倒れる。
オレはとっさに彼女を抱きしめ、自分の体を下にした―――――――
長いのでここで切ります。
次回でこの話は終わりです。
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