表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い色は何の色か  作者: 香枝ゆき
第8章 理性と本能
77/81

9ー3 殺したいほど愛してる

ちゃんと小原は生きてて、私は死んでる?

これを書いたらすぐに、小原の家に手紙を送る予定です。一通は家族あて(私が生きて、小原が死んでいたとき用)。もう一通は、この手紙だけれど、小原団あて。

※もし、小原団以外の人が見ていたら、正しい相手に渡すか、破棄してください。表に親展と書いたので、ちゃんと届いているとは思いますが。


……はい、この手紙は、小原が生きてて、私が死んでいるっていう状況で読まれているはずです。

というか、そうじゃないと困る。

万が一の時、何が起きたのかを伝えるために家族宛の手紙を書いたけれど、あれを笑い飛ばして見てくれないと困る。


今ごろは、ちゃんと私は死んでいるはず。だけど、生きてるときに謎な行動ばっかりして、迷惑をめちゃめちゃかけたと思う。混乱もさせたと思う。

それはどうしてか、今まで言えなかったことを、言おうと思います。



私は小原を殺したい。

……ヤンデレに聞こえるね、冷静に考えたら。

ただ、これは本能です。

どうも母方が人外で、吸血鬼みたいで。

私はその血を引いていて、今年のうちには血を吸わないと死ぬらしい、と。

で、ふざけたことには、一人前になるためには1度人を殺さなきゃいけないんだって。

しかもその相手は、仲いい人じゃないとダメなんだって!

なんだその設定は、って突っ込みたかった。実際突っ込んだんだけど、嘘じゃなかった。

冗談だったらよかったのに。


端的にいうと、私は小原の血が欲しくなりました。

つまり、殺したくなった。

理屈じゃないんだ、残念ながら。

一応補足しておくと、殺したいほど憎かったっていうわけじゃないよ?

そんな計算しててもぶっ飛ぶほど、特定の誰かを殺したくなる。

連続殺人事件が起きた頃からこの症状が出て来て、小原と一緒にいるのが辛くなった。

傷つけたくて、どうしようもなかった。

(ちなみに、連続殺人は、私を一人前の吸血鬼にしようと考えてる吸血鬼仲間?が仕組んだものです。今日、青柳さんに斬りかかっていた女の子。

信じてくれないかもしれないけれど、伝えるだけは伝えたかったから)



お腹がすいて、小原の血が欲しくてたまらなかった。

一緒にいられないと思った。離れてたら大丈夫かと思って、突き放したりした。

いまさらだけど、ひどいことたくさんいって、ごめんね。



小原は優しいからね。ここで優しくないとかいうなよ?

行き帰り一緒にしてもらったり、休んでたときのノートをとってくれたり、孤立してたらお昼一緒に食べたり、庇ってくれたり。

クラスの東村くんが殺されたとき。

他校の人にリンチされたとき。

難しい状況だったときに、小原は手を差しのべてくれた。

いつも私を助けてくれて、小原は、優しいから。

私が吸血鬼だってことを伝えたら、血を吸えとか万が一言われたら(もちろんそんなこといわないことを願ってるけど)

私はきっと我慢できない。

我慢できずに、小原を殺してしまう。

いろいろな方法を考えたり、話を聞いてみたんだけど、やっぱり私は人間としてずっと生きることは無理みたい。


選べたらよかった。そうしたら、死刑囚でも最低最悪なやつでも、遠慮することなく吸ってやるのに。そうしたら、罪悪感なんて感じないのに。

そう考えたこともあった。



でも、やっぱり私は、人間として生きて、死のうと思います。

小原は私を人殺しじゃないと信じてくれた。

もし、最初の一人を選ぶことができて、誰かを殺すことが可能だったとしても、私は殺人者になってしまうから。

人間の顔をして小原の隣にいることはできないと思うから。



それになにより、小原を殺したくはない。

死んでほしくない。

迷惑をかけないためにも、一人で終わらせる。

そう考えてたのに、結果的に姫島くんや、青柳さんを危険な目にあわせた。

私が人間としてどうにかして生きようって逃げていたから、仲間は業を煮やして、私の身の回りで連続殺人を起こした。

大切な友達、大切な後輩だったのに。なにもわるくないのに傷つけた。

一人で終わらせるって思いながら。死ぬのが怖かった。だって一刻もはやく私が死ねば、被害は、もっと防げたはず。

できなかったのは、楽しい日を引き伸ばしていたかった。ただそれだけ。

二人や、連続殺人の被害者に、本当に申し訳なくて。

実は今でも死にたくなくて、私は未練たっぷりなんだ。

臆病で笑えるね。



でも、もう今日あたりで死ねるから。

これで誰にも迷惑はかけない。

……なのに、最後に小原に会いたくなった。

本当に、どうしようもなくて。電話をかけた。

夜中の呼び出しなのに、きてくれるっていって、ありがとう。

これから、私は私のなかの本能を制御する。だけど一旦飲まれたら、危険にさらすと思う。

会いたかったのは私のわがまま。

無意識のうちに殺したいから会いたいのかな、よくわからないや。



下手して、傷つけてしまったら、本当にごめん。

わけがわからない部活の同期でごめん。

変なことに巻き込んで、謝るしかない。


私は小原を殺したい。

この気持ちを消せなくて、本当に、ごめんなさい。


私は小原を殺したい。

けれど、死んでほしくない。

この気持ちは、嘘じゃない。


会いたいっていう最後のわがままを聞いてくれてありがとう。

今。とても嬉しい。これで怖さもだいぶましになった。

会ってちゃんと言えなかったらいやだから、ここで伝えるね。


今まで、ありがとう。

さよなら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ