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赤い色は何の色か  作者: 香枝ゆき
第8章 理性と本能
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9ー2 小原さま

拝啓

生きていますか?それとも、宛先主は死んでいて、これは家族のかたが見ていますか?

団くんが生きていたら、私、鮮美深紅は吸血鬼として一人前になれず、死んだのだと思います。もし団くんが死んでいたら、私は彼を殺したのでしょう。

これはどうか、読まれないことを、願っています。



私の母は吸血鬼、父は人間です。

ハーフということで、両親は私を人間として育てようとしましたが、血には抗えませんでした。

それでもぎりぎりまで、人間として育ててくれました。

けれど、吸血鬼として生きなければ、死ぬような歳になってしまいました。

そんなときに現れたのは、一人の吸血鬼です。

見た目は中学生ですが、実年齢はプラス20才ほど。

名前は唐紅(からくれない)といいます。

彼女は私を一人前の吸血鬼にするため、同胞の代表としてきたようです。


唐紅によると、吸血鬼が一人前になる方法は、一つだけ。

誰か大切な人の血を吸うことです。親や友人、師匠や恋人。はたまた妹分・弟分など。

血を浴びたり、流血させる方法でも構いません。とにかく一人、特別な感情を抱いた人間を、殺さなければならない。

人間の脆弱性を理解し、今後は加減を知って血を摂取できるように。

自身の必要とする血の量をはかるために。

そして、特別な感情をもった人間を本能をまま殺すことで、本能のコントロールを行うとともに、人間社会の未練を断ち切り、決別するすために。


誰かを殺さなければ自分が死にます。

けれど私は人間の生活に慣れていました。人を殺したくない。

そんな理性が邪魔をしていて、思ったよりも面倒くさい。

だから唐紅は、連続殺人を起こしました。

殺人を私に見せることで、本能に訴えかけて、殺意を高めようとしたようです。

加えて、私に関わる人間を殺していくことで、疑惑を持たせ孤立化させることで未練を残さないようにさせようと考えたのでしょう。

連続殺人で私は直接手を下していませんが、影響を出してしまったのは事実です。

結果的に多くの人の人生を狂わせてしまった。

もし私が生きていたら、全ての罪を私にかぶせてください。死んでいても、私を容疑者として扱ってください。連続殺人の被害者は、私が巻き込み、殺したも同然です。


そして、もしも、もしも団くんを私が殺してしまっていたら、どうか私を殺してください。


大っぴらに存在を主張していないようですが、吸血鬼をはじめとした、人外に対抗する組織があると聞いています。

私や唐紅は、今回派手にことをおこしました。

組織も動くと思います。

また、万が一小原さんがその筋のかたであれば、話は簡単です。

大事な家族を奪ってしまった、怒りや悲しみ、憎しみを私にぶつけてください。

私を許さないでください。

許されずにいることで、私は団くんを傷つけ、殺したことを忘れずに、人間として存在できます。

小原団は吸血鬼となるために必要だった獲物ではなく、大事な友人としてこれからも扱いたいのです。




どうしても。小原団を殺したかった。

この衝動が抑えられなかったのは、ひとえに私の弱さです。実行していたら、私の理性は弱く、ただの化け物です。

団くんを、選んでしまってごめんなさい。

誰でもよかったはずなのに、誰でもいいわけではなかった。

小原団でなければ、駄目でした。


数々の不幸を撒き散らし、またご迷惑をおかけしていると思います。



どうか私を許さないでください。


敬具


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