意外な真実 その1
「ごめんなさい・・・本当にごめんなさい。」
涙目で何度も頭を下げる香澄ちゃんをオレは慌てて止めた。
「気にしなくていいよ。オレってさ、結構頑丈なんだよね。」
半分本当で半分嘘だけどね。
直りかけていたはずの左手はジョセフィーヌに再び(しかも今度は前回よりさらに深く)噛まれたため、仕方がなく病院に行った。
「あら、君だけ犬に噛まれたの?そりゃまた、災難だったわねぇ~」
どこぞのおばさんみたいなお医者様は豪快に笑うと、オレに全治2週間との診断を言い渡した。
んで、現在、病院の帰り道の途中。オレ、実、香澄ちゃんの3人で並んで歩いていた。
「その通りだ。気にする必要なんてない。全てこいつが悪い。」
そう言いながら、このイケメン腹黒メガネは優しく・・・そう、誰がどう見ても優しく、まるで恋人に対してするかのように香澄ちゃんの肩に手を置きやがった。
「おい!」
てめー!誰の許可を得て、香澄ちゃんに触ってやがる!
だが、実は悪びれる様子もなく、逆にオレを睨みつけてきた。
「全く、覗き見とはいい趣味をしている。」
別にそんなんじゃねぇよ!と言おうとしてやめた。なぜなら、このメガネヤローがニヤリと笑うのが見えたからだ。
もう、それだけで大体のことが想像できた。
最初から全部、こいつが仕組んでいやがったんだ。
くそー!このヤロー。オレが慌てる姿が見たかったんだな!
・・・・ん?なんで、実はオレが慌てる姿を見たかったんだ?そもそも、こいつは何のためにこんなことをしたんだ。
だが、香澄ちゃんの言葉に遮られ、これ以上は考えることができなかった。
「違うよ。私、ジョンの主人なのに・・・いつも小杉さんに怪我させて。小杉さんに噛みつこうとするジョンをいつも止めれなくて・・・」
ついに香澄ちゃんの瞳からポロポロと透明な雫がこぼれ落ちるのが見えた。
それを見て、なんだかもったいないような気がするのはなんでだ?
まぁ、いい。
オレは一応包帯は巻いてあるが使用可能な左手で彼女の雫を拭ってやる。
「泣かないで。別に香澄ちゃんは何にも悪くないよ。」
そうだ。悪いのは実と『ジョン』の方だ。
「それにさ、オレの利き手は左なんだ。だから、右手が怪我したくらいじゃ、日常生活に何の問題もないんだよ。」
少しでも笑って欲しくて、おどけた口調で言う。
まぁ、利き手の話も半分本当で半分嘘なんだがな。なぜかよく驚かれるが、実は両利きなのだ。ただ、小さいころから適当に利き手を変えて使っていたため、自分の本来の聞き手が何なのか、よく知らないのだ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「でも・・・・」
まだ、何か言おうとする香澄ちゃんにオレは微笑んで言葉を紡ぐ。
少しでも、彼女の心が軽くなるように・・・・
「オレさ、香澄ちゃんが好きなんだ。だから、泣いてる顔もカワイイけど、笑ってる顔の方がもっといいよ。」
この話は長いので、ここで切ります。
さて、ようやくまともな恋愛話しになってきたでしょうか?
彼らの運命はいかに!?
それは次のお楽しみで(笑)